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シューゲイザー入門Note

シューゲイザーって名前変じゃね?

 初めてシューゲイザーと聴いて人は、このジャンルの名前に違和感を覚えたのではないだろうか。例えばポストパンクだったら、70年代のパンクムーブメントの後の新しい名の通り"ポスト"パンクであるし、ニューウェイブだったら新しい波(シンセを導入したバンドサウンド、であったり意味がわかりやすいものだが、シューゲイザーってなんですか!となるのではないだろうか。

シューゲイザーとは音楽記者がつけた名前。

シュー(靴)をゲイズ(見つめる)という意味でついたシューゲイザー。

というのも、ライブで歌詞を覚えられなかったムースのラッセル・イェーツが歌詞を床に貼り付けそれを見ながら演奏していた姿をシュー(靴)をゲイズ(見つめる)している!と表現した。(諸説あります)

 しかし音楽性的にたくさんのエフェクターを並べ、それを踏み替えるためにシュー(靴)をゲイズ(見つめる)していると言えるのではないだろうか。(現にそういうイメージでシューゲイズという単語を認識している人も多いのでは)

 80年代中期、後期にはサイケデリックロックの要素を引き継いだバンドが台頭した、その流れを引き継ぎつつ、90年代にシューゲイザーバンドというものが発生した。

シューゲイザーといえば、この御三家


My Bloody Valentine

 シューゲイザー=My Bloody Valentineといっても過言ではないこのバンド。シューゲイザーを説明する上でこのバンドのサウンドが全てシューゲイザーと言える。シューゲイザーたらしめている要素としては大きくまとめると二つ。

 一つは常に鳴り続けているノイジーなギター。これはかなり個人的な意見だが、でかい音で鳴り続けているのはそうなのだが、攻撃的な前に出てくるノイズギターと言うよりは常に奥まったところで壁(隙間のないサウンドとして)ができている状態を作っている。

 もう一つは声を張っていない気怠げなボーカルだ。これはギターのサウンドと同様、前に突っ張ってくるサウンドというよりはかなりバンドサウンド全体として馴染んでいる印象だ。

 My Bloody Valentineの特徴(後発バンドにもかなり大きく影響した部分)として浮遊感のあるコードワーク、そして浮き沈みが激しくないボーカルのメロディラインが挙げられる。

My Bloody Valentine - Loveless

シューゲイザーを知りたければこのLoveless。実際、私が高校生の頃初めてこのアルバムを聴いてもピンとこず、それから何度も何度も聴いたり、時間が経ちシューゲイザーの全体像がわかってきた頃このアルバムの凄み、心地よさが倍増していった記憶がある。

御三家、二バンド目 Ride

 Ride

 このバンド、My Bloody Valentine(以下マイブラ)同様、轟音で鳴りつづけるツインギター、気怠げなボーカルが印象的だ。ただマイブラと違う点として挙げれる部分はドラムとベースの跳ねるような感じではないだろうか。
 マイブラはおそらく意図的にリズム隊がかなりデッドな印象で演奏、アレンジされているのに対してこのライドはかなりリズム隊のグルーヴを感じさせる作りになっている。
 そしてもう一つ、かなり爽やかなソングライティング、マイブラは全開の湿った浮遊感があったのに対し、ライドには爽やかな白昼夢感があると言えるのではないだろうか。
 ライドのギター、アンディ・ベルがライド解散後に、オアシスのベーシストとして参加したというのも理解できるかなりUKロック味の強いシューゲイザーバンドだ。
 入門の具合としてはかなりおすすめのできるバンドである。そんなRideの中でも最もおすすめのアルバムがこちら。

Ride - Nowher

ギターへのリバーブのかかり具合はもちろんだが、ドラムへのリバーブのかかり方もかなり心地よい。8曲目のVapour Trailに関してコードがかなり特殊な抑え方で演奏されている、この煌めき感。そしてアウトロがとても長い、ずっと聴いていたくなる....。

