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ひとりの本好きが、本好きの友だちと交わす往復書簡。

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読んだ本について手紙を書く。本好きから本好きへと書く手紙。往復書簡。手書きの必要はありません。ここから始まった往復書簡がいくつもあります。あなたの手紙、待っています。
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#海外文学のススメ

あなたの声をきかせて——シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』

既視の海
10日前
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衝動に身をまかせる——セルバ・アルマダ『吹きさらう風』、車谷長吉『贋世捨人』

拝啓 やはらかに柳あをめる岸辺を歩きたい。そんな季節になりました。水面に映る青をみて、あ…

既視の海
3か月前
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「ことば」という大河にたゆたう——ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』、ガブリエル・…

拝啓 一日の気温差はいまだに激しいものの、快い風がそよぐ時節になりました。窓を開けると金…

既視の海
9か月前
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自分を信じるのは、実際的で手触りのある行為——フランソワーズ・サガン『悲しみよ …

拝啓 青い空を突き上げる入道雲はすっかり遠のき、鮮やかな彼岸花が風に揺れています。 あな…

既視の海
10か月前
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「誰が正しいのか」よりも知りたいのは——トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』、日高敏…

拝啓 夏の忙しい日々が、ようやく終わりました。のびた髪を切り、傷んだ靴を新調し、ゆがんだ…

既視の海
10か月前
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書かれた言葉ほど、書いた人の不在を感じるものはない——ダヴィド・フェンキノス『シ…

拝啓 半夏生に大雨はつきものですが、災害の報に胸が痛みます。あなたが暮らす地方はいかがで…

既視の海
1年前
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歩くことと、言葉を紡ぐことは似ている——ハン・ジョンウォン『詩と散策』

拝啓 朝の冷えた空気を楽しんでいたのに、にわかに暑くなり、額のしずくをぬぐってみたら、汗ではなく雨粒でした。もう少し五月の風をうけさせてくれと祈るように雨空を見上げました。 雨では歩きに出るのにも億劫でしょう。張り詰めた気持ちは、すぐには緩められないと思います。しかし、そうやって歩くことはむしろ、身体の感覚を研ぎ澄ますかもしれません。そこで感じたことを言葉にしたとき、詩がうまれます。そんな、あなたの姿を思い浮かべながら読んだのが、ハン・ジョンウォン『詩と散策』というエッセ

エスプリのきいた愛の物語——ダヴィド・フェンキノス『ナタリー』【書評】

拝啓 足早に2月が逃げ去っていきます。忙しいとは心を亡くすことだとは、よく言ったものです…

既視の海
1年前
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つづれ織りのような人生と文章——パスカル・キニャール『約束のない絆』【書評】

拝啓 東京も明日は雪が降るというのに、今日は穏やかな青空がひろがっています。暖かさにくる…

既視の海
1年前
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「共犯」に、なりたい。——トレイシー・シュヴァリエ『真珠の耳飾りの少女』【書評】

拝啓 十年に一度という寒気が通りすぎようとしています。乾いた東京の空にも雪が舞いました。…

既視の海
1年前
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骨董はいじるもの、欲望は愛でるもの——アントワーヌ・ロラン『青いパステル画の男』…

拝啓 冬至からひと月近くたちますが、日は低いままですね。ただわが家では、その低い日差しが…

既視の海
1年前
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【7通目】生と死のあわいにある声——ジャン=ポール・ディディエローラン『6時27分発…

拝啓 一年で最も昼が短い日、冬至を迎えました。夏が好きなので、子どもの頃は最も嫌いな日で…

既視の海
1年前
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【6通目】破滅にむかって時が静かにすぎる切なさ——ジョルジュ・シムノン『離愁』【…

拝啓 冬至が近づき、日がほんとうに短くなりました。寒さをまぎらわせるために、心温まる物語…

既視の海
1年前
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【5通目】小説が先か、映画が先か——ジョルジュ・シムノン『仕立て屋の恋』【書評】

拝啓 昨晩は今年最後の満月でした。ご覧になりましたか? ただ正直にいえば、満月よりも、ちょいと欠けた居待月のほうが、私の好みです。まだか、まだかと東の夜空にのぼるのを待ち焦がれる切なさでしょうか。 さて、あなたが映画も好きだと知り、一度たずねてみたいと思っていたことがあります。それは、映画と原作小説、どちらを先に観るか、読むか、というものです。それを考えさせられたのが今回のフランス小説であるジョルジュ・シムノンの『仕立て屋の恋』です。フランスにおける初版は1933年。でも