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<DeepX HISTORY 前編>世界で勝てる「ものづくり×AI」を目指して。挑戦はこうして始まった丨代表取締役:那須野薫

2021年4月に創業5周年を迎えたDeepX。現在では国内外問わずさまざまな賞を受賞し、メディアに取り上げられる機会も多いDeepXですが、創業時は何もかもが初めてで手探り状態。これまでにはさまざまな苦労がありました。

今回と次回、2回に渡ってお届けするのは、そんなDeepXがに辿ってきた軌跡。「あらゆる機械の自動化」を掲げ、代表取締役としてDeepXを率いる那須野薫のインタビューです。

前編では、起業に至る経緯、起業初期の苦労や印象深い出来事などについて、話を聞きました!

最新技術を学ぶ中、ディープラーニングの世界に出会う

――DeepXは松尾研究室発のベンチャー企業ですよね。研究室に入ったきっかけを教えて下さい。

松尾研究室に入ったのは、学部4年生の時でした。当時は、TwitterやFacebookといったウェブサービスに注目が集まり、“ウェブ開発ができると面白いことができる”という雰囲気があった時期。なので、自分も友人と一緒にウェブ開発に取り組んでいたんです。

ちょうどそのタイミングで出会ったのが、ウェブ工学の研究をしている松尾研究室でした。

――松尾研究室は、最初からディープラーニングの研究をしていたわけではないんですね。

はい。松尾研究室は、世の中の技術進展に合わせて、研究領域が拡張していく研究室だったんです。

私が入室した頃は、松尾研究室はウェブ工学を主な研究テーマにしていました。1990年代頃からインターネット技術が普及しウェブが登場しさまざまなことができるようになりましたが、そういったことを研究している研究室でした。

効率的・効果的なウェブサービス開発手法の研究、ウェブに蓄積されるログデータの解析、ソーシャルメディアの普及に伴い現れたソーシャルメディアを通じた社会動向の解析、データがより大規模化したことによって生じたビッグデータ解析等、技術進展や社会状況の変化に合わせて、研究領域が拡張していったのです。

さらにその後、計算機性能の向上とデータの大規模化の掛け合わせにより、ディープラーニングモデルが圧倒的に高い性能を出し始め注目が集まるように。松尾研究室も、国内ではいの一番にこの技術に注目し、松尾先生はこの技術の重要性を社会に広く伝えるという活動もされていました。

この流れに沿って、私の研究内容も、ディープラーニング領域にシフトしていきました。常に最新の技術に触れながら、時代に即した研究を進めていたという感じですね。

――松尾研究室では、さまざまな企業との共同研究を牽引していたと聞きました。

当時の松尾研究室では大量のデータから、新しい事実や見えなかった要素同士の関係性を発見する研究をしていて。この技術は売り上げに大きく影響したり、できなかったことをできるようにしたりするものとして、企業から注目が集まり、さまざまな共同研究が立ち上がっていました。

私自身も、自分が研究している技術を世の中に還元できるところが面白くて、企業との共同研究には積極的に取り組んでいましたね。日本を代表する自動車メーカーや教育系サービス会社、メディア、アドテク企業などと連携して、ウェブサービス内のログ解析から、ソーシャルメディアを対象としたビックデータの解析など幅広く取り組みました。

世界に勝ちうる「面白いこと」との出会い

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――さまざまな企業との共同研究の中で、起業を志すようになったんでしょうか?

それもあるのですが、もともとは「せっかく何かやるなら、面白いことをやりたい」という気持ちがあって。ウェブ開発も、FacebookやTwitterが流行る中、「ウェブ開発ができるとザッカーバーグになれるらしい」と噂に聞いて(笑)「面白そう、やってみよう」という気持ちから始めました。

研究室には、PKSHA Technologyを創業した上野山さんやGunosyを創業した関さんなど起業してうまくいった先輩も近くにいましたし、松尾先生とも度々ディスカッションして「会社を創ったらいいのでは?」と話していました。

だから、起業という選択は常に頭にあったんです。でも、なかなか踏ん切りがつかなくて……起業のことを考えてから実際に起業するまでには結構時間がかかりました。

――踏ん切りがつかなかったのには、理由があるんですか?