御三家、三バンド目 Slowdive

Slowdive

  一言でこのバンドを表すと幻想世界だ。御三家の中でもリバーブのかかり具合が異様に深く、このリバーブ感は後発のバンドたちの中でも意識されているのではないだろうか。Slowdiveの音像は決してノイジーな、歪んだ音像ではなく、リバーブやディレイがとにかくふんだんに使われている音像の深さ、奥行きであるといえる。
 2ndアルバムではこのアンビエントにも近しいサウンドということもあってか、ブライアン・イーノが2曲参加している。
 オーロラのような、教会の美しいオルガンのような音が印象的である。
1stか2ndアルバムかどちらをお勧めしようか迷った。2ndの方がよりポップさが際立つが、シューゲイザー入門ということもあり、リバーブ感、空間の広さを堪能して欲しいので1stを紹介。

Morningriseは比較的、マイブラやライドに近いギターの歪み感があるが、それにしても尾を引くリバーブはさながら流星群のようだ。この尾を引くリバーブはある種、シューゲイザーの象徴とも言えるだろう。


今回紹介した御三家を気に入った方にそれぞれに似たバンドを紹介


My Bloody Valentine系

Monoland 

ノイジーなギターが濁流のように流れるバンド。かなりマイブラ的な音像であるが、リズム隊がマイブラよりグルーヴィなイメージ。マイブラだとちょっとリズムが短調で飽きちゃうよという方にお勧め。

Fleeting Joys

このバンドもかなりマイブラ度が高く、Monolandよりビートの感じもマイブラに近いと言えるだろう。マイブラはラブレス一択だけど、もっと他のマイブラを感じたいという人にはお勧めだ。センターでなっているシンセサイザーの音選びもマイブラライクな浮遊感のある音でかなり良い。

The Jesus and Mary Chain

 シューゲイザーの産みの親と言えるであろうマイブラより以前に存在した、ノイズポップ、と呼ばれていたバンドである。実際にマイブラを前座に据えたライブなどを行なっていたり、後発バンドへの影響が大きい。シューゲイザーバンドの源流と言えるだろう。

Rideが好きな人に「Ringo Deathstarr」

Rideが好きな人に、と書いたが記事的に御三家の直系っぽい感じで表したく書いたが、マイブラとライドの要素がかなり混ざりあっているバンドであると言えるだろう。ボーカルセクションに関してはマイブラのウィスパーボイス的な発声であるしギターの掴めないような奥行き感とノイズ感の両立はマイブラ的と言えるだろう。そしてベースラインのうねるような動きはライドが好きな人にはグッとくるのではないだろうか。

Slowdive系

Cigarettes After Sex

 バンド名がなんとなく、現代の邦ロックのありそうな名前だが音楽性はかなり尖っている。Slowdiveと共通する点として柔らかい深いリバーブである。音かずはかなり絞られているため、これをシューゲイザーと呼ぶかは微妙なラインであるが、リバーブの深い、空間をかなり強く意識されている点でSlowdiveが好きな人にはお勧めできる。なんとなくシューゲイザーができる前のバンドと言われても、そうかと思ってしまいそうであるが、かなり2008年に結成されたバンドである。個人的には高校生の頃かなり聴いていたので、お勧めだ。

まとめ

以上、長々と御三家の説明とそれ以降のバンドを紹介した。それ以降のバンドの紹介に関しては時代がかなり開いた後(所謂リバイバル的な感じ)のバンドを紹介した。シューゲイザー全盛期の90年代のバンドたちに関しても追々紹介していけたらと思う。
現在日本に存在シューゲイザーバンドたちに関してもかなり複雑な脈があるのでそれも整理しつつ紹介していけたら良い。

シューゲイザーといっても、さまざまな要素、この要素はマイブラっぽい、この要素はライドっぽい、スロウダイブっぽい、など、色々な点でシューゲイザー的と言えることがわかったと思う。なので、シューゲイザーバンドを聴く上でこの御三家を知っておくと少し頭の中で整理しやすいのではないかと思う。

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