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ドヤドヤされてフムフムする。オペラをもっと身近に!オペラ歌手の活動について

以前bosyuラジオでご一緒したあさみさん(@ciamisop)のお話を伺う機会を得た。あさみさんはオペラ歌手であり、5年ほどイタリアで活動されていた。次はフランスに行かれる予定だが、一時帰国中に自粛生活となり、今なお日本に滞在されている。

みなさんはオペラと聞いて何を思い浮かべるだろう。…というか、そもそも私はちゃんとオペラに触れたことがあっただろうかと思い返す。

おそらく最初はFF6のオペラシーンだ。マリアとドラクゥ。セリスの名演、SFCなのに歌が聞こえる驚き…。アリア名曲よね…。と思い出が蘇る。……これはオペラに触れたと言えるのか?

次はオペラ座の怪人だろう。劇団四季ではなく金田一少年の事件簿だ。書いておいてなんだが、これはオペラに触れたと言えないな?私でもわかる。
のちに劇団四季のオペラ座の怪人を見ることになるが、金田一を読んでいたおかげで変なハラハラ観劇になってしまった。

ということで、オペラについて「なんとなーく知っている気がする」だけの私は、まずオペラについてフムフムした。

オペラ基礎知識編

そもそもオペラとは。
日本語で言えば歌劇。歌で進行する劇。
「細かいことを無視して、少し雑な説明をすると…『ミュージカルの古典版』という感覚で良いと思う。」とのことです。

ミュージカルはポップミュージックを使ったり、歌ったり踊ったりセリフがあったり…。オペラはクラシック曲をもとに進行する。…というか歌で物語を表現しているのか。「物語全部歌で進行させてみました!」

……って冷静に考えて「何考えてんだろうな」と思わざるを得ない。吟遊詩人がポロロンと引きながら語るとかならわかるけど、フルオケで歌いながら進行する物語ってどうなっているの。

とはいえ、日本の能も曲目で物語を表現したりしているのか。演じる後ろで生演奏している世界観も不思議ですよね。こういった物語を曲で表現するのは古今東西存在しているんだなぁ。

そんなオペラだが、楽曲だけ切り取ると、案外聞いたことがある楽曲がちらりほらり。それこそCMなどで聞いたことがある音楽もある。凱旋行進曲とか…

楽曲自体に触れることはあるが、オペラ観劇となると日本ではそこまでポピュラーではなく、専属劇場を持つオペラ団体はあまり存在しない。

他の分野で言えば、例えば劇団四季が四季劇場を持つように、宝塚が専属の劇場を持つように。…そういった類にまではなっていない。

「オペラ専用の劇場って、ミュージカルとかとどう違うんです…?」
「うーん…舞台の手前に、オケが演奏するスペースがあるんですよ。オーケストラピットと言って…」
「あ!!音楽の授業で聞いたことあるやつだ!!!」

知ってる単語が出てきて興奮する子どもみたいになっちゃった。オーケストラピット、習ったよ。かっこいいよね…。

そういった拠点を持って活動する団体はまだまだ少ない。公演を行うハコを予約ところからがスタートだ。海外に目を向けると、それこそ「世界三大歌劇場」という、聖地オブ聖地も存在している。スカラ座とか聞いたことあるわ…。

あさみさんいわく、オペラはデートや婚活している方のスポットとしておすすめ!とのことです。字幕もあるので、「何言ってるかわからん…」とならない。
その上、オペラの演目は、惚れた腫れた、悲劇の死!みたいなカテゴリが多い。(言い方)

ストーリーの王道のような要素がぎゅぎゅっと詰まっているので、話のネタになりやすい…らしい。
昔も今も、人が創るドラマというのはそういったものなのだろう…。

言語的にわからなくても、なんか聞いたことある曲で、わかるような感じのストーリーということなのかもしれない。(雑な書き方だ…)

さらにヨーロッパジョーク…ではないが、オペラの言い回しの中には海外ならではのものがあるそうだ。ニュアンスに隠された下ネタだったりとか。言い回しというのかな。京都で言うぶぶ漬け的な…。

こういうのを知りだすと、セリフの裏に潜んだニュアンスを楽しめるようになるんだろうな。演劇でシェイクスピアを引用して、知ってる人はニヤニヤするみたいなことだろうか。違うか?

