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スナック梨央にご来店いただきありがとうございました🍶

念願だったスナックのママをお着物で。そんな夢が七夕の日に叶いました。

場所は長野。善光寺に程近い「権堂」という飲み屋街にある「スナック夜風」をお借りして、2日間だけの「スナック梨央」を開店いたしました。

感想は一言で言ったら「楽しかった〜!!!」に尽きるのですが、何度思い返しても幸せな時間だったし気付きが多すぎたので、じっくり思い出に浸ろうと思います。

全国を出張しながら「おいしい仕入れ」

いざお店をできるぞ!となったとき、コンセプトをどうしようか迷いました。ふとカレンダーを見たら、5月から7月まで出張だらけ!ほぼ毎週1〜2回ずつ出張が入っています。そこで、テーマは「おいしい出張のお裾分け」に決定。

これまで、各地で出会い感動したおいしいものをSNSで紹介したり、会う人会う人に話したりもしてきましたが、実際に食べてもらうまではちょっと一歩遠い。なおかつ、現地でしか手に入りにくいものもあったりする。せっかく直接実物を紹介できるなら、と思ってこのテーマを考えました。そうか、スナックというかお店ってリアルなメディアなのか、と改めて思います。

「スナック梨央」までの間に入っているのは、発酵デパートメントのディレクターとしてのお仕事で行くロケはいわずもがな、編集者として某メディアで書く旅のレポート記事も食いだおれツアーと言っていいほどおいしいものを食べ続ける出張ばかり。これ、現地でおいしいものを買い集めていったら、私らしいラインナップが組み立てられるのでは?

そんなことも考えつつ、過去に行ったお気に入りの街のものも紹介したい。束の間、東京にいる間に各地からポップアップに来ている友人を尋ねては仕入れの相談を重ねました。

街の思い入れを詰め込みすぎたラインナップ

集めながら、どう考えてもエリアに偏りが出ちゃう……と頭を抱えました。でもまぁ、出張と言ったって47都道府県にまんべんなく行っているわけでもないし、時期によって頻繁に行く場所だって変わる。今回の「スナック梨央」がこういうラインナップになった、という刹那的なメニュー構成でいいじゃないか!と割り切ることにしました。(今後もう一度やることがあったら、全然ちがう構成になるかもね。)

一時期は小田原・東京とあわせて三拠点生活をしていたほど思い入れのある沖縄。今回仕入れ期間には現地にいけなかったのが悔やまれるけれど、お気に入りでお店もスタッフさんたちも大好きなTESIOのハムはぜーったいに入れたかった。

フードの提供に慣れているわけでもない、ということも相談に乗ってもらいつつ、盛り合わせの内容も考えていただき、できたのがこちら。鴨とマンゴーのゼリー寄せなんて、本当に沖縄らしい。盛り付けている間に手の温度でとけちゃうんじゃないかというほどとろけるおいしさ。「これはやばい」しか言えなくなっちゃう方も続出するほど大人気でした。

(当日あまりにばたついていて、まともに撮れてる写真がなくてすみません……)

せっかく沖縄なら、ということで泡盛「大山原(うふやんばる)」や、「O LEMON GIN」もラインナップに追加。長野にいながら、お客様の沖縄の思い出を聞くのもすごく楽しかったです。なぜかコザに長く泊まったことがあるという人が続いて、私より詳しいのでは?と思いながら聞き入りました。

他には、今年に入ってから実家に帰る回数より多く足を運んでいる大分県の商品も。「いいちこ」でおなじみ、三和酒類さんが作っているブランデーや焼酎も持っていきました。フルーティーな香りが大好きな焼酎「西の星」は、暑い夏の日ということもあってソーダ割りが人気高め。

長野だったら車の運転で来る方もいらっしゃるのかな?と思い、ノンアルもこだわりたい。5月に奄美大島へ行った後、奄美の余韻に浸りたくて喜界島出身の知人と会った時、話題に上がったのが「TOBATOBA COLA」。在来種の柑橘を使っていたり、スパイスもかなり効いていて、個人的に楽しむときには牛乳で割ってチャイのようにも楽しんでいました。今回は炭酸で割ってのご提供でした。おかわりする方も多かったなぁ。

端っこのRIO SUMMERだけは出張関係なく、名前だけで追加しました。
マリアージュフレールのルイボスミントティーだけどおいしいんだよ。

岩崎宏美・はっぴいえんど・桂枝雀のレコードも

実は今回ポップアップをやるといいつつ、スナック夜風に足を運ぶのは初めてでした。だけどInstagramなどを見ている限り、どうやらレコードもかけられるらしい。ならば、と思って3枚だけ厳選して持っていくことにしました。

