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クリエイターにとっての"クレジット"の話
私は小林賢太郎さんのファンです。
その昔、「ブレイクもの!」という深夜番組でラーメンズの日本語学校を見て「すげー面白いな」と思った後、爆笑オンエアバトルで見てから単独公演にも足を運ぶくらいになりました。
芸人さんの単独ライブに初めて行ったのがラーメンズです。芸人さんのCDを初めて買ったのもラーメンズです。
高校演劇部だった時、小林さんの単独公演のネタを使いたいと事務所に手紙を送ったこともありました。
「矢部くんの作品は矢部くんが作るべきだよ」という返信ハガキをもらいました。
後の単独公演で終演後挨拶出来る機会があり、「あの、手紙を書いたことがあって…ネタを使いたいと言った…」と言った瞬間「お前か!」と返してくれました。
そんなことから20年以上、ラーメンズ・KKP・カジャラ・ポツネン・うるうを、可能な限り足を運び笑って感動して「ああ、やっぱり小林さんの作る作品が好きだなあ」と思っている私。
人生で目標とする作品が3つあるのですが、そのうち2つは小林さんの作品である「TAKE OFF~ライト三兄弟~」と「ATOM」です。
そんな小林さんが最初、パラリンピックの閉会式演出に決まったと聞いたときは本当に嬉しかった。
野村萬斎さんがオリンピックで「これぞ日本だ」という演出を手掛け、パラリンピック開会式のケラさんがナイロン節全開のパフォーマンスをして、小林さんが締める。
舞台人としてこんなに待ち遠しかったオリンピックはなかったです。その時の私はアスリートファーストではなくクリエイターファーストの気持ちで楽しみにしてました。ごめんなさい。
が、コロナで延期・野村さんのチームは解散、ケラさんと小林さんは自然消滅かのように消えてしまい、さらには色々とオリンピックに逆風が吹く中、小林さんがオリンピックの演出リーダーのニュース。
そして解任。
正直どんな気持ちでオリンピックを見ればいいのかわからなかった私が、開会式を見た思いを綴ります。
※前提として
小林さんが今回解任された話、私自身は納得がいってます。
20年以上前のネタであり、今は他人を傷つけない笑いを全力で築き上げてきた小林さんだということを知っていても、ホロコーストの話は世界的タブーなので、そのまま強行したらマジで国際問題になりかねません。
「昔の話じゃないか」「今を見ろよ」「過去の一度の過ちを許さない世の中なんて」という気持ちもわかりますが、あらゆる差別を許さないオリンピックに相応しいかというと、「そうか…そうだよね。」となります。
パラリンピックの閉会式の時にこのお話が出ていればそこまで話題にはならなかったのかもしれませんが、直前での大ニュースということで小林さんの名前がこのような不名誉な感じで世に知れ渡ることが本当に残念です。が、初めて知った人には是非彼が作った作品を見てくださいと言いたいです。お暇なときに是非。そして作品が好きになったらそれはとても嬉しいです。
で、演出のリーダーが解任されましたが、そうなると気になることが2つ。
「え?じゃあ演出って誰になるの?」
と
「小林さんが演出した部分はどうなるの?」
です。
で、組織委員会の回答。
演出内容はさまざまな分野のクリエーターが検討を重ねて制作したもので、小林氏が具体的に1人で演出を手掛けている個別の部分はなかったことを確認した
なるほど。勿論「今から変更・代役は間に合わない」というのはあるのだと思いますが、目一杯前向きに考えるのであればこうです。
今からだと代役を立てられないからリーダーは不在。そもそも様々な人が各パートを演出してて、小林さんは総合責任。なので総合責任を委員会にして各パートを楽しんでもらえれば、ということですね。
てことはあれか。小林さんがそもそも演出手掛けてる部分はなかったんだ。なーんだ。
随所にKKPやポツネンテイストが見られるんじゃないかな、なんなら久ヶ沢さんをはじめとした小林ファミリーの皆さんが出てくれるんじゃないかな、なんて思ってたけど、流石に世界のイベントではそこまで小林テイスト全開にするような流れにはしてないのか。
確かに小林さんの作品って万人受けするタイプじゃなく好き嫌いハッキリ別れるし、小林テイスト全開じゃ賛否両論起こりそうだし安パイは取るよね。
小林さん海外公演とかも成功してるし、海外からの評価も高いからそこらへんも加味されての抜擢かと思ったのだけど…やはり日本らしさをふんだんに取り入れたものになるんじゃないか。
なんて予想をしてました。
そもそもオリンピックは大好きだしアスリートへは全力で応援するべきだし、折角やるならなるべく楽しまなくては派の私。
モヤモヤしたものはありつつも、開会式を見るのでありました。
(ここからは語気が強まります。そういうのが嫌な人はすぐにブラウザの「戻る」をクリック!)
