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鉄道好き中学生との思い出

私が関東の中学校で勤務していた時のこと。

3年生T君との思い出です。

皆だるそうにしている夏休み明けの授業。
宿題を回収し、授業を始める前に話したのは、
私の実家がある九州への交通手段についてでした。

その年、【寝台列車】で帰省した私。

乗り心地や人の乗り降りの様子など、
感じたことを語りました。

皆、ふ~ん。という面持ちで聞いていたのですが、
ひとりだけ目がキラキラし始めた生徒がいました。

それがT君です。

その当時は、教師間で発達に関する共有はしていませんでしたが、
今思い返せば、彼はグレーゾーンだったように思います。

成績が良くて正義感が強かったのですが、
融通が利かずクラスの輪に馴染めない様子でした。

授業が終わり、教壇でプリントの整理をしていたら、
「先生は寝台列車を選んだのですね!すごいです!!」
と、T君が駆け寄ってきて誉めて(?)くれました。

彼から話しかけられるのが初めてだったので、
私はとても嬉しくて、一緒に職員室まで話しながら歩きました。

「またね」と彼に声をかけ、私は職員室に入り、
次の授業の準備をして職員室を出ると、T君がまだそこに。

「先生、寝台列車は…」
と話が続きます。

次の教室の途中まで送ってもらい、
「あと1分でチャイムなるから戻りなよ!」と別れました。

授業が終わり、職員室に戻ると廊下に、T君。

昼休みも、職員室前の廊下に、T君。

その日の休み時間は、ずっとT君と電車の話をしました。

会話の詳細は忘れてしまいましたが、
私の単純な質問に詳細な解説付きで答えてくれたり、
彼自身が電車のどこに魅力を感じているのかを語ってくれたり。

私は、話題が次々と溢れてくる彼の様子を隣で見ていて、
好きなものに熱中する姿がとても眩しかったのを覚えています。


【京急の運転手になる】
と進路希望調査で書いていたT君。

鉄道系の高校に進学したので、
いつか会えるかな~と楽しみにしています。