大河ファンタジー小説『月獅』16 第2幕:第6章「孵化」(2)
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第2幕「隠された島」第6章:「孵化」(2)
「お互い、まだ言えないことを腹に抱えているだろ」
ディアのよくとおる高い声が遠ざかるのを待って、ノアがルチルの前に湯気のたゆたうカップを置く。窓辺でにぎやかにさえずっていた小鳥たちはいっせいに姿を消し、明るい歌声を輪唱で追って飛んでいった。もちろんヒスイも。
「ここには、好きなだけ居てくれていい」
「頼るあてのない私にはとてもうれしい。でも、迷惑を