不失者「不失者」

ジャンルは何だろう…別にわざわざジャンル分けする必要もないのだが、自分も一応ヘビィなロックも聴くが、ここまでアングラな感じの音楽を聴いたのは初めてだ。

ノイズ、前衛音楽、アヴァンギャルド…「リザーブジャンキー」というサウンドコンセプトらしい、このアルバムは89年にリリースされたライヴアルバムだ。

このアルバムを聴き進めているうちに「あれ?この感じはブラックメタルの…」という感覚になった、suno))の「black one」っぽい感じが何となくした、もちろんメタルではないが、暗闇の中で呻き叫ぶ感じがなんとなく似ていたというだけかもしれないが、しかし少し調べてみたらsuno))のメンバーともコラボレーションしていた。やはり音楽的に共通点があるのは間違いない。

しかしこのアルバムがリリースされたのは1989年なので当然suno))が活動していたよりずっと前である、灰野氏が音楽活動を初めたのは70年代からだ、日本ではこういったジャンルの音楽の先駆者である。

こういった音楽は評価が難しいと思われがちだが自分が聴いた限りはノイズやアヴァンギャルドと言われていてもただメチャクチャやっている感じはしない、それどころかかなり計算されているなぁと思ってしまった。

リズムは普通に合っているし、ギターのコードもけっこう考られていると思う、不吉な世界感をよく作り出している、歪んだギターソロも聴いていて気持ちいい、歪ませるだけでなくクリーントーンも多様し、曲の世界観を作る、ギターの五弦六弦をズンズンするわけでもないがメタルが好きな人も気にいると思う。

一曲目の「あっち」はギターだけでなくハーモニーカも使われているがリズムがブルースっぽい、だからハーモニカを入れたのだろうか?ブラックサバスのファーストアルバムを思い出した。

ヴォーカルを聴くと「ちょっとこの人危ない人なんじゃないか」と思うが、灰野敬二という人は音楽を初めてからずっとコマーシャリズムに背を向けてきた人なので普通に歌うということはしないというだけなのである。このヴォーカルに拒否反応を示す人はいるかもしれないが…

そういえばオノ・ヨーコ氏が前衛芸術と称して歌っているのか叫んでいるのかよくわからないヴォーカルを披露していたがちょっとそれを思い出した(笑)

このライブアルバムを聴いて個人的にに思ったのはやはりブラックメタルやドゥームメタルを先取りしたサウンドを展開していたということだ、もちろんこの時代にブラックメタルやドゥームメタルというジャンルは日本には殆ど浸透していなかったと思う、今でも日本ではアングラなジャンルである。

そういう意味ではかなり時代の先を行っていた事は認めざるを得ない事実だと思う。

中盤スローなテンポが続き少ダレる感はある、しかしこの手ジャンルが好きな人は(どれくらいの人がいるかは分からないが)中毒性があり、ハマるかもしれない、自分もいいと思う、聴くタイミングを選ぶかもしれないが。

灰野氏のやっている音楽を聴いたのはこのアルバムだけなので他の音源は聴いていない、現在はどういったサウンドを展開しているのか気になるところだが。

灰野敬二という人は70歳になるという。この歳までコマーシャリズムに背を向けこういったジャンルの音楽を続けているのは、変人というか(笑)なかなかの強者だと勝手に思ってしまった。こういったジャンルは一歩間違うと自己満足に終わる可能性がある。自己満足でもいいのかもしれないが、海外でもライブを行い、今でも精力的に活動しているらしい。

最近では沖縄電子少女彩という人とユニットを組み
「愉楽」というアルバムをリリースした。

動画のインタビューは個人的にけっこう面白かったです、灰野氏の音楽観やこだわり、思想などを話しているが、「弦に指が触れた時、意識を触れた弦の下まで持っている」「三つタメを作る、不失者では三重のタメと言っている」というギターの話があったがこれはちょっとわからなかった(笑)

意外だったのは「観に来てくれた客を少しでも楽しませるように心掛けている」と発言したことだ。当たり前と言えば当たり前だが、ノイズ系の音楽をやっている人は「客のことなんか知ったことじゃねぇ、俺が満足すればいいんだ」という主義かと思ったが。

話は変わるが、自分はプロでも何でもない、アマチュアですらないかもしれない、趣味でギターを弾き曲を書き、動画やライブ配信をしているだけだ、(今は指をケガしてギターすら弾けないが)昼間は普通に働いている。

自分は例えばゴルフが好きになろうが、結婚して子供ができようが、会社でどんなに偉くなろうとも、「音楽」とは一生離れられないと思う。勝手に興味がなくなればいいのだが、なかなかそういかないので困っている。

灰野氏のように70歳にもかかわらず大衆受けしない音楽をやり続けている人になんとなくシンパシーを感じてしまう。もちろん灰野氏はプロでそれで飯を食っているわけで同じでも何でもないのだが。

とりあえず不失者の「不失者」聴いてみてはどうだろう?気にいる人を選ぶ音楽性ではあるが。

関係ないが灰野氏は電車に乗るらしいがこのルックスで電車に乗ったら目立つだろうな…

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