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ドヤドヤされてフムフムする。「見えない音」をコントロールする音響の話。

今回はharukaさん(@0o0haruka0o0)のお話をフムフム聞かせてもらった。Twitterを見ながら話を伺っていると「あんまり知らない音響の仕事」「私があまり飲まないカクテルのこと」「出身の稚内について」に話が広がった。広がったと言うか、私が「これ聞きたい」と言っただけだが。

今、音響について書き終えたところでここに戻っている。書いていてとても楽しかったけど、1つの記事で3つは無理があるので、今回は音響についてだけ書き記しておきます。新たな世界を知ることは、とても楽しい。

音響という仕事

私が音響という仕事を意識したのはなんだろうか。結婚式で「ドアが開き、入場するタイミングでこの音楽のサビが来るようにしてください。」とお願いしたあたりだろうか。ちなみにそこは"結婚披露宴の見せ場を妄想する"際に、私が一番最初に考えていたところだった。披露宴の一番の見せ場だけ考える/漫画やゲームを空想する際は一番かっこいいシーンだけ考える/RPGツクールではめちゃくちゃかっこいいシーンだけ考える …そんな経験はないだろうか。私はそんなことばかり妄想していた。私が漫画を描いたら「君は見せ場ばかり考えているけどそれ以外のシーンがからっきし」みたいなダメ出しをされるだろうと思う。

そんなことはさておき、結婚式場で音楽を再生したり、止めたり、調整したり。そういったことを主に行う人…と接したことがある。

…というところまで書いたが、仕事で講演会などのイベントをする際にも音響さんと接したことがあったことを思い出した。再生を担うだけではなく、マイクを使う場合、音楽を流す場合、動画を流す場合の音声…などの設備周りも司っているのが音響さんだ。仕事柄そういったシーンで接することが多いが、もちろんライブハウス、コンサート会場等でも音響さんは活躍をしている。そういったお仕事をされている。

活躍の場

音響さんはどのような働き方をしているのだろうか。大きく分けると2つ。

〇音響等を専属とする会社に勤め、イベントなどのスポット要請に応えたりする(例:ライブツアー、フェス、演劇、お祭り、式典、etc...)
○音響等を専属とする会社に勤め、ホテルやホールを運営する会社との委託関係によりその会場に常駐する(例:公共ホール、ホテル、結婚式場、etc...)

後者を「小屋付き」と言うらしい。知らない専門用語はおもしろい。異業種に転職したりすると当然のように使われることに戸惑うことがある。まぁ、それが専門用語なのかその会社の用語なのか、世代的な用語なのかいろいろあるのだけど。(ゼロックスしといてと最初に言われたときは衝撃だった)

伺うと、この2例が基本ではあるものの、ハコや公演を行いながら音響等技術スタッフを自社で抱えているパターンもあるらしい。劇団四季がその代表例。劇団四季が劇団四季として活動する場所や設備や演者が劇団四季で完結している。これはすごいことだ。劇団四季の舞台を見るときは、頭の先から爪先まで劇団四季に浸ることになるんだな。

…話を戻し、音響の会社ってどんなところがあるのか調べてみた。
日本舞台音響事業協同組合にPA会社の一覧がある。組合員ではない会社も掲載されているのが印象的だ。(リンクは貼ってないけど…。)
馴染みのある近畿圏の中で、目立つ色合いで載っていた(株)大阪音響通信研究所さんを試しに見てみる。ここでは京セラドーム大阪や大阪城ホールなどの音響管理やオペレーションを手掛けていることがわかった。オペレーションはもちろん、機材の施行・保守などのシステムソリューション事業もある。そうしたハコに常駐する業務もあれば、イベントなどを一緒に作り上げることもあるのだろう。

こうしてみると、音響だけではなく映像や照明もひっくるめてステージを演出するトータルソリューションを手掛けている会社ということがわかる。イベントの製作といったところのプランニングまで手が伸びている企業もある。
同じく近畿圏は吹田市にある(有)セカンドステージさんのこのページはイメージがしやすい。また、我が地元滋賀県にある(株)エービー企画さんはイベント実績が載っている。イナズマロックフェス……本体ではなく ニュース出し映像素材編集を手掛けたことがあるらしい。本体は違うのかぁ。エービー企画さんはHPの更新が滞っているのが気になる。

北海道出身、東京在住のharukaさんの話に戻ろう。

高校時代にライブハウスで音響の仕事に触れ、その世界へ飛び込んだというharukaさん。音響を始め、舞台製作等を学ぶ専門学校があるらしい。あるらしいので、調べてみた。これも親切に日本舞台音響事業協同組合にリンクが貼ってある。大学も短大も専門学校もあるようだ。馴染みの西日本で専門学校を見ると、組合に入っているキャットミュージックカレッジ専門学校が目に留まる。案外組合って入ってないところが多いのだろうか…。

ミュージシャンやダンサー、作編曲家等を育成するアーティスト系の専攻と、音響、照明、映像、そして制作スタッフを育てるスタッフ系の専攻、昼間部合計 18専攻を有する専門学校として、即戦力を求める音楽業界に多くの人材を送り出して参りました。必要な専門知識はもとより、音楽を通じて人間性を高め、社会人として通用する人材を育成する「人間中心の教育」を展開しています。

なるほど、アーティストを育てる専攻と、制作を支えるスタッフを養成する専攻があるらしい。こういったところで学んでいくのか。
お、卒業生の進路に先程あげた大阪音響通信研究所さんがある。
あ、卒業生にやなわらばーがいるらしい。やなわらばーは「拝啓○○さん」という歌がすごく有名になったころに知って、母がよく聞いていた。私にとっても思い入れがあるアーティストだ。今ホームページを見に行くと、今年の年末に解散、11月に20年のありがとうを込めたラストライブを行うらしい。無事に開催されますように…。

