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村上春樹 ダンスダンスダンスと旭川

 ユキちゃん
 この物語には、13歳のユキちゃんという女の子が登場する。母はカメラマン、父は冒険作家で、何不自由なく生活しているのだが、両親にはそれぞれに恋人がいる。

 ユキちゃんは、13歳とは思えないほど賢く、周囲で何が起こっているのかを読み取る力、その場で何が起こったのか、感じ取る能力もあった。
 繊細で、口癖は「バカみたい」である。

 だがどんなに物質的に恵まれていても、ユキちゃんの寂しさは常にユキちゃんを危うい状態にしている。

 もちろんユキちゃんの両親はユキちゃんを愛していたし、心配もしていた。
 だが、蓋の閉まらない歪な愛情でユキちゃんを救うことなどできるはずもないことも知っていた。代わりに、唯一ユキちゃんが心を開いた、主人公の僕に話し相手をお願いする。

   もし「僕」との出会いがなければ、多分ユキちゃんは六番目の人骨になっていたはずだ。

 旭川で事件に巻き込まれた子どもの周囲には、ユキちゃん的にいえば、バカみたいな大人が多過ぎた。(もちろん私も含む)

 ダンスダンスダンスは羊をめぐる冒険の続きで、イルカホテルはドルフィンホテルとして同じ場所に存在していた。

 ホテルの受付で旭川出身の眼鏡の似合う女の子が出てくる。
 物語に入る受付で「旭川」という名称が出てくるのは、多分ホテルの16階には、現在の旭川に繋がる扉があるはずだから、と私は勝手に信じている。

 確かに問題のある街は旭川だけじゃない。だが現在の旭川は刑事までもが悪に染まり、悪が街の至る場所に蔓延っている。

 勉強さえ頑張れば、良い大学に入り、良い就職が待っていて幸せになれると洗脳する大人。

 複雑な家庭の事情に対し偏見を持っている人。


 生活保護を悪くいう人。などなども含めると、数えきれない。

 差別意識の高い大人に蹴落とされ、道に迷った子どもを待ち構えているのは、気持ち悪い大人たちだ。偏見者と同じくらい気持ち悪い大人が、薬、性売買、恐喝、などなど平気で行っている。


 ドルフィンホテルの16階まで行って、羊男に会いにいく子が1人でもいたら旭川は変わるかもしれない、と思った。
 寂しさを片手に持って、羊男が言うように、できるだけ上手く踊ってみる。孤独と向き合いながら、大切な何かが正しく繋がるまで、音楽は途切れない。

 誰にどう思われても、かっこ悪いときがあっても、踊り続けていれば、羊男は、あなたのために最善の努力をしてくれるのだから。
















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