オペラ公演事情

実際にオペラ歌手としては、どんな流れで舞台にあがるのだろう。

いわゆる歌手としてエージェントを持つ(≒事務所に所属する)こともあるが、実際の仕事としては直接オファーされるよりもオーディションで決まることが多い。これは以前聞いた俳優の話にも通じるものがある。

エージェントが持ってきてくれるのは、オーディションについての話だ。

オープンなオーディションとなる前の、プライベートオーディション(まずツテを伝ってのオーディション?)をすることもある。

それを引っ張るのがエージェントの腕の見せどころであり、先にその話をもらえるようになるというのも、歌手としての知名度や実績によるのかな。

このオーディションもなかなかチャレンジングだ。劇場、演目など「歌手」以外すべて決まった状態で、稽古等の都合が合う歌手bosyu!みたいな感じみたいだ。集まらんかったらどないするんやろ。

オーディションを受ける立場としては、自分の声や見た目、歌えるキャラクターを武器にして飛び込んでいく形となる。自分のチャンスとなる演目が来たら逃さない!仕事を取り続けるために、常にオーディションを受け続ける生活だ。

海外だと小劇場も多く、そもそもの機会の数が違う。地域振興を兼ねて開催されることもある。地方の公民会で演劇をやるから、参加してくださーい!みたいな感じなのかな。

あと、ヨーロッパにおけるオペラは、いわゆる「伝統芸能」みたいな、歴史的芸術的存在でもあるため、教育の一環にもなっている。日本でいうと能や歌舞伎みたいなものか?

それゆえ、小学生を対象として開催するオペラも多いらしい。文化教育っぽい。日本でも、芸術に触れる機会を創る形で、文化庁が体育館規模で行う事業も開催しているらしい。海外の文化に触れる機会を持ちましょう!的な。

歌手にとっては、自分自身が楽器である

あさみさんは小さい頃から音楽に触れていたが、一度その道から外れている。再び音楽の世界に戻ったのは大学の時だ。音大で歌にチャレンジすることになる。

音大の話といえば…ゲーム音楽で歌声入ってる曲、あれに声を入れるアルバイトがあったりするらしい。神々しいラスボス戦とかで流れてるやつとか、そういうのありますよね…!

この辺は詳しく聞いてないけど(聞いても書けない)、ああいった楽曲のコーラス系って、プロだったり音大の人だったりいろいろあるんだろうな…と妄想が膨らんだりもした。

ゲーム音楽のコーラスは一つの例だけど、音大生(芸大生)を対象としたアルバイトというものも、たくさんあるんだろうなぁ。これはまた知らない世界だ。

あさみさんの話に戻る。
学生時代に入った事務所を通じ、結婚式などのセレモニーで歌う仕事を行ったり、過去ピアノをやっていた経験から幼児教育にも携わりつつ、合間にオペラの舞台に挑戦するようになる。

通い始めたオペラ研修所をきっかけに海外留学をし、そこから5年ほど海外での活動が続いた。

海外で出会ったコーチと二人三脚で活動を続けているわけだが、歌手とコーチの関係性というのも、聞いてみると新鮮だった。

オペラ歌手にとって、演技指導等テクニカルな部分の指導はもちろんあるが、何よりもまず客観的に自分の声を聞いてくれる人が必要だということ。自分で出している声は、一生自分自身では聞くことができないからだ。

普段聞こえる自分の声は、実際に人に聞こえているそれとは異なる。録音して聞く声も、機械を通じているため純粋に同じわけではない。人の耳に届く自分の声を、客観的にジャッジしてくれる固定のコーチが必要なのだ。

自分のコンディション、力の入れ方、精神状態などが影響して、出る音が変わる。歌手にとって自分の体は楽器なのだという。かっこいい…。(すぐかっこいいと思っちゃう)

どのようにすれば良い音が出るのか。自分が気持ちよく歌えるやり方と、他者からどう聞こえているのかの適切な響きを、コーチと一対一の中で見つけていく。

自分の出す声は自分では一生聞けない。それを客観的に聞いてくれる人とチューニングをしていく…この関係性はとても独特だ。自分自身が楽器だから、自分にしかわからない感覚ももちろんあるのだろう。

