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ひとりの本好きが、本好きの友だちと交わす往復書簡。

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読んだ本について手紙を書く。本好きから本好きへと書く手紙。往復書簡。手書きの必要はありません。ここから始まった往復書簡がいくつもあります。あなたの手紙、待っています。
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#書評

あなたの声をきかせて——シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』

既視の海
1か月前
14

「誰が正しいのか」よりも知りたいのは——トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』、日高敏…

拝啓 夏の忙しい日々が、ようやく終わりました。のびた髪を切り、傷んだ靴を新調し、ゆがんだ…

既視の海
1年前
29

いのちや意識の「あわい」にあるものは——河合隼雄『中空構造日本の深層』、フィリパ…

拝啓 暦のうえではすでに秋。台風が通り過ぎたあとを「野分のまたの日こそ、いみじうあはれに…

既視の海
1年前
36

想いを「書く」とはどういうことか——まはら三桃『思いはいのり、言葉はつばさ』

拝啓 あまりの暑さに茫然としているうちに、7月も終わろうとしています。御身体の具合はいか…

既視の海
1年前
33

何が「書くこと」に駆り立てるのか——石村博子『ピㇼカ チカッポ 知里幸恵と「アイヌ…

拝啓 いまだ出梅の知らせもないままに、炎威ばかり厳しさを増します。御身体はかわりありませ…

既視の海
1年前
9

刻々と変化し続けるもの、それでも変らないもの——小林秀雄『無常という事』『歴史と…

拝啓 九州の災害の報に胸をいためつつ、関東の酷暑も災害のようです。ただ、天気予報の「体温…

既視の海
1年前
31

書かれた言葉ほど、書いた人の不在を感じるものはない——ダヴィド・フェンキノス『シャルロッテ』

拝啓 半夏生に大雨はつきものですが、災害の報に胸が痛みます。あなたが暮らす地方はいかがですか。山々に囲まれて台風には強くても、近ごろの豪雨であれば、穏やかな河川も猛威を振るうものです。 思いもよらず向田邦子の随筆も、あなたの心で大きなうねりとなったようですね。ご紹介した『手袋をさがす』だけでなく、『眼があう』に、それこそ眼がとまったのは、あなたが意識せずとも持っていた感性に触れたからでしょう。 そんな「眼」を持つあなたが教えてくれた盲目の絵本作家エムナマエによる『あなた

身を賭して成し遂げるものは何か——かんべむさし『車掌の本分』、上橋菜穂子『バルサ…

拝啓 夏至をすぎれば梅雨も折りかえし。ただ近ごろは、そぼ降るよりも篠突く雨ばかりに思われ…

既視の海
1年前
39

書かずにはいられないもの——町田康『私の文学史』、早川義夫『女ともだち』

拝啓 いつになっても梅雨は好きになれません。ただ、雨が上がり、地面からむわっと湿り気が立…

既視の海
1年前
24

「思い出す」のは過去ではなく、現在——有吉佐和子『悪女について』、宮本輝『幻の光…

拝啓 ついに入梅かという湿っぽい気持ちを隠せない一方、静かな雨音をききながら読書するのを…

既視の海
1年前
19

あの人だったら、どう行動するか——フォレスト・カーター『リトル・トリー』、向田邦…

拝啓 台風一過の青空も束の間、少しずつ灰色が混ざってきました。やはり梅雨が来てしまいます…

既視の海
1年前
31

語り得ない言葉を、読む——梨木香歩『家守綺譚』、山本昌代『応為坦坦録』

拝啓 葉のうえにそそぐのが霖雨ではなく沛雨であることにため息がこぼれます。折節の移ろいは…

既視の海
1年前
24

読書の祝祭たるものは——志村ふくみ『一色一生』、柴田元幸訳『ハックルベリー・フィ…

拝啓 五月尽日というのに入梅のような曇り空です。平年よりも1週間ほど早い。季節感が一枚、…

既視の海
1年前
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同じ書物を読む人は遠くにいることを知る——岡崎京子「万事快調」、向田邦子「胡桃の部屋」

拝啓 向暑のころとは思えない朝夕の気温差と、1日ごとの寒暖差です。それでも我が家の庭ではコンペイトウという淡い青の紫陽花が咲き始めました。梅雨が近づいていますね。 あなたと「同じ書物を読む人は遠くにいる」という言葉で通じ合えたことで、小躍りしたい気分になりました。それが、さらなる胸の弾みにつながったのは、あなたが岡崎京子『pink』を紹介していたことでした。岡崎京子の作品では、『リバーズ・エッジ』も『ヘルタースケルター』もいいのですが、迷う気持ちを振りはらい、敢えて最も好