じいちゃんの27回忌はコメディだった話
2019年8月。母方の祖父の27回忌があった。それまでは母の兄(長男)である叔父夫婦と父母だけで小さく執り行っていた法事も「もういいだろう」と「これが最後だから、必ず出るように」と孫世代まで招集がかかった。祖父が亡くなって四半世紀。じいちゃんにかわいがってもらったわれら孫4人だってさすがに新しい家族がいる。私以外は(笑)。総勢18名。
じいちゃんのお墓がある宮城県のそのエリアでは、お寺の和尚さんを「おっさん」と呼ぶ。決しておじさんの蔑称ではなく、むしろ敬意をこめての「おっさん」である。発音は「さん」の部分を強めに発音するので、言うのも聞くのも罪悪感はない。じいちゃんの死後、四半世紀経ってるのだから、おっさんも代替わりしている。いざ読経が始まろうというとき、「はて、どう読むんべな?」新しいおっさんは、じいちゃんの戒名の読みがわからない。「確かこうだった、いやこうだっぺ」と叔父夫婦とうちの両親。すったもんだした挙句「だいたいでいい」となり、読経開始。四半世紀前のお葬式では、じいちゃんの人徳とその戒名の意味をトクトクと先代のおっさんが語っていて、みんな神妙に聞いてたけどなぁ・・・。まさか四半世紀後に「だいたいで」となっているとは(笑)。読んでも少し長めの戒名は読経のリズムに合わない。戒名を読むところで必ず、笑ってしまう私たち。お墓詣りを済ませて27回忌という名の法要はあっさり終了。
さて18人全員参加の1泊温泉旅行開始!5台分乗で1時間ほどの温泉へ。浴衣で夕食の宴会場に行ったら、叔母が「おじいさん連れてきてしまったわ~」と。そう、じいちゃんの読めない戒名入りの位牌を温泉旅行の荷物と共に持ってきてしまったのだ。一同爆笑。ちなみにそのエリアでは位牌を「いへい」と言う。読み方を間違えているのではなく、ちょっとなまってる。じいちゃんが見ることのなかったひ孫は総勢7人。彼らにとっては、ほぼただの夏休みの温泉旅行。温泉入って、卓球して、カラオケやって大騒ぎ。義兄弟である叔父と父は、とっくにじいちゃんが亡くなった歳を超えて喜寿のお祝いをしてもらって、上機嫌。旅館の浴衣をはだけさせ、肩を組んで日本酒をあおってる。
THE カオス。まるでコメディ邦画。
だれもじいちゃんとの思い出なんて語ってない。そもそも18人中10人は生前のじいちゃんを知らないのだ。悲しいよりも、おっさんさえも長くて読めない戒名に笑ってしまうし、「いへい(位牌)」を温泉旅行に持ってくるおばちゃんに爆笑するに決まっている。そりゃぁ、あの世に逝ってしまった会ったこともない人より、目の前にいる生身のおもしろい人だ。
じいちゃんへ。わたしたちはコメディ邦画さながらに生きています。明日からまたそれぞれの居場所で、大変なことも嫌なこともありながら生きていきます。あなたの話をすることはほぼなかったけれど、あなたがいなければ決して存在しない1日であり、そしてそれは私の中で宝物のような1日になりました。
あなたの人に対してちょっとお世話焼きで、動植物を愛する性質は、あなたの娘を通して、わたしに間違いなく受け継がれています。DNAすごい。
あ、あと今さらですが、わたしにも家族ができそうです(笑)。
忘れられない1日を書き残しておこうと、母に祖父の戒名を教えてほしいとラインしたら、「読めないけど」と位牌から手書きで書き写した長ったらしい戒名の写真が送られてきた。「あんた何をする気なの?」と不安そうなメッセージと共に(笑)。久々にじいちゃんを思い出しながら、書きました。
最後までお読みいただきありがとうございます。またこちらでお会いできたら嬉しいです。
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