気がついたら沖縄出身、吹田の学校発アーティストの話になってしまった。

専門学校でいざ音響を学ぶぞ!照明を学ぶぞ!と言った同級生たち。みんながその進路に進むかと言えば違うようで、harukaさんの実感では半数くらいは「これなんか違うな…」と違う道に進む子も多かったとか。

進路の話で言えば、学校に現場でのバイト求人が来るので、そこでコネを作って進路を切り開いていくケースが多いらしい。

仕事の現場

ようやくharukaさんの仕事の話に入る。
音響での仕事、いわゆるPA…いわゆるなのかはさておき、PA(Public Adress、公衆伝達)元々は放送設備という意味ではあるが、オペレーターのことを指して使うことがあるようだ。
今はホテルに常駐し、結婚式や企業の研修や製品発表会、シンポジウム等で活躍している。式場で音を流すことはもちろん、そのための設備の準備、調整を行っている。ハウリングの抑制もそれに含まれる。

ハウリング…スピーカーから流れる音をマイクが拾ってそれをまたスピーカーが出してマイクが…とループして起こる事象というのは知っていたが、マイクの音声を拾っているなら、なぜ同じ音声ではなく、あんな「ピー」とか「キー」とか不快感の塊が生まれてくるのか疑問に思っていた。

どうやら、スピーカーから出る音にもマイクが「拾ってしまう周波数」と「拾わないで済んでる周波数」があるらしい。音の一部分だけをマイクが拾って増幅するからあんな音が出ているのだ。

それは会場の環境や、発している音によって異なるようだが、音響さんは「イコライザー」と呼ばれる機械を使い、「ハウリングしてしまう周波数」をカットしている。

マイクが拾った声・音 → イコライザーでやばい周波数をカット →スピーカーに流す

これによって、ハウリングが起きないように調整しているらしい。

「飛び出そうとしている音をカットしているんです」
「音は見えないから、感覚として覚えてます。ラがだいたい800ヘルツなのでそれを基準にしたり…深夜テレビでピーとなっている音(1000ヘルツ)より高いか低いか、とか…」
しれっとかっこいいことを聞いた。同時に、深夜のピー音って聞いたことが無いなぁとも思っていた。カラーバーにピー音、都市伝説じゃなかったのか。夜ふかしできない子だったので深夜の世界はあまり知らない。

音は見えないとは言え、機材によっては数値化もされるので…と付け加えてはいたけど、これは紛れもないプロの仕事だ。かっこいい。事前のセッティングでわざとハウリングさせてみることもあるらしい。その際は特定の周波数を「ブースト」して実験をしたりする。ポロポロ出てくる用語がかっこいい。

本番でも、喋ってる人の声に合わせてイコライザーを調整しているようなので、ホント大変だ。今後喋ってる途中でいきなり奇声をあげるようなシーンに出くわした場合は音響さんのことを心配するようになってしまった。私は奇声をあげる芸風を持ち合わせていないので安心だ。音響さんに優しい男、でご。

ふと気になることも聞いてみた。ドームなどの会場では音の届き方が客席によって違う。そういった場合はどうしているのだろうか。
「音の速さは秒速340メートルで…」とすらっと言い始められた時点で「かっこいいー!」と瞬間的に思ってしまう。距離と音速を考えながらスピーカーを設置し、また映像との兼ね合いも考え、スピーカーから音を出すタイミングにディレイをかけることもあるらしい。

ドーム球場やアリーナと呼ばれる会場では、観客席の広さに対応するため舞台付近に設置されるスピーカの他、より聴衆に近い場所にスピーカが設置されることもある。この場合、同時に音声を出力すると伝達時間の差により音質に影響が出るので、音響の伝達経路(シグナルパスと呼ばれる)に配慮してディレイをかけることが多い。
(wikipediaより)

個人的体験

元々ライブハウスきっかけで音響に興味を持ったharukaさんの、忘れられない体験。それは、自分がライブの現場で音響をしたときだ。

開場し、観客が開演を待っている中で、アーティストのギターを舞台に持っていき音のチェックをする際、ふと観客席を見たときの客席の光景。
自らが「こっちの世界にきた」ことの感動は、今でも忘れられないと言っていた。

ライブが始まる前、スタッフさんが楽器を鳴らしているシーン。そこにもドラマがあるんだなぁ。これを書いてたらライブ行きたくなってきた。ゆずのライブは延期になっちゃったし、そういえばイナズマ戦隊のライブも長らく行けてない。

ライブハウス、コンサートホール、結婚式場…。それぞれ適した音の調整があって、それは「当たり前」のように作られている。耳が肥えている人、同業者であれば「プロのワザ」がわかるのだろうけど、ほとんどは適した音に身を委ね、音響のがんばりに気づかないままかもしれない世界かもしれない。

表には目立たないけど、知らぬ間に恩恵にはどっぷり浸らせてもらってるんだな。話を聞くことで、注目するポイントとか、気付けるポイントが増えたように思う。ただ、本番中は「当たり前」のように構築された世界にどっぷり浸ることにする。舞台裏のことを気にしながら楽しむより、観客がそれらを気にしないくらい、現場の空気に夢中になれることがきっと本懐なのだろうから。

※後日談
なんと話を聞いたharukaさんがnoteで紹介してくださいました。音響裏話も含めて、こちらもぜひ!


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