で、見た感想です。
小林賢太郎作品じゃねえか!
どっからどう見ても小林賢太郎演出じゃねえか!
え、ちょっと待って、もう一回組織委員会の言い訳…もとい回答を。
演出内容はさまざまな分野のクリエーターが検討を重ねて制作したもので、小林氏が具体的に1人で演出を手掛けている個別の部分はなかったことを確認した
どこがだよ。
具体的に演出を手掛けているところだらけじゃねえかよ。
漫画の吹き出し・箱の演出・ピクトグラムの中のハンドマイム・ボレロ・織部さん(久ヶ沢さんの大工)・小林ファミリー総出演・完売劇場でのライバル劇団ひとりさんの参戦・その他数えきれないetcetc…
なにより、彼が目指してた「誰も傷つけない笑い」がそこにあった。
もう一度、何度でも、声を大にして言う。
あの開会式は小林賢太郎さんの演出だ。
仮に演出家の名前が最後まで一切公表されないまま行われてたら、その後Twitterは
「開会式が小林賢太郎感満載」
で溢れかえるぞ。
「演出クイズ!これは誰の演出でしょうか!」っていう問題の10点問題だわ。第一問目だわ。秒で正解出るわ。
でね、本当に感動したんですよ。小林さんの作品が久々に見れて。本当に嬉しかったんですよ。
ただ、時間が経つと感動の他に負の感情とかそんなのでは収まらない形容しがたい感情が渦巻いた。
言葉では形容しがたいが、ジャンルで言えばこれは間違いなく怒りだ。
あまりに腹が立って寝て起きたら怒りが倍増してたわ。
多分この感情は
小林賢太郎さんのファンで且つ演出家・演出経験のあるクリエイターしか起こらない感情だと思っています。
何故こんな感情になるかというと、
あれだけ本人テイスト万歳なのに
クレジットに名前が載らないことが許せない
のです。
いや、わかるよ?名前載せたらまずいのはわかる。
ホロコースト問題で解任したのにテイストが大きすぎてクレジット載せないのはまずいだろうけどそうすると本当に国際問題になる。でももう演出部分は削れない。名前を削るか演出を削るかってなったら後者は物理的に無理だから名前を削るしかない。
いち小劇場の舞台公演ではない、世界外交を含む大会なのだからどうにか落としどころを見つけないといけない。その結果が名前を削ったことでクリエイターの参加をなかったことにする。これでうまく収まるはずだ、ということでしょ?
理解はできるけど納得がいかねえんだよ。
それくらいクリエイターにとって、クレジットは絶対に外せないものなんだよ。
(なんならギャラよりもクレジットにこだわる人って多いんですよ。)
日本は兎角クリエイトに対して敬意がないのは随分と前から言われています。ただそれは、一つのものを作るのにどれだけの年月をかけたか、その技術の結晶であるということが見えにくいから、ひいては相手方がクリエイトの大変さを知らない、その大変さを伝えていないこちら側にも一責任はあるんじゃないかな、ということも思ってました。
だけどね、
やっていい事といけない事がある。
クリエイトは財産です。それの証明のためにクレジットは必須なのです。
だってあの開会式、人によっては詰まらない、しょぼいという感想もあるでしょう。私は感動したけど詰まらなかったひともいるはずです。その他いろんな感情が、あの開会式を見た人にはよぎったはずです。
いい感情も悪い感情も動かした、その動かした人は一体誰なのか。
その証明のためにクレジットは絶対必要なのです。
そしてそこでの評価が次につながり、引いてはその人の今後のクリエイト活動を大きく動かすのです。
なので端的に言うと、事を上手くまとめるために放った組織委員会の弁明が
クリエイターにとっては最悪だったということです。
なにより、大好きな人の作品であるにもかかわらず、それが証明されていない、形として残らないのが悔しいのです。
これ海外からの評判がよかったら、組織委員会が「私たちの作品です」というのでしょうか。
そしたら声を大にして「パクリじゃん」と言います。
そう言われて
「パクリじゃない。影響を受けたんだ」
って言ったら「都合よく言うなよ」と言ってその場を収めます。ハイ音遊。
ともあれ、開会式を手掛けた皆様には多大なる感謝を。
そしてこれから始まる各競技に、アスリートの方々は最後まで全力を尽くせるよう応援を。
メダル取ればうれしいだろうし、やはり4年に一度のお祭りですから、楽しもうと思っています。
久々に、小林さんの作品が見れてよかったです。納得は行ってないけど。
この感情、私だけかな。変かな?
変イェーイ!
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