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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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#超ショートショート

100字物語「少年のさがしもの」#第15話

少年は壁を探していた。体育館倉庫の裏。片付け忘れた白線引きが石灰を撒いている。ランニングの掛け声が拍遅れでこだまする。外周道路を走っているのは何部だろう。陽が落ちてきた。猫がテニスボールと戯れている。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第16話

少年は地図を探していた。海の見える駅のホーム。女子高生が3人。潮風に首をすくめ、オクターブで笑い声をあげる。警笛を海鳴りが追い立て、やって来た列車が彼女たちをさらっていくと、猫が一匹うずくまっていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第17話

少年は境界を探していた。雨あがりの日曜。空港の屋上デッキは人もまばら。濡れた滑走路は黒く艶やかに光っている。猫が水溜まりに顔を映す。水平線に虹が弧を描く。雲の切れ間に向かって、轟音が直線で飛び立った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第18話

少年は象徴を探していた。路線バスで帰る夜の住宅街。競うように明滅するイルミネーションの庭は、ジェリービーンズの色彩。バス停で猫が待っていた。きらめく光を背にモンローウォークを披露する。エレキが欲しい。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第19話

少年は機会を探していた。冬の朝。雑木林の小道。落葉が層をなす南の斜面に陽が降る。池の端で釣り人が白煙をくゆらす。カモが水面の波紋を引きずる。猫が獲物を狙っている。竿がしなった。肢体をひねらせ鱗が光る。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第20話

少年は天秤を探していた。夜明け前のジョギング。丘の上までの最後の坂道。眼下には街灯の波が煌き、東の空には明星が瞬く。山の稜線が白く霞みはじめる。クールダウンをしていると、猫が朝の挨拶をしに寄って来た。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第21話

少年は刻を探していた。港のレンガ倉庫。傍らにあるのは閉園した遊園地。乗る人のいない観覧車は、海鳥たちの泊まり木。カモメの嬌声が錆色の冬空を掻きまわす。猫がしきりに顔を舐めている。明日は雨かもしれない。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第22話

少年は余白を探していた。冬枯れの林。葉を落としたスケルトンの樹々。枝が無尽に重なり緻密な細密画を空に描く。猫が積もった枯れ葉にダイブする。初雪が線描の隙間を縫って、パラシュートのごとく風に舞い降りる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第23話

少年はベクトルを探していた。マンションの建設現場。薄曇りの空に、クレーンが鎌首をもたげ咆哮をあげる。列車の貨物基地の跡地。よく父と来た。今は鉄骨と足場しか見えない。猫がトタンの下を潜り偵察に出かけた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第24話

少年はシナリオを探していた。小さなプラネタリウムのある坂の上の天文館。頭上に投影される星の地図。宇宙の旅を終えると、外は黄昏はじめていた。蒼き昴を見つけられるだろうか。隣の空地で猫が集会を開いていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第25話

少年は鏡を探していた。雪の朝。消えてしまった道のあちこちで光が乱反射する。枝は限界までしなって弾け、雪煙を巻き上げる。ランドセルの一団が投げ合う白銀の球は空中で割れ、家の軒下には猫の足跡が残っていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第26話

少年はエコーを探していた。川沿いの並木道。土手の下の小さな教会。ステンドグラスの嵌め込み窓で光がさんざめく。日曜礼拝に向かう親子が前を行く。天に昇るアメイジンググレイスの歌声。猫がしっぽで指揮をとる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第27話

少年は変化を探していた。午後の数学の授業。√、Σ、∞。黒板で蠢く謎の外来種の群れ。瞼に眠気が降下する。窓から見えるプールは緑に侵略され、猫がプールサイドで獲物を物色している。ノートを閉じて午睡をとる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第28話

少年はロックを探していた。一晩中雪が降り続いた翌朝。つらなる銀嶺は神々しい光を浴びて目覚める。凛とした空。樹氷を揺らす風。ボードを抱えて林間の道をのぼる。猫が肩に飛び乗った。新雪を蹴散らして初滑りだ。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。