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深夜11時の魔境

だいたい夜11時ごろ、バイトしているお店から自宅まで歩いて帰る。 わざわざ徒歩で帰る表向きの理由としては、 アーケードには屋根がついているので雨でもストレスがないし、 たいした距離はないけど、なんとなく歩いたほうが健康的な気もしているから。 本当は、単に電車とかバスを使うには微妙な距離だからです。 バイト先から10分ほど歩くと、まずそば屋にさしかかる。 このあたりでは有名な地元チェーン店の立ち食いそばで、 横を通るだけでかつおだしの濃厚なにおいを浴びることになる。

    • 早起きは

      休み明け朝一の出勤があまりにもつらかったので、 少しでも気持ちを上げようと、いつもより早めに家を出て駅の中にあるスタバに入った。 ラッキーなことに店は空いていたので、どのサンドイッチを食べるかに相当な時間をかけ、店員のお姉さんに「まだ悩みますか…?」と言わしめるほど熟考した末に、サーモンの入ったフォカッチャを注文した。 ただでさえお互いのマスクがあるうえに、わたしの声質の通らなさが最悪の形で加担してしまい、極めつけに飛沫感染防止の透明なスクリーンを挟んだコミュニケーショ

      • 秋?

        猛暑に苦しみ、マスクによる汗と肌荒れに悪戦苦闘した夏が、 少しずつ少しずつ遠のいているような感じがする。 一日の中で例えるならば「夕方」だし、色で言えば「茶色」とか渋めの色で、 日も短くなってきて、もうすぐ冬になってしまう・・・となんとなく物寂しいイメージを連想させる秋なので、 四季人気投票で言えばたぶん冬と4位争いをすることになると思うけど、 私は秋が一番好きだ。 秋のこの天気というか、空気の匂いがもう、何とも言えず良い。 金木犀もひと役買っているのは確かだけど、 金

        • ああ、素晴らしき

          いつも9月ごろに国内のどこかに旅行に出かけていた、ここ数年。 自然と今年は旅行は断念、となってしまったが、やっぱりさみしいので、 近くにある温泉旅館へ泊りに行きました。 いやはや、温泉ってどうしてこんなに素晴らしいんでしょう。 現実に戻ってきてから数日経ちましたが、 心がまったくついてきていません。 今回は割引がきくということを最大限に活用して、 いつもは行けないような歴史ある旅館を予約したんですが、 玄関も広くて綺麗で、もちろん内装も素晴らしくて、 ウエルカムドリ

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          ふしぎな三人組

          よく行く喫茶店の、よく座る席でぼんやりしていると 隣の席に、大荷物を抱えたおばあちゃんがやって来た。 ひとつの丸いテーブルに向かい合って2人が座れる席で、 隣の席とはソファがつながっている。 横の席に人が座るときはだいたい人間一人分くらいのスペースを空けて その席のテーブルの真正面に座ることになる。 明らかに買い物帰りのおばあちゃんは、 たくさんの荷物を私のすぐ横に置くかと思われたが、 期待を裏切ってテーブルの真正面に荷物を置き、 そして私の真横にちょこんと座った。

          ふしぎな三人組

          生活とSNS

          マスクをせずに外出すれば周りの視線が気になり、 気兼ねなく旅行したり、大勢でごはんを食べたりすることが難しいと感じるようになってからもう半年以上経っている。 私一人の小規模な私生活にもそれは相当影響してきていて、 朝起きたらとりあえず研究室に向かい、 同じ居室の同期とか後輩たちとか院生の先輩と顔を合わせては喋り、 お菓子食べてコーヒー飲んで、 授業では常にグループワーク、 ディスカッションに次ぐディスカッションの毎日というのが いかに幸せなことだったのかを、 噛み締

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          乾杯

          このアルバイトを始めて、もう5年半ほどが経った。 魚の美味しいこの店は小さな居酒屋で、夫婦が2人で営んでいる、いわゆる個人経営の飲食店だ。 客層は7割くらいがサラリーマン、2割くらいがセカンドライフを謳歌している人生の大先輩たち、残りの1割は観光客やカップルなど、いろいろな理由で偶然この店にたどり着いた人たちである。 「タクシーの運転手に、美味しい店を訪ねたらここを紹介された」と話す客もいた。その話を聞いたときは、ただのアルバイトなのにどういう道理か、「そうでしょう、いい