まずは、スナックで私といえばの岩崎宏美。最近は着物生活に合わせてぱっつん前髪をやめてしまったのであんまり似てないけれど、とにかくずっと似ていると言われる芸能人としてダントツ1位だったのが岩崎宏美さんでした。

出張先の各地のスナックで、年齢層がちょっと上な方々のお店の場合、どんなにアウェイでも「岩崎宏美さんに似てるって言われることが多くて……」というと、だいたいなんかホームになる。盛り上がってくれる。聖母たちのララバイをカラオケで入れたらだいたいOK。そんな私の武器でもあります。そのおかげで、一歩踏み込んでその街のことをお兄さんお姉さんに教えていただけるきっかけを得た夜が何度あったことか……。そんな想いもあって、名曲「シンデレラハネムーン」の入った一枚をセレクトしました。

もう一枚ははっぴいえんどのライブ版。ほとんど家でしか聞いたことがないけれど、このライブ版のレコードはなかなか手に入らないらしいし(たまたま下北沢のディスクユニオンで見つけて買ったもの)、できたらみんなで聴きたいなぁと思い続けていました。そんなこともあって選んだ一枚。

そして最後は桂枝雀師匠の落語「青菜」。なんてったって夏ですからね、夏らしい噺なんてかけたら粋かなぁなんて。それでこれを持っていこうと思ったんですけど、そういえば青菜には「柳陰」というお酒が出てくる。これって、日本最古のカクテルと言われているものなんです。材料は、きんきんに冷やした「みりん」と「焼酎」、それに氷。

みりんといえば、去年の12月に愛知へ出張に行った際、「三河みりん」でお馴染み角谷文治郎商店さんの本社にお邪魔しました。そのときに柳陰の話題になったんです。焼酎もある。みりんもゲットできる!ということで急遽メニューに追加。枝雀師匠の「青菜」を聴きながら、みんなで柳陰を飲む。なんていい夏なんでしょう!この二日間で一番売れたメニューが柳陰でした。


全部表情がいい。特に枝雀師匠の顔がいい。

おつまみの勧め方

今回、おつまみもいろいろ用意していました。たとえば三重県の出張ついでにサービスエリアでゲットしたカツオの燻製ジャーキー。スナックだと、2軒目か3軒目としていらっしゃるお客様も多いためか、こういう軽くつまめるものをご注文される方が多いのだなと、当たり前ながらお店側の目線で初めて実感しました。

直前に京都出張があったこともあり、急遽追加したのが八ツ橋クリームチーズ。でも、メニューにこう書いておくといわゆる柔らかい生八ツ橋を想像される方が多いんですね。私が持っていったのは焼いた堅い方の八ツ橋。「あ、八ツ橋ってこっちか」という声も何度か聞こえてきました。でも自信を持って伝えたのは、焼いた八ツ橋こそお酒に合う!ということ。しっかりとシナモンが効いた堅焼きのクッキーと思うと、オレンジワインにも合うんです。そのまま食べてもおいしいし、クリームチーズを合わせたら結構洋風な味にもなる。


発酵デパートメントで発売している「土と種の味がするぶどう酒」というオレンジワインに焼き八ツ橋が合っちゃうんですよ、本当に。

意外とあんまり焼いた方を好んで食べたことがない、という方が多くて、気に入ったとリピートする方もちらほら。みんなが知っているものの、知らない魅力を伝えられるのってすごく嬉しいなと思いました。

一方、私の地元・小田原からは最中の皮を持っていったのですが、これがまたおいしいんです。当日は出さなかったけど、味噌汁とかに入れてもおいしい。でも、最中ならと思ってメニューは最初、発酵カスタードとクリームチーズママレードの2種類だけにしてました。

しかし初日を迎えてみると、やっぱりお酒を飲みにくる方は甘いものよりしょっぱいものの方がお好みのよう。2日目、急遽予定を変更して「レモンペッパークリームチーズ最中」というしょっぱいおつまみ最中を考えて出してみました。そうしたら注文がしっかり入るようになったじゃないですか!

