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「ぼくは挑戦人」を読みました


「ぼくは挑戦人」読み終わりました。
とても良かったです。

 ちゃんへん.さんはプロのジャグリングのパフォーマーです。
「ちゃんへん」の後にピリオドがついています。

 ジャグリングは、シガーボックスとかディアボロ(中国ゴマ)とか、
いわゆる大道芸の人たちがよくやっています。

 この方の技はスゴイと思います。
一度公演に行きましたが、
ドクターエックスじゃないけど、
「私、失敗しないので」という感じで、安定感抜群。

  よくジャグリングとか大道芸というのは
路上でやっていて、成功するかはらはらしながら見るのだけど、
彼は失敗しません。

  身体のキレがハンパない。身体能力が高いです。
頬り投げてクルッと回転させる時のスピードが違う。


 技のことはいったんおいておきます。

 ちゃんへん.さんは宇登呂地区の生まれです。
京都にある在日コリアンが多く住む町です。

 父方の祖父母は朝鮮韓国から日本に来ます。
母(オモニ)も在日コリアンが多く暮らす地区の出身。
父親と知り合い結婚しますが、父親は3歳の時に亡くなっています。

 ちゃんへん少年に生活は小学校入学と同時に大きく変わります。
日本名で通うようになり、そして在日ということで、小学校で壮絶なイジメに合います。
それこそ命が危ぶまれるようないじめです。

 ちゃんへん少年は雑誌プレゼントに応募して
ハイパーヨーヨーが当たったことから、生活は変わっていき、
ジャグラーへの道を歩くことになります。

 ハイパーヨーヨーに夢中になり、
中学生になっても練習を重ねて腕を上げていきます。
ジャグリングで全国大会で優勝するまでになります。

 目指したのはアメリカで行なわれる世界大会。
 ここで問題になったのは国籍。


 と、書いていくと、これから読む人のネタバレになるのでやめないといけません。

 この本がなぜ私の胸に迫って、読みながら泣きそうになったのかを書きます。

理由その①


その理由の一つは、ちゃんへん少年の小学校のいじめの体験です。
つらいつらい体験、その時の気持ちや思いを率直に綴っています。

 オモニ(母)が学校に乗り込んで「イジメるのはいじめ以外に楽しいことがないからや!」
と啖呵を切った話は痛快ですが胸に迫ります。

理由その②


 理由の二つ目がこの「家族のきずなの強さ」です。
祖父母も、何かあるたびにちゃんへん少年の味方になり、励ましてくれる貴重な存在です。

 家族とはこんなふうに支え合うものなのだと、とても印象的でした

理由その③


 理由の3つ目。人は何か夢中になれるものに出会うと救われるというところです。
ちゃんへん少年はひいおばあちゃんから「いつか自分が頑張れるものに出会ったら、
一生懸命頑張って一番になりなさい」と言われます。

 どんなに人にでも好きなもの、得意なものというものがあるはずです。
その出会いはいつなのか、どうやって出会うのかはそれぞれと思うのですが、
その出会いは必然だと思います。
必ずやってくると思うし、好きなものは手放さないほうがいい。

 ちゃんへん少年はジャグリングとの出会いでした。
いくら出会っても、必死な努力が無いと実を結ばないというのも現実と思います。
ちゃんへん少年は一生懸命練習します。
「できないことが練習してできるようになるのは喜びだった」
「自分の成長が実感できて楽しかった」と言っています。
そして今の活躍に結びつきます。

理由その④


 理由の4つ目は「ルーツを辿る旅」です。

 ちゃんへん.さんはパフォーマンスで世界を駆け巡る活躍をします。
 有名になって名前や国籍について質問を受けるうち、
「自分は何人で、何者だろう」とアイデンティティの葛藤が起こります。

 そして「ルーツを辿る旅」に出ます。
韓国、朝鮮、サハリン。
そしていろいろな人の話を聞くうちに、
逃げていたのは自分で、質問されて何者かわからない自分に怒っていたことに気がつきます。
「どこが本当の自分の国なんて関係ない」「名前や国が2つ3つあったっていいじゃないか」
と腑に落ちるのです。

 人は他人を枠にはめようとします。どこの国の人?学校は?仕事は?
でも、そんなことは関係ない。
誰だって、いろいろな面を持っている一人の人間。
そこにいるというだけで尊厳あるひとりの人間なんだ。

 そう、言ってみればみんな「地球人」なんだ。
そんなことを考えて、私にも府に落ちました。
ここが一番泣きそうになりました。

表紙には地球のような丸と、
「on the planet」とあるのに気がつきました。

理由その⑤


 最後、5番目の理由が「役割」です。
ちゃんへん.さんは「自分の役割」について語っています。
最近はたくさんの学校を回って、
ジャグリングと自分のいじめの体験や家族の話をされています。
本当に精力的に。

 私はあるイベントで、ちゃんへん.さんのパーフォーマンスを見て講演を聞きました。
子どもたちにとって、ワクワクするジャグリングと、
そこに至るちゃんへん.さんの話はきっと心に残るものだと思います。

 最後にもう一つ言葉を紹介します。
「自分だけが幸せになっても意味がなく、みんなと一緒に幸せにならなければ価値がない」
「そんな生き方を問おうと思っています」

 考えさせられるところがたくさんありました。
いろいろな人に読んでもらいたい、語り合いたい。
そんな思いを抱いた本でした。

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