          アンバランス

          今朝、日本中の誰もが知る有名人が、ウイルスに感染して亡くなった。 例のウイルスがニュースで報じられるようになってから、しばらくたったが、今になって異常な事態が起きているということが理解できてきた気がする。 奇しくも、彼の死によってみんな気付くことができたように思う。 東京では感染者が毎日数十人増えていて、外出することを自粛するように要請しているらしい。 わたしの住む街でも、感染者が出ている。感染経路も、すぐ近くだ。 ウイルスから身を守るためには、不要不急の外出を避けるこ

          アンバランス

          不運は重なる

          出かける前に、溜まっていた洗濯物を急いで干したら、 家を出たとたんに霧のようなにわか雨が降りだした。 ベランダには屋根がついているし、物干し竿も気持ち内側に立ててあるとはいえ、 雨が降ってしまってはあの服たちは乾かないだろう。あーあ。 今日はかなり暖かいので、歩いていると少し暑くなってきた。 こんな日に限って、一番厚手のヒートテックを着てきてしまっている。天気予報をちゃんと確認しなかったツケが、あらゆるところに及んでいる。悔しい。 今日の洗濯物はもうだめだな、と諦めながら

          不運は重なる

          コーヒーと人間模様

          わたしはコーヒーを飲むのが好きだ。 いや、厳密に言えば、コーヒーを飲みながらぼーっとすることが好きだ。 考え事をしていてもいい。考えるべきことはたくさんある。 最近巷を席巻している例のウイルスはいつ収まるんだろう、どのくらい影響が出ているんだろう、最近の政治は、国会は、外交問題は・・・(すみません、だいたいは晩ごはんのこと考えてます)。 1人でカフェに行くことも多いのだが、そんなときはだいたい近くに座っている人の会話に聞き耳を立ててしまう。これがまた楽しいのだ。 あまり良

          コーヒーと人間模様

          春はあけぼの

          妙に暖かい日と、キンと冷えた日がランダムにやってくる。今日は寒いほうの日だ。 暖かい日のときは、こんなにぽかぽかしていると花も勘違いするんじゃないか?というくらいの陽気なのに。 冬が少しずつ去って行っているのは確かだが、春はまだ当分やってこないようだ。 しかし、こんなに寒くても、もうやってきているものがいる。 花粉だ。 先日、花粉症の症状を抑える薬をもらいに、いつもの耳鼻科を訪れた。毎年お世話になっている耳鼻科なので、診察室ではいつものおだやかで手際のよい先生が待っていた

          春はあけぼの

          いちごのショートケーキ

          「デートでケーキを食べるときは、ショートケーキを選ぶんだよ」  あれは夕方のことだっただろうか。図書室には夕日が差し込んでいた。「貸出受付」と札の立てられたカウンターの前に、まるで専門店のように美しく並べられたしおりたちを物色するわたしに、先生は突然そう声をかけた。 「なんで?先生」 わたしは、先生の唐突な発言に相槌を打った。  先生は、いつも(司書なのだから、当然なのだが)図書室にいて、わたしが借りようとする本を「えー、これ読むの?あんまり好きじゃないと思うよ」と勝

          いちごのショートケーキ

          記録

          どんなに忘れがたいほど楽しかった出来事も、心をキュッと痛めた出来事も、ある程度の時間が経ってしまえば、ぼんやり輪郭を失って、流れて行ってしまうものだ。 今回は、そうなってしまわないために、記録をつけたいと思い、書いています。 そろそろ日も傾いてきた夕方の5時半。もう開場の時間だ。急ぎ足で会場へと向かった。 ロビーに降りていく階段は、金色につやつや光る手すりと、必要最低限のものだけを照らす上品な明かりがとても印象的だった。ここに来るのは初めてではなかったけれど、これから見

          寒さをしのぐ

          昨日今日と、かなり冷え込んだ。 なんでも、とても強い寒波が押し寄せているらしい。 昨日はベージュの、柔らかいパンプス(これしか持っていない)をはいて外を歩き回ったら、足の甲が冷たい風に晒されて、ジンジンと痛くなった。 街行く人の暖かそうなブーツをうらやましく思いながら足早に歩いていると、ひざ上丈のスカートと短い靴下で元気に街を歩く女子高生たちを見かけた。女子高生は最強の生き物だ。 「寒い」よりも「痛い」に近いこの土地の冬ももう5回目だけど、 いつまでも慣れない。「そろそろ慣

          寒さをしのぐ