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XaaS モデルの最前線で実績を持つ、紣川 謙さん(後半)

インタビューの趣旨

Definer 代表の阪本は、アドバイザーとしてご支援いただいている、

株式会社CustomerPerspective代表の紣川 謙(かせがわ けん)さんへインタビューいたしました。

現在はデジタル戦略・マーケティングのアドバイザーとして活動されています。
 今まで戦略コンサルティング会社、海外MBA、外資系銀行でのネットバンキング立ち上げや、Amazonのマーケティングやプライム部門の責任者などを経験して独立。デジタル戦略・マーケティングの軸で一貫したキャリアと実績の裏側に隠された、素顔と信念、哲学に迫ります。

今回は、Amazonでの経営経験など、後半の内容です。前半は、こちら

Amazonでの経営経験

紣川さん

「Amazon Japanでは、バイス・プレジデントとして、コンシューマー・マーケティングの責任者、プライムの責任者を務めました。Working Backwardsという取り組みを社内で広めるCXBRというチームの日本のリーダーをしていました。Working Backwardsとは、お客さまからスタートして革新的なサービスを生み出す仕組みのことです」

阪本

「私は、Amazonヘビーユーザーです! Amazonでの経験は今の仕事にどのように活かされていますか?」 

紣川さん

「顧客体験を大切にすること。そのために顧客の視点で考えること。CustomerPerspectiveという、私の会社の名前にもなっています。顧客視点は、何でも切れるナイフのように、戦略の立案でも、マーケティングでも、新規事業開発でも役に立ちます。」

「例えば、私はサブスクリプションの戦略策定やサービス設計をご支援することがあります。『サブスクが世の中で広がっており、収益も安定するから』と提供者視点で検討をはじめ、料金も自社の都合で決めてしまうことも多い。そこでサブスクリプションの提供価値を説明する時に私が使う考え方の一つに、”顧客視点の損益分岐点”があります。」

阪本

「損益分岐点は、よく企業の会計上の概念として計算されますね。法人ではなく、お客様視点は初めて聞きました!」

紣川さん

「お客様は、サブスクリプションに加入する時、”毎月料金を支払って元が取れるのか?” を無意識に考えています。言い換えると、”損益分岐点はどこか“を計算しているのです。ただし毎月の支払いを約束することになるので、明らかな「お得感」がないと加入してくれません。お客様の頭の中の計算を企業側は定量化して、「顧客視点の損益分岐点を大きく超える価値」を提供することが大切だと私は考えています。例えばサブスクリプションがN個のサービスを含むなら、サービスA〜Nの価値の合計が十分大きくなければなりません。もちろん、個々のサービスがユニークな方法でユーザーの問題点を解決し、ニーズに応えることが大前提です。」

阪本

「なるほど。。私は、ほとんどのことを積分を見るようにしていて、非常に共感できました! 弊社では、よく”相手の立場に立って物事を考える”というのを話しています。言うは易し、行うは難しですね。。ぜひ、こういった大切にしている価値観を伺えれば幸いです。」

紣川さんが大切にしている価値観

紣川さん

「お客様視点で考えること。お客様の信頼を得ること。その為には、約束し、約束を守り、期待を上回ることでしょうか。そして、一人の人間としての目標のひとつは、まわりの人にポジティブなエネルギーを与えられる人になりたいですね。」

阪本

「なるほど。お客さま視点を大切にするようになった理由は、今までの経験や実感などでしょうか?」

紣川さん

「元々戦略ファームにいた時は、お客様視点について3Cといったフレームワークで理解し、心がけてはいました。しかしながら、お客様視点の重要性を今ほど明確に意識できていませんでした。」

「私が入社した当時、Citibankは私が尊敬するCEO, John Reedが率いており、Customer Focusという言葉でお客様を重視する文化がありました。マーケティングやプロダクト開発の経験を通して顧客体験の重みを実感することになりました。」

「そして何と言っても、『地球上で最もお客様を大切にする企業になる』という企業理念を持つアマゾンでの経験が、大きく影響しました。創業者のJeff Bezosは、私が心から尊敬する経営者の一人です。Customer Obsessionという言葉を使い、『お客さまを大切にする』と言う考え方が、Working Backwardsをはじめとする様々な仕組みを通して、とにかく徹底していました。その価値観を共有する仲間と今までにないものを考え、実行し、目に見える大きな結果を出せたことは、私にとって素晴らしい経験でした。」

「現在は、事業を取り巻く環境変化も厳しく、顧客が求めているものもすぐに変わります。ニーズを表面的に理解するのでは不十分で、実際にお客様の声を聞き、深掘りをすることがより重要になっていると感じています。」

