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東京は、すぐそこ

社会人になったタイミングで東京に上京し2年少し経った。
東京オリンピックがまもなく始まる頃に、私は住み慣れた東京を離れ、地元の京都に帰ることにした。

東京で住んでいた街は、都営大江戸線と都営新宿線がある「森下駅」のすぐ近く。
お相撲さんで有名な両国と、カフェ激戦区で有名な清澄白河に挟まれた下町だ。

会社から電車1本で、30分以内で行けるところ。東京で住む場所の条件はそれくらいだったけど、その中で森下に住もうと決めたのは、きっと街の雰囲気が地元に似ていたからだと思う。

森下からは新宿も渋谷も電車1本で、20分ほどで行けた。どれだけ都心に出ても、大江戸線に乗って、森下に帰ってくるとやっぱりこの街が1番好きだといつも思った。

家から歩いていける範囲に会社の同期が何人か住んでいた。しかも、みんな関西方面から就職と同時に上京してきた人たちで、話が合い、すごく楽しかった。
一人暮らしが全然しんどくなかったのも、いつでも会いにいける距離に、信頼している同期がいたからだと思う。

いつも行く居酒屋があって、そこで仕事の話をしたり、夏は公園で花火をしたりした。平日に有休を取って車を借り海へ行ったこともあった。

社会人になったら学生の頃よりか遊べないから今のうちに遊んでおきなと言う人がいた。そんなのは嘘だった。
学生の頃よりかはお金は少しだけあって、家庭も持っていないので自由に過ごせる時間もある。

そんな23、24歳くらいの期間を、「人生のマジックアワー」と、私の大好きな作家カツセマサヒコさんは言っていた。

本当にそうだと思った。学生の頃よりもはるかに遊び、おかげで貯金は全然貯まらなかったけど、楽しい思い出でいっぱいになった。

仕事も辛い時期はあったけど、いつも誰かが手を差し伸べてくれたり、気にかけたりしてくれた。
私は辛い時にちゃんと人に頼れたり、もうやりたくないと言える人間なんだと知った。
もっと我慢強くて頑張ってしまう性格なのかと思っていたけど、そこまで強くなれなかったし、なれなくてよかったと思った。
弱いままでも、チームで働くからチームで強くなっていければいいんだと気づくことができた。

東京にはまだまだ行ったことのない街がたくさんある。引っ越しが決まった時、悔いのないように残りの時間で行ってみたい場所に全部行こうとした。
だけどすぐにやめた。
また次東京に来た時の楽しみとして取っておこうと思ったからだ。

京都と東京。物理的な距離は変わらないけれど、前よりもずっと近くに感じる。

私にとって、東京はもう憧れの場所ではない。
働いて、遊んで、生きていた大切な場所になった。

どこかで見つけた言葉を思い出した。
「あなたが捨てた街だけが、あなたの故郷」

東京もまた、私の故郷になった。

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