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命に直結する気管切開チューブの管理

気管切開やその管理は、A(気道)のトラブルにつながるため命に直結します。
これを学ばずして重症患者の管理は行うことはできません。

適応に関しては、長期人工呼吸管理が必要になった患者で検討されます。気管切開には以下のメリットがあり適応を満たせば施行するべきです。
①チューブ不快の軽減
②気道抵抗の減少(チューブが挿管チューブと比べて短くなる)
③容易な入れ替え、交換
④スピーチへの交換
逆に上記メリットがない場合には必須ではありません。早期気管切開のVAP予防や予後改善効果にエビデンスが確立していないため、2週間経ったらやらないといけないものという訳ではなく、必要性を満たしたかどうかで考えるべきでしょう。
気管切開は手術である以上、出血や組織の損傷、全身麻酔の必要性などデメリットもあります。
急性期の患者において、循環不安定、出血傾向、不整脈、脳圧亢進、菌血
症など全身管理上優先すべきものがある時には避けた方が無難なことも多いです。

手技自体は経皮的拡張型気管切開が広く行われるようになり非常に容易になりました。かかる時間も、体位調整や全身麻酔の準備合わせて30分から1時間以内には終わるでしょう。処置自体は5分から10分程度のものです。
穿刺してワイヤー越しにダイレート。十分拡張されたのを確認してそこに気管切開チューブを挿入するだけなので内容はCV挿入とそれほど変わらないと思われます。CV挿入と大きく異なるのはエコーでの穿刺確認が難しいということです。
エコーは空気に弱く、気管前面までは確認ができますが(穿刺部位の決定には使える)内腔にきちんと留置されているかの確認が不可能です。エアーが引けるかどうかでは食道に迷入しても見分けがつきません。経皮的拡張型気管切開の唯一のデメリットがこれと言えます。
そこで安全に確実に施行するには必ず気管支ファイバー下の観察が必要となります。これで唯一のデメリットを相殺できます。
ファイバーの観察法には2種類の方法があります。
1、挿管チューブの先端を穿刺部位よりも口側まで浅くしてそこから観察する方法。挿管チューブの挿入長を18〜20センチくらいまで浅くする必要があり。事故抜去のリスクがあります。
2、ラリンジアルマスクに入れ替える方法
チューブの挿入長の調整が必要ありませんが、下気道の確実な気道確保ではありません。体格によってはフィットがイマイチで換気の保証ができないことがあります。

気管切開施行後に関しても記載します。
最も注意が必要なのは再挿入の難しさです。経皮的拡張型気管切開においては、外科的に創部を開けていないのでチューブが抜けると同時に穴が塞がろうとしてしまいます。そのまま挿入が困難であったり、比嘉に迷入するリスクがありますので注意が必要です。
挿入が難しい場合には
①ペアン等で拡張する
②新しいキットでダイレートからやり直す。
③サイズダウンする
④それでもダメなら一次的に経口でのマスク換気や挿管に切り替える
を考慮します。
気道管理は生命に直結するので、特に④に関しては常に考慮しましょう。
また、なんとか挿入できたと思っても必ずETCO2の確認、もしくはファイバーでの確認が重要です。
過去の裁判になった判例では皮下に迷入していても、呼吸音らしきものや胸郭の上がりは確認されています。そしてSAT低下が起こるのはしばらく時間が経ってからなので、一時的にSATが保たれていても当てになりません。

どこの施設でも、必ず忘れた頃にやってくるのが気管切開チューブの事故です。
以下のスライドで勉強して避けられる事故を予防しましょう。

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