お店をするって、こういうトライアンドエラーの積み重ねなんだろうなという片鱗を、たった2日だけれど感じることができた気がします。

あと、発酵マヨをスティック野菜のディップにしてみたのですが、マヨもおいしいし、長野はやっぱりスーパーで買っても地元の野菜がおいしい!これは出張先のものばかりに頼ったメニュー構成にしていたけれど、少しでも出店先の長野の魅力をメニューに混ぜ込めてよかったなと思いました。

長野でできてよかった。権堂でできてよかった。

準備はもちろん私の個人的な「好き」だけを詰め込みまくっているので楽しくて仕方ない。ただ一点だけ不安があったとすれば、長野はそんなに私にとってホームというほどじゃない。ときどきちらっと寄ったことがあったり、旅をしたことはあっても、まだ深く入り込めているのかな、というほどではなかったのです。

だから、初めてのスナック梨央を長野で開いて、全然お客さんが来なくて「スナック夜風」に迷惑をかけちゃったらどうしよう……。なんて心配をしていました。向かう道中で長野市が近づくほどに緊張していく有様。

でも開店と同時に、夜風の常連さんが来てくださいました。はじめましてだし、スナックのママデビュー戦。なぜか2分だけ超絶人見知りモードを発動してしまったのですが、ちょっと話したらなんとインスタをフォローしてくださっているとのこと。嬉しくなってメニューのこと、各地のことなど熱く語ってしまいました。

その後も、はじめましてなのに、私よりも私の自己紹介が上手いのでは?というほどSNSを見てきてくれた女の子から、長野県内といいつつ2時間もかけて足を運んでくれた方(聞けば福岡在住の共通の友人から勧められたのだとか。そんなスーパーパスを受け取ってわざわざきてくださって感謝しかない……)、長野に移住してから長らく会っていなかった知人など、続々とお客様が続きます。

すごい、全然アウェイじゃなくなった……!これはスナック夜風に日々立っているママ・はるきくんの人徳に依るものだなぁと思いつつ(これはまたあとでじっくり書きます)、おかげで緊張も不安も解けて、終始楽しく過ごせました。

もう一人、印象的だったのは、スナック夜風のある街「権堂」で同じくお店を開いているというマスター。自分のお店をちょっとの間閉めて、顔を出してくれました。それも2日連続で。素晴らしいムードメーカーで、ちょっと下ネタが多いけれど(笑)、誰かが不快になることはしなくて、「俺はママと乾杯するんだ!二人の夜に乾杯!」と言いながら、一本でも多くビールをみんなで飲もうと声をかけてくれたり。そしてあんなに話題の中心だったのに、気づけば魔法のようにサッとお会計を済ませて自分のお店に戻っている。完璧なバランス感覚で、盛り上げ上手、お店のこともわかったうえで、本当に見事な立ち居振る舞い。あまりに感動してしまいました。下ネタこそ言わないけれど(笑)、私もいつかこういう大人を目指したいな、と思うほど、スマートで粋な姿でした。かっこよかったなぁ。

スナック夜風のママ・はるきくんがスーパー完璧

いろいろ書きましたけど、何はともあれスペシャルサンクスを捧げたいのはいつもスナック夜風を切り盛りしているママ・はるきくんです。

私がこういうイベントをやるのも初めて。にも関わらず、ここまでスムーズに進められたのは、本当にはるきくんのおかげです。

イベントのメインビジュアルをどうしようという相談も、私は普段受託の仕事をしてばかりなので自分から自由になんでもアイデアを出して良いといわれると戸惑ってしまったり。それでも、レトロなスナックの看板のイメージが良いとか、出張が多いというような要素を入れたい(旅行カバン)とか、私のアイコンからヘッドホンの要素を入れてくれたりとか、アドバイスが的確。

お店に着いてからも、決して広くはないカウンターの内側で、しかも動きにも慣れていないにも関わらず、優しく、親切に、丁寧に指示を出してくれました。びっくりするほどぎゅうぎゅう満員になった時間帯に、伝票を書くより先にお酒の準備をしながらも、どのお客様が何を頼んでどこまで出したかを空間的に把握している能力がすごい。言われるがままにメモをとってグラスを洗ったり用意したりするくらいしかできない。超能力なのだろうか。

さらに場の空気を見ながらレコードを選んでかけて、ひっくり返してまた再生して、その間にまたお酒を作って提供して、というのがもう早すぎて目が追いつかないほど。

さらに驚いたのは、まだ長野に引っ越して半年ほどだというのが信じられないほど、街に溶け込んで、街に愛されている感じがする。とにかく権堂という街のいろんなお店を知っているし(自分でスナックを営業しながらこれだけのお店を知っていて、ちゃんと足を運んでいるって、時間の使い方がどうなっているんだ?すごい)いろんなお店の人が営業を終えた後に夜風に飲みに来ている。

これはもういろんな人から愛されるお店なのだろうな、というのを、全身で感じ続けた2日間でした。みなさん、長野に行ってちょっと一杯飲みたくなったら、スナック夜風おすすめです。


右が完璧なはるきくんです。

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