自己主張
少しずつ、散歩がルーティン化してきた。
私が歩きたい方向にゆっくりと進もうとすると、手に引っかかりがある。
振り向くと、笑顔で止まっている。
左手でつかんだリードと、ナナの首が軽く引っ張り合っている。
数日前までは、この感覚はなかった。
行きたい方向が逆でも、少し引っ張るとスタスタとついてくる。
もしくは、一心不乱に先を急いで前に進む。
それが、今では、ピタッと止まる。
わたしが引っ張る手を緩めると、ナナはすたすたと今来た道を戻ろうとする。
どこに行きたいのかしら?と少しついて行くと、電信柱や道路端の溝に一直線で進む。いままではこんな主張していなかったと思っていたけど。
もしかしたら私が気が付かずに、すたすたと歩いていたのかもしれない。
散歩する街並みの緑がどんどんと濃くなり、この香りの花はなんだろうと、塀からすこしのぞいた樹木に足を止める。
前よりも、自分の感覚がすこしずつ敏感になっている。
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