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【書評】『敗北からの芸人論』【ノブコブ徳井さん】 #自分なくし

献本いただいた書籍以外は手元にメモを残す程度で、書評なるものは書かない自分ではありましたが、著者である平成ノブシコブシ徳井さんから引用RTにて「感想もお待ちしております!」と言われたら、やるしかないでしょう。個人的には、徳井さんのYouTubeチャンネルをかなり昔から聞いていたので、テンションが上がりました。また、誰が書いている?というのも重要なので、お笑い遍歴なるものを下記にまとめてからのスタートとしたいと思います。

中学生 : お笑いレッドカーペット、レッドシアター全盛期。ジョイマン完コピ
高校 : 寮生だったのでTVと無縁の生活
大学 : 講義の少なくなった大4にドキュメンタルと野性爆弾くっきーにハマる
大学院 : 放送室を聴き漁る。東野コージ『この間』で東野さんが気になる
社会人 : ダイアンのよなよなリスナー(旧)。TVerでほとんど全てのバラエティを観るマンに

さえないのお笑い遍歴

1. 『敗北からの芸人論』の読み方

本の概要については、Amazonさんのテキストを引用させていただきます。

「負けを味わった奴だけが売れる、負け続けたからこそ書ける――」
悟りの境地で繰り出す熱く、的確なお笑い考察が、ネット連載時から大反響! 累計700万PVを突破!
自らの才能のなさに絶望しそれでも笑いに救われた芸人、ノブコブ徳井による、誰もが共感できるお笑いエッセイ。

「平成ノブシコブシ」としてテレビ番組『ピカルの定理』などを中心に活躍し、2018年には『ゴッドタン』の腐り芸人で再ブレイク。最近では芸人やバラエティ番組を的確に「考察」することでも話題の徳井健太さんによる、お笑いエッセイ。

■内容紹介
次々と後輩に追い抜かれて酒と競馬に明け暮れた加藤浩次が掴んだ思考法、長い下積みを経て今売れまくるオードリーの瞬発力、爆発的ブレイクを果たすかまいたちが覚醒した理由――。どん底から這い上がった21組の生き様を、ノブコブ徳井が熱を込めて語る!

Amazon 商品ページの概要より
 平成ノブシコブシ 徳井健太『敗北からの芸人論』

内容紹介にもあるように、コンビや1人の芸人さんに焦点を当ててセクションに切られているので、スキマ時間にも読みやすい一冊に仕上がっています。また、今をときめく千鳥、かまいたちやオードリーのみならず、完全に売れきってはいないスリムクラブ、ダイアンや5GAPなど、地下までは降りないお笑いフリーク達も消化不良にならないリストアップが絶妙です。

一般的な読み方としては、芸人さんの深みを味わった上で内容はうすら覚えに留めて、お笑いを楽しむことがとても重要かと考えました。さいきんは、芸人さんの裏側を掘りすぎる番組が増えすぎている気がしなくもないですが、社会からの要請としての「ナラティブ、ストーリー」なのは認識しているので、分人として笑いを取りに行く芸人さんは難しいだろうなと考えています。ジャルジャルや和牛、NON STYLEなどのネタに重きをおくコンビが、トークバラエティを避けるのは、ハッキリとしたゾーニングで良いなと。

加えて、芸人さんの深みや味わいを文章に落とすことができるノブコブ徳井さんの、"人としての厚み"も、副次的な産物としてこの本にはあります。前書きで綴られていた「ダウンタウンにはなれない絶望」はどの芸人さんも言われることですが、それを超えて「横並びにいる同期にも勝てない」という前提を受け入れられたこその強さと、その視点の優しさをこの本から十分に感じてほしいです。

2. 拭えない東野幸治の影

※ 注意 : 目次として「拭えない東野幸治の影」と少しネガティブな意味合いで立ててみたはいいものの、鋭い指摘はできませんでした。笑

まえがきで綴られる衝撃の事実。それは、自分の大好きな芸人さんである東野幸治さんから指名を受けて(多分)スタートしたコラムの寄せ集めであるということ。『この間』と『この素晴らしき世界』を熟読し、インスタのアカウントIDの命名規則をパクリ、今はなき幻ラジオもほとんど全て聴いていた自分は、東野さんの「芸人さんへの興味」の際限のなさを以前から認識しており、そんな人から指名を受けた(多分)徳井さんは嬉しかっただろうなと。『この素晴らしき世界』と同様のいわゆる他己紹介形式ではあるのですが、若干印象が異なる要素がありました。東野さんは「純粋に芸人を面白がって」"紹介"していることに対し、徳井さんは「優しさや愛を持って」"紹介"しているのが、差分としてあるように感じました。何方がいいという話ではなく、異なるベクトルでありながら類似したアウトプットが出てくるのが面白いなと。「東野さんに表に出してもらった」というコンビも少なくありませんが、いずれはそんな立場をノブコブ徳井さんが担ったり担わなかったりするのかもしれませんね。結果として。

3.「自分無くし」の境地にあるものとは

「1.『敗北からの芸人論』の読み方」の最後のところを、深掘りしていくのがこのセクションになります。自分も過去にTwitterやnoteなどで、師匠みうらじゅんに感化された思想である「自分なくし」を肯定しながら発信させていただいていますが、"個人としてその方が生きやすい"という結果しか言及できていないのが苦しいところでした。ただ、この本を書き上げられたノブコブ徳井さんの姿を見るに、「他人のいいところ・面白いところ・強み」を要らぬ感情抜きに見つけられる能力も身に付けられるのかも?と思うことができました。

自分が身を捧げてきたスポーツの世界でも、ポジション争いに負けたある意味での「"敗北からの"選手論」は求められているのかも。特にプロのカテゴリでは、今まで勝ち続けてきた選手が、大人になって初めて敗北するという難しい状況が起こりうると思うので、リバウンドメンタリティとは別の強さがあっても良いのかもしれません。ピッチに立てる人数は限られているので、そんな柔なことは言ってられないけれど。

加えて、自分がいま身を置いているビジネスの世界でも同じようなことが言えなくもありませんが、特筆しすぎるとウザったくなりそうなので、このnoteには書かず中野の居酒屋のブラックホールに落としたいと思います。いつかノブコブ徳井さんにバッタリ会って、一杯だけでも飲めたらいいな。

#書評 #敗北からの芸人論


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