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【PJ実施レポート】生駒市の2040年の未来の学校を想像する職業体験プログラム

開催概要

日程|2021年11月11日(木)〜12日(金)
場所|オンライン(zoom)
参加者|生駒市立光明中学校・生駒中学校・生駒北中学校の2年生のみなさん
やり方|簡易版未来想像ワークショップ

背景

Deep Care Labでは2021年11月、奈良県生駒市の中学生向けの職業体験授業に参画しました。

これは、生駒市立の生駒市立光明中学校・生駒中学校・生駒北中学校の2年生向けの職業体験授業で、「働く」へのイメージを持ってもらうとともに、将来的に必要になる力を育む授業で、事業を行っている5社の組織が、実際にやっている仕事を中学生たちに体験してもらえるようプログラムを提供するものです。

通常時であれば近隣の仕事場に実際に赴いて職業体験をしていたものが、コロナ禍で現場に出向くことが難しくなってしまった現状に合わせて今回特別に企画されたものとのこと。

わたしたち、Deep Care Labは中学生の皆さんに体験未来をソウゾウ(想像・創造)するお仕事を体験していただくべく「生駒市につくる 未来の中学校を提案せよ!」というミッションで一緒に企画に取り組みました。

生駒市の発表より
11月11日(木曜日)・12日(金曜日)の2日間、生駒市立光明中学校・生駒中学校・生駒北中学校の2年生330人が、「2030年へのインターンシップ」をテーマにした職業体験をオンラインで受講します。

3校の生徒を対象に実施した「将来に対して不安なこと」を問う事前アンケ―トでは、「高校受験」「大学進学」よりも、「仕事」「就職」という項目を選択した割合の方が多く、中には「AIに仕事をとられるのではないか」という具体的な意見もありました。
現在の中学2年生が社会人になる2030年は、人口の3分の1が65歳以上になる「超・超高齢化」による生産年齢人口の減少、年金問題、過疎地域の増加など、多くの社会課題が深刻化すると予測されていることもあり、社会に出ることへの不安が想像以上に大きいことがわかりました。このため、生徒たちが将来への不安を払しょくし、未来を前向きにとらえる機会とするため、今までとは異なる職業体験のプログラム制作を行いました。

今回は、日本マイクロソフト㈱(本社:東京都港区)、㈱アキュラホーム(東京都新宿区)、(一社)Deep Care Lab(京都市上京区