【詩】No.n
組織の飼い犬がビルから落下し凄惨な死を遂げた。その跡は通勤電車で誰かが溢した酒のようにベタついていたが次々と踏まれて下足痕で上書かれた。素直に弔おうとすれば同じ志のはずの誰かは必ず組織のスパイだ。散り散りになろうとする俺たちをケージに戻すために当局の奴らがやってくる。俺たちは逃れようとしながらも各自に刻印されたNo.で管理されそれは腑抜けにする肌触り故簡単には脱走できない。
結局大人しくNo.の巣に戻って行くのさ。
常に憂鬱でグルグル巻きにした絶望を背負いながら賃金を恭しく受け取り家族が喜ぶ顔だけを担保として生きている。今日もビルから落下する恐怖と恍惚の拮抗に脳を麻痺させエレベーターのボタンを的確にプッシュし決められたケージの中へ自ら入っていく。