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面白さの基準

夫とMー1グランプリ2023を見ていた。途中で一瞬、「もう良いかな」と思って2階に行こうかと迷った。でも、やっぱり続きが見たくて、座り直した。漫才はどれも面白かった。面白くないのもあったけど、面白かった。だんだんと盛り上がってきた。

決勝進出の3組が決まったところで、なんと夫はチャンネルを変えて、大谷翔平の番組を見出した。私は怒った。

「なんで、チャンネル変えるん!!」
「だって、優勝はさや香で決まりやろ」
「わからんやん」
「大谷、見たい」

裏番組で、大谷翔平の番組をやっていたのである。

我が家にはもう一台、和室に義母が使っていた小さなテレビがあることはあるのだけど、そんなので見たくない。だいたい、この続きを見ないなんてことがあるものか。

私は、コタツに横になって、ふて寝をした。手抜かりなく録画のスイッチを入れて、寝ながら文句を言った。
「続き、見たい、見たい!」「大谷なんか、嫌いだ!」

夫はしょうがなく、チャンネル権を私にくれた。私は起き上がって、続きを見た。決勝戦は、どの組もとても面白かった。

優勝が決まるときも、ドキドキし、決まった瞬間は歓声を上げた。やっぱり、リアルタイムで見てこそだ。夫も結局見ていて、「優勝はヤーレンズやな」と決めつけていたので、「意外や」と驚いていた。

私は番組の、それほど熱心なファンではない。去年も「見たかな」という程度。でも、今年見ていて、漫才のレベルが高いと思ったし、審査員も、どのコンビに対してもリスペクトが感じられた。番組全体が楽しかった。私はよく笑った。自分で、「ここで笑う?」と思いながら笑っていた。

次の日、録画で見直してみた。どの組も面白かった。さや香だって、あのネタ。よくできていると思った。「見せ算」があの中で理解できたし。誰も傷つけていないし。攻めたよね。

令和ロマンは、さすが優勝だなと思った。私は「お笑いは動きの切れが大事」だと思っている。それが素晴らしかったな。

それで、夫に「見直したら、やっぱり令和ロマンはおもしろかったわ」と言ったら、返事は「そうか?」とまったく同意してくれなかった。

そうそう、「面白い」の基準の話だった。

夫は、漫才だけを見る。漫才が面白くなかったら、つまりウケないのは「面白くない」突っぱねる。

たしかに面白くはないのもある。漫才としては失敗かもしれない。

でも、面白くなくても面白い。面白くないのが面白いのである。分かってもらえるだろうか。「面白くないよね」とそれを面白がる。楽しむといった方が良いだろうか。

全然ウケなくても、一生懸命やっている姿は美しいと、私は思う。甘いだろうか。甘いんだろうね。

実は、夫は二つ以上の番組を同時に見るのが得意である。コマーシャルの時間をうまく利用して、同時に見る。今回もそうするつもりだったのだろう。

でも、大事な場面の前にもチャンネルを変えるから、ハラハラドキドキするのだ。

当日の夫の言葉「あああ、大谷、見たかったな」
(ああそうですか)心の中で言った。



*イラストありがとうございます。トゥース!

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