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【銭湯巡り】中央区・十思湯/歴史の香り漂うアツアツ「新顔」銭湯

 日本最大の電気街にしてオタク・サブカルチャーの街、秋葉原
 下町的な雰囲気を色濃く残し、「甘酒横丁」なども有名なのんびりストリートの人形町
 その狭間にあるのが小伝馬町、その一角に位置するのが今回紹介する「十思湯」になります。

 十思湯の経歴はかなり異色です。昭和の前期〜中期に創業という老舗銭湯が多い中、十思湯の創業は2014年なので、銭湯業界では圧倒的に「新参」と呼ぶべき存在。しかも、かつて存在した「十思小学校」の跡地にある公共施設「十思スクエア別館」の一角が所在地という変わり種です。

 しかし、その中身は意外にも銭湯らしさ堅実に兼ね備えており、おまけに意外な形で東京以前の江戸の歴史とも繋がりがある…そんな個性派銭湯なのです。


◆十思湯の外観と脱衣所

 前述したように、十思湯は公共施設「十思スクエア別館」内に所在しています。なので建物全体の外観も、入り口の雰囲気もまったく公民館そのもの。

こちらの2階になります。雰囲気だけだと「ほんとに銭湯?」と思うかも
壁面には、かつてあった「十思小学校」の由来が掲示されています
銭湯以外にもホールやケアサポートが入っています
銭湯です。入り口に張り紙がしてあるので間違いなく銭湯です。

 施設入り口から階段またはエレベーターで2階に上がると銭湯の入り口受付がお目見えします。サウナ利用時は受付時に代金と靴箱の鍵を渡し、代わりにタオルセットとサウナ用の鍵をレンタル。

 この時に靴箱の鍵番号を書いたメモ用紙を渡されるのが特徴で、このメモ用紙は帰りに受付で靴箱鍵と引き換える必要があるので、無くさないようにしてください。

 そこそこ広めな休憩所(自販機・マッサージチェア設置)を進んだ先が脱衣所です。こちらも如何にも公共施設的な、明るくクセのない雰囲気。手入れも行き届いていて清潔です。


◆浴室の構成・雰囲気

 銭湯の創業自体がかなり近年なだけあって、浴室内のインテリアも綺麗に整っています。壁面にデカデカと施された浮世絵(江戸時代の日本橋?)のプリントも相まって、どちらかと言えばスーパー銭湯に近い感じ。

 では何もかもクセのない平均的な銭湯か…と言えば、さにあらず。ここの浴室の個性は浴槽自体にあります。

浴室の面積は平均的

・中温風呂

 一番大きな浴槽で、三方に半身浴ができる段差付き。腰にあたるジェットが二箇所に備えられています。

 設置されている温度計によると湯温は42℃。中温で42℃です。この時点ですでに他の銭湯の熱湯くらいの温度。

・高温風呂

 中温風呂の横にあり、湯温はガッツリ45℃!しかも入るタイミングやコンディションによっては、これより更に「熱い!」と感じさせられる時も。

 慣れない人にとっては若干ハードな熱さですが、慣れれば身を沈めた時の全身がゾワゾワくる感覚はかなりのもの。そのままユッタリ寛げるようになれば体も解れてゆきます。個人的にはコレくらいの温度が好き。

・水風呂

 チラーなどをくぐらせていないのか、水温は水道水の温度とほぼ同じ。このため、夏場はかなりヌルめになります。しかも大抵は人肌に温められてさらに温度があがり、真夏だとぬるま湯と大差ないことも。

 こちらも人を選びそうな要素ですが、逆に言えば冬場はキンキンに冷えるので、「水風呂でグワッと冷やすのが好き!欠かせない!という人は、寒さが強まる12月〜2月にこの銭湯に行くと良いかも知れません。

