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ようこさん

ネットサーフィンをしていたら、あるコラムに出会った。

そのコラムには「私達は今この瞬間しか生きられない」とあった。
すなわち時間というものは幻想に過ぎず、過去や未来も存在しないというのだ。

コラムを読んでいたら、ようこさんを思い出した。

私が27歳の時、横浜オフィスより数名のスタッフが研修で私の職場に2週間来た。

中でもようこさんは、とても真剣に研修に取り組み2歳年上だった私に質問やアドバイスを求めて来た

人って頼られたり、求められると嬉しい物で、私はようこさんに仕事を教えるのが楽しかった。

研修最終日、オフィスには残業で私とようこさんだけになり、夜の21時くらいにようこさんの研修は終わった。

二人で「お疲れ様会」をすることになり街に出たがこの時間はもうレストランが開いていなかった。

お腹の空いていた私達はテイクアウトでサンドイッチとワインを買い、ようこさんの泊まったいるホテルの部屋で「お疲れ様会」をする事になった。

美人でも華やかでも無い ようこさんはとても美味しいそうにサンドイッチを食べ、美味しいそうにワインを飲んだ。


ようこさんは、仕事中も飲食中も私との会話も、一瞬一瞬を真剣に楽しく過ごしていた。
どこか自信に満ちている感じだった。

夜も23時くらいになっていた。

この街での最後の時間っていう雰囲気になった時、ようこさんは突然「私を抱いてください」と言って来た。

思わぬ展開に私は戸惑った。

職場や世間での体裁を気にしたり、カッコつけようとする自分がいた…….

ようこさんは無言で「決めきれない私」に近づき、唇を重ねて来た。

舌を絡めてくるようこさんに私は戸惑った。

真面目で 控えめで 少し地味という私が勝手に決めつけている「ようこさん像」が私の決断の邪魔をしていた。

ようこさんは自分の気持ちに赴くままにとても大胆に積極的に私を求めて来た。

程なくして二人の波動が一致して来た。

私は「自分自身を邪魔する見えない物」を剥ぎ取り、ようこさんとの一瞬に没頭した。

次の日の朝、職場のみんなで駅まで研修生達を見送った。
ようこさんは昨晩の出来事等無かったかの様な振る舞いと笑顔で横浜に帰って行った。

私の58年の人生の中で、あれ程までに解放感、自由、快感、思いやりを感た事は無い。

「私達は今この瞬間しか生きられない」というコラムを読みながらようこさんを想った。

曖昧な旅人

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