自分が気持ちよく出せる音と、聞く側が求める音が違ったりもするんだろうな。そこの指導も相性が関係しそうだ。

あさみさんの試み

最後は、そんなあさみさんの試みを紹介する。
一時帰国のつもりが長期日本滞在となってしまったあさみさん。

今は、bosyuで音楽レッスンを行ったりもしている。外出ができない中、特に子を持つ親御さんに対して、家でも音楽を楽しめる機会を作ろうとして始めた取り組みだ。

ミラノにいるとき、現地に駐在していた日本人のご家族向けに音あそびのレッスンをしていた経験が生きている。

また、元々ピアノの幼児教育をやっていたあさみさんは、子どものモチベーションに対しての関心が強い。子どもの純粋なモチベーションをどう伸ばすのかということや、一方で集中が続きづらい子どもに対し、いかに飽きない工夫をしてあげられるかを考えている。

興味を持ったことを続けていくことで、どんどんそれが好きになっていくことに繋げたいし、そんな喜びを感じられる場を作ってあげたいと、あさみさんは活動されている。

相性の合うコーチと出会い、歌う喜びを感じられたりした経験から来てるんだろうなぁと思う。チャレンジすることや興味を持ったことに対し「いいね!」と褒めてくれる、認めてくれる環境に身を置くことで、のびのびとパフォーマンスを高められるんだと実感してきたことが活かされている。

自身も幼児教育で指導する側に立っていたから、指導される側で感じた「良い指導」を違う視点で身につけられているんじゃないかと思った。

音楽を楽しむシーンを作っていきたい!と語る中で、オペラがちらつくシーンを作りたいとも言っていた。

まずはオペラを知るきっかけだ。「なんかすごい高い声だな」「声がでかくてすごいな!」みたいな、そんな音楽もあるんだ!と興味を持てる場面を増やしていきたいと話していた。

あさみさんはYoutubeのチャンネルを立ち上げ、応援したい人たちを招いた動画を作成、発信もされている。オペラに限らず、多方面のジャンルの方を招かれているのがおもしろい。

ゲストを招くだけでなく、イタリア語について解説する動画であったり、逆にイタリア人向けに日本を紹介する動画を作ったりしていく予定だそうだ。

イタリアと日本の文化を橋渡しする役、実際にイタリアで活動していたあさみさんが、日本からそれらを発信することは、双方にとってフムフムすることばかりではないだろうか。

オペラだけに限らない範囲で、いろんな人の「きっかけ」を作ろうとしているんだな。きっかけをつくった後は、それを一緒に盛り上げていきたいと、多くの人を巻き込んで楽しいところへつれていくパワーを持っている。

あさみさんのすごいところは、舞台に立つ人として、業界全体の課題についても考えているところ。契約の話だったり、報酬の話だったり、今みたいな舞台仕事がないときの活動の話だったり。

仕事の依頼の仕方/請け方一つとっても、業界の風習でおかしなところあるぞ!みたいなのは是正しようとしているし(海外だと日本以上に泣き寝入り案件があるぞ!気をつけろ!)

こんな仕組みだと仕事がしやすいよね。といった認識を広めていって、その考えで仕事を請ける/依頼できる関係性を作っていきたいともお話されていた。だからこそ、自分が仕事を依頼するときは、相手が仕事を請けやすい形で仕事を整えている。こういう仕事の仕方もあるんだね!という土壌を作ろうとしている。

オペラのことについても、ただオペラを広めたい…じゃなくて、どうしたら関わる方がハッピーになるのか、国だったり、ファンだったり、様々な関係者に応援される形になるのかとかを考えているため、関係者各位のメリットを考える視点を持たれているなぁというのがひしひし伝わってきた。

これは、自分自身がどんな環境なら楽しくやれるのかの発想が根底にあるのだろうけど、そのために自分が先陣きって関係者に働きかけていくぞ!という行動力も併せ持っていることで、すごく説得力のあるインフルエンサー気質だ!と感じた。頼りになるタイプ!!

そういった視点で動かれている方は、安心できるし、応援したくなるし、巻き込まれたくなる。
話し上手だし、相手の良いところを見つけ上手なあさみさん、Youtubeも様々なゲストをお招きされていますが、関わっている方々がハッピーになるコンテンツだなー!と思っています。

最後はオペラの話というか、あさみさんの応援みたいになってしまった。でも、あさみさんにはそんなパワーがありました。ありがとうございました。

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