ルームランナー10キロメートル

走る。走り続ける。ひたすら走る。

祖母の家にルームランナーが届いた。運動を全くしていなかったので、乗らせてもらい運動しようと思った。

まったく運動していないなまりきった体、そんな現実を忘れ己の運動能力を信じて、10キロメートルを走ってみようと思った。今まで、10キロなんてちゃんと走ったことはない。しかし、ルームランナーというテンションの上がる機械の力を借りれば、走り抜ける気がした。

生暖かい祖母の家のリビング、夏の午後のけだるさに包まれる中、自分史上最長の挑戦が始まった。10キロにセットして、スタートを切った。


順調にスタートを切れたと思った矢先、予想外のアクシデントに襲われた。尿意。テンションが上がりすぎてしまったせいだろうか、自分の膀胱のことなどすっかり忘れていた。始まってわずか数秒、自分の足が一歩を踏み出すたびに膀胱が悲鳴を上げる。しかし、耐えきれないほどの尿意ではないことに気が付き、そのまま挑戦を続けることにした。走り切ってみたい。その強い願いが尿意に勝った。

走り続けて約七分、そろそろ1キロが終わろうとしたとき、またもやアクシデント発生。1キロに7分かかる?つまり10キロを走るには、このペースだと70分かかる。70分。7分でこの疲れ具合、単純にあと10倍。確実に、途中で倒れてしまう。70分も走り続けることは無理だ。どうしよう。

ペースを上げれば時間は短縮だがそもそも体がついていけない。かといってペースを落としたら走る時間は伸び、遅いから長く走れるというわけではなく、おそらく途中で走れなくなってしまう。本当にどうしよう。

何かに集中しているとき、時間はあっという間に進む。どうだろうか、相当いろいろ考えていただろう。距離はどれくらい進んだか、ちらっと見てみた。1.2キロメートル。

全然進んでいない。たった200メートル。たった200メートルでこの疲れ。頭の回転は相当速かったはずなのに、足の回転は全然速くない。なんかふくらはぎも太ももも足の裏も痛くなってきた。このまま走り続けたら、多分だけど泣いてしまう。

いつの間にか、自分はストップボタンを押していた。


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