なかなか、一言では難しいのですが(笑)、理由の一つは、自分で事業を立ち上げてやっていくほどの熱量を持てるテーマに出会えていなかったということかなと思っています。

共同研究を通して携わっていたアドテク、データ解析×金融、SNS分析等のデータサイエンス系の取り組みは非常に楽しいと感じていました。誰がいつどのような商品を購入するのかを予測できると売り上げが上がる。SNS上のユーザ行動の分析で、これまで見えなかったことが見えてくる。それ自体は非常に面白かったんですよね。

ただ、起業してしばらくして振り返って気がついたのですが、約20年勉強し、次の5年10年20年を懸ける情熱を抱けるテーマだとは感じていなかったんだと思います。

もう一つの理由が、これは一つ目の理由の裏返しでもありますが、AIを活用した事業で、日本発の企業として「世界に勝てる」、そういう大きな絵を描ける可能性のあるものをなかなか見つけられなかったことでした。

というのも、AI技術はIT技術の土台の上にあるため、米国や中国のIT大手がAI技術においても強力にリードし、逆にIT技術の土台が弱い日本は遅れていると言われており、AI技術に閉じて真っ向から挑むのは勝ち筋が薄いという印象が強くあったのです。

AIの世界はしばしばwinner takes allと言われています。だから、起業のタイミングでは、世界に勝ちうる、大きな絵を描ける可能性がある、そういう事業にしたかったんです。

――なるほど。そんな中、DeepXの原点となる事業はどのように思いついたんですか。

起業する数ヶ月前に、松尾先生と議論していた時に、「ものづくり産業をAIでレバレッジするということが数少ない勝ち筋なのでは」という話になりまして。

考えてみれば、日本はものづくりの国です。建設、農業、食品加工、自動車など、ほぼ全ての産業で日本国内にグローバルに戦うハードウェアメーカーがある。そういう国って、実は少ないんです。だからこそ、その強みを生かして、AIとものづくり産業を組み合わせれば、世界に勝ちうる、と。そのとき、「これは人生にまたとない大きな話だな」と直感したんです。

資料

「AIの技術革新の進展による社会への影響について」東京大学松尾豊 /厚生労働省資料 より引用。DeepXの事業の方向決めにおける論点の一つが記載された参考資料。

DeepX誕生。手探りでスタートした2016年

――そして2016年、ついに起業へ。その際にメインになっていたのがまさに「AI×ものづくり」の建機の自動化プロジェクトですが、当時、プロジェクトはどんな状況だったのでしょう?

まだ始まったばかりで全くの手探り状態でしたね。私自身、元々ソフトウェアの領域の研究をしていましたから、ハードとソフトの掛け合わせとなるとどこから手をつけるべきか、右も左もわからない状態からのスタートで。本当に一歩ずつ道を探してきた感じです。

――起業初期では何が大変でしたか?

いろいろ初めてで大変なことも多く、何がと言われると全部が大変だったと思います(笑)。

特に、最初の方に苦労したことは、ハードウェアメーカーの方となかなかコミュニケーションがうまくできないということでした。AIの領域では、アジャイル型開発が重要で、若い人が活躍していますが、ハードウェアメーカーの領域では、ウォーターフォール型開発が重視されており、しばしば年功序列となっています。

そうした観点をはじめとして、ソフトウェア屋さんとハードウェア屋さんでコミュニケーション文化も異なり、最初は意思疎通が非常に難しかったです。

――どのように乗り越えていったのでしょうか?

同じ目標に向かっており、いつかうまく意思疎通ができるようになるはずだと信じて、できるだけ相手の立場に立って考えるように努めたり、あるいは、こちら側の考え方を丁寧に伝えるように努めたり、そういうことを継続していました。

最初は、完全に手探りでした。徐々に、文化や価値基準の違い、見えている範囲・専門領域の違い、責任範囲の違い等、さまざまな違いから、意思疎通の難しさがあるのだなと、考えるようになりました。背景が見えてきたら、あとはひたすら実践あるのみという感じで。手痛い思いもしましたが、学びになりました(笑)。

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こうして動き出したDeepX。次回は、起業初期以降から現在に至るまで、そしてこれからに向けた話を詳しく聞いていきます。社内カルチャーについての情報も満載です!ぜひ後編もご覧ください!

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