大河ファンタジー小説『月獅』14 第2幕「隠された島」第5章(2)
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第2幕「隠された島」第5章:「漂着」(2)
小鳥たちの危急の報せに、ディアが真っ先に思い出したのは山のことだ。嘆きの火の粉を散らしているのだろうか。だが、山の咆哮は聞こえない。吹きすさぶ潮風の甲高い声が耳をかすめるだけだ。それに小鳥たちがディアを引っ張っていくのは、山とは反対の海岸につづく道だった。
浜への坂道を駆け降りる。視界が開けると、波打ち際に何か黒い物が横たわっているのが目