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気象予報士は通訳士とクレーム対応

本屋に行く目的は人それぞれだ。私はサッカーや車の最新情報をインプットするために、時間の隙間に本屋による。そして、本屋を出る前に科学コーナーにより、本の背表紙たちを眺める。どんなに小さい本屋でも科学コーナーには必ずと言っていいほど天気の本が置かれている。一般人向けの天気の本は、表紙がだいたい青空色。そんな青空に疑問を抱いたことがすべての始まりである(かなりおおげさ)。

私は気象予報士であり気象会社に勤めている。今回は気象予報士の仕事の実態を紹介する。おそらく一般人からした気象予報士の仕事の印象は以下の通り。
1、天気予報の解説をしている
2、天気図を見て天気を予想している

結論、このような仕事をしている人は気象予報士の中でもほんの一握りだろう。1について、天気予報の解説に、気象予報士の資格は不要である。最近はアイドルが番組の天気予報コーナーを担当していることもある。(実際のところは、解説は誰がしてもいいが、解説内容を考えるのは気象予報士)

さらに、2についても、お客様に提供する天気予報について、天気図のみでゼロから天気を良そうする人は誰もいないだろう(趣味で予想する人はいるだろうが)。では、天気予報は誰がするのか。それは今や誰でもなく、コンピュータだ。天気予報において人間はコンピュータに到底及ばない。コンピュータの天気予報についても気が向いたら書こうと思うが、今日の主題は、気象予報士はいったい何してんの?ということだ。

気象予報士の仕事は大きく分けて2つ。
・通訳
・クレーム対応

ここでいう通訳とは、コンピュータが予想した結果を一般人にわかりやすく、ときには理由とともに伝えることだ。コンピュータの天気予報はいたって質素である。「0時:気温10度、湿度30%、降水0mm、……..」。この調子で何十個もの要素の羅列を与えてくれる。情報が豊富すぎて親切なのか不親切なのか状態。いわゆる気の利かないやつである。
そこで気の利く気象予報士の出番である。「明日の午前中は高気圧に覆われるが、午後になると南から湿った空気が流れ込み、雲が広がるでしょう。」こんな具合に気の利いた通訳をする。また、通訳のレベル分けも必要だ。先ほどの解説が大人向けだとすると、子供向けの通訳は要するに「晴れのち曇り」である。こんな具合に、様々なレベルに合わせた万能な通訳士、それが気象予報士である。

もう一つの仕事はクレーム対応である。このことをやや周り道をして説明してみる。
唐突だが、車の自動運転はそのうち実現するのだろうか。当然、技術的には可能だと思う。しかし、問題は事故を起こしたときの責任が誰にあるのかということである。言い換えると、自動運転による事故で犠牲になった家族の怒りはどこにぶつければいいのか。確かにこれは悩ましい。
そろそろお察しかと思うが、天気予報が外れてずぶ濡れになったときの怒りの矛先はどこに向くのだろうか。そういうことである。「何で予報外れたんや、説明しろ!!」と言われるのは気象予報士なのだ。まさにクレーム対応。本音としては「そんなんコンピュータが計算した結果やねんから知らんがな」と言いたいがそうはいかない。気象予報士はこのような場合に説明できるようにコンピュータの計算手法を一通り抑えておく必要がある。クレーム対応のためのマニュアルみたいなものだ。
天気が外れたときの矛先が我々に向けられるのとは反対に、天気が当たったときには、我々は声を大にして言いたい。「みんな気象予報士に感謝せぇよ」と。
そんな心の声はしまっておいて、気象予報士はいわゆる縁の下の力持ちとして人々の生活を陰ながら支えているという誇り高き仕事なのである。

今後、気が向いたら天気のことを書いていきたいと思っている。天気以外にも私の趣味や興味について日記のように。そして、思うがままに書くことで、自分の潜在的・心の底に閉ざしていた興味を掘り返して、今後の人生の方向性を定めていきたいと思っている。

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