・サウナ

 室内は2段掛けで、最大人数は6人ほど。室温は若干高目でBGM等は全くありません。

・シャワー

 2箇所。こちらもチラー等はなく水道水と同温になります。


◆サウナについて

・夏場は極暑!季節によって温度が変わるサウナ

 こちらのサウナは前述のとおりBGMが無いので、入室中は淡々と自分自身の息遣いや鼓動、他人の気配と向き合い続けることに。そうした状況ですと室温の高い低いに対して普段以上に敏感になり、サウナライフや整い度が大きく変わることも。

 前述のように十思湯のサウナは温度が若干高め。しかも盛夏の頃には外気の熱を吸うのか、更にサウナの室温が上がり、かなり負荷が高い環境になります。暑がり汗っかきな僕的には、下段で頑張っても5分くらいでやっと!

 逆に冬場になると、サウナの暑さが外気の冷え具合に相殺されて丁度良い温度になる印象です。水風呂も同様に外気温に左右されるので、こちらの銭湯に行ってみたいけど暑すぎるのはちょっと…という方は、夏場は避けて冬場に行ってみると快適に整えるかも知れません。


◆十思湯の「推し」ポイント

・コンパクトでアツアツ、サッと温まりたい時にオススメ

 今まで書いたように、十思湯は湯船もサウナも温度設定は高め。浴槽の構成もシンプルなので、サッと入って速めに汗をかき、サッと出るという時には向いているかも知れません。銭湯側でもサウナ無しの場合は60分、サウナ込なら90分を目安に上がって欲しいと掲示がされています。


・銭湯と一緒に江戸の歴史を学べる

 十思湯が入っている十思スクエア別館の1階には、同敷地にかつて存在した江戸時代の刑務所「小伝馬町牢屋敷」のミニチュアが展示されています。これは中央区の歴史・文化を様々な施設で展示公開していく「中央区まちかど展示館」事業の一環とのこと。

なかなかにご立派な牢屋敷のミニチュアをよく覗き込むと…
拷問蔵や
首斬場という恐ろしい単語が出てきて「ヒエッ…」とさせられます

 小伝馬町牢屋敷には殺人や放火など様々な罪状で囚われた人間が収監され、時には恐ろしい拷問も含む厳しい取り調べを受けたそうです。八百屋お七や鼠小僧などがここに収容されたほか、幕末の思想家として有名な吉田松陰もここに収監されて打ち首に処されました。

肖像画を見て「40代くらい?」と思ってたのが
実は20代で没したと知ってビックリした吉田松陰さん

 多くの人々の罪と死が渦巻く、江戸時代の暗部を象徴するような牢屋敷の跡地に、それから百数十年経って人々の心身を癒す銭湯が営業しているのは、何処か不思議な縁を感じさせてくれます。

 このほか、十思スクエア別館と隣接する十思公園には江戸時代最初の時の鐘(定期的に鳴らして、時計代わりに江戸町民へ時間を知らせる鐘のこと)もあり、この一帯がちょっとした歴史スポットのような特性を帯びています。銭湯に入る前、または入った後に見学してみてはいかがでしょうか。

時計など無かった時代、江戸の町民にとっては貴重な存在だった時の鐘


◆十思湯の湯上がり

・秋葉原、人形町、神田などに行きやすい位置

 十思湯を出て通りに出ると、あちらこちらに休日営業のレストランや居酒屋さんを発見できます。特にオススメなのは人形町通りを渡った先にあるおでん屋さんで、お出汁の効いた様々なおでんをリーズナブルに頂ける良店。

 あるいは散歩感覚でちょっと歩いて、小伝馬町を離れてみるのもアリかも。北に歩けば秋葉原、西に行けば神田や三越前、南に下れば人形町、東に向かえば馬喰町と、あちこちの歓楽街にアクセス良好という好立地も十思湯の長所です。


◆おわりに

 以上、中央区「十思湯」を簡潔に紹介してみました。銭湯としてはシンプルな構成ながら、個性や特徴も多くて面白いスポットです。

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