阪本

「うーん、なるほど。プロダクトアウトだと、ジョブズがいた頃のAppleとか、最近だとGo Proとかでしょうか。両者とも、個人のエゴ+顧客視点+その他諸々で素晴らしいプロダクトとなっていますが、一方で、Amazonとは起点が異なり、エゴが最初にきているような気もします 笑」

紣川さん

「ジョブズも私が尊敬する経営者のひとりですが、彼自身が、最も満足させるのが難しい顧客だったのではないかと想像しています。だからこそ、誰が使っても素晴らしいと感じるプロダクトになったのではないかと。」

阪本

「これは、確かに新たな着眼点ですね。第3者の顧客視点を第一義と捉えるか、あるいは1番の顧客である、自分のエゴを第一義と捉えるか。その起点の違いは、AmazonとAppleの違いの根本かもしれませんね。」

紣川さん

「AmazonとAppleを比較すると違いに注意が向きがちですが、ベゾスとジョブズは驚くほど似た考えも持っています。例えば、先ほどお話ししたWorking Backwardsとは、”Start with the customer and work backwards” という表現を短縮したもので、ベゾスが徹底的にこだわった考え方です。一方、ジョブズは1997年のAppleのWWDCというイベントで聴衆の質問に答え、”You’ve got to start with the customer experience and work backwards to the technology.“と言ってます。補足して言い換えると、「テクノロジーからスタートしてそれをどうやって売ろうかと考えるべきではない、顧客体験からスタートすべきだ」という考え方です。YouTubeで当時のビデオを見ることもできます。二人の言っていることは表現を含めてほぼ一緒ですね。」

「ただし、二人が直接デジタルミュージックの将来について話したミーティングは緊張感のあるものだったようです。そのストーリーは私が監訳した『アマゾンの最強の働き方 – Working Backwards』に書かれていますので、興味があれば読んでみてください。」

阪本

「その話は初めて聞きました。新たな発見でワクワクしています。少し話は変わりますが、お仕事をする中でどういった人と一緒に仕事をしたい、などはございますか?」

紣川さん

「一緒にお仕事をしたい人は、自分の仕事に対して情熱を持っている人、また、人がつくった正解を安易に求めず、自分の頭で考えられる人ですね。また様々な事業リーダーとお仕事をする機会がありますが、今までお目にかかった方々の中で本当に素晴らしいと思う人は、能力や知識、地位があっても人に対するリスペクトを大切にする人です。」

阪本

「おお、、まさに私も大切にしている価値観です。とても、共感できるのですが、一方で中々そう言った方はいらっしゃらないな。。という印象です。そう言った価値観を大切にされている理由はあるのですか?」

紣川さん

「理由は、私が今までお仕事をしてきた多くの人に助けられ、育てられてここまで歩んできたからです。何ら見返りを期待するのではなく、厚意から良くしてくれた素晴らしい人たちを私は知っています。そういう人たちは今でも私の目標です。」

紣川さんが大切にしている哲学

阪本

「なるほど、とても素敵なお言葉です。私も、同様に尊敬している先輩たちの背中を見て、自分の価値観が固まってきたと感じています。最後に、仕事で大切にしている哲学を伺えれば嬉しいです。」

紣川さん

「哲学というほどのものではありませんが、心がけていることはいくつかあります。自分が愛することを仕事とすること。自分の運命をコントロールすること、一緒に仕事をする人の期待を上回ること、でしょうか。自分が愛することとは、私の場合は例えば今日お話しした顧客の理解に基づくマーケティングや、人に求められる新しいサービスや事業を創ることです。また私のような思いを持った自分より若い世代の成長に貢献することも大切にしています。例えばLaunchXという組織の世界の高校生を対象にした起業家養成のためのサマープログラムがあり、3年連続でメンターとして参加しています。」

阪本

「なるほど、これは。。そうですね。愛することを仕事とすることと、自分の運命をコントロールすることは両立することが難しいのではないか?と感じておりますが、どちらを重視していらっしゃいますか?」

紣川さん

「一番は、愛することを仕事とすることですね。自分の運命をコントロールできれば、好きな仕事を選べます。その為には、一緒に仕事をする人の期待を上回ることが何より大切だと感じています。その結果信頼が得られ、信頼が次の仕事につながるからです。日頃心がけていることとしては、私ならではの4Pを大切にしています。マーケティングの枠組みに4Pというものがありますが、それとは別のものです。私の4Pは、Proactive, Productive, Progressive, Positiveです。主体的・生産的に働き、革新につながる仕事に、ポジティブな心持ちで取り組んでいこうと努力しています。」

阪本

「なるほど、とても納得いたしました! 本日はお時間をいただき、誠にありがとうございました。いつも、迫真に迫る知見や戦略をフラットに議論できて、とても助かっております!引き続き、よろしくお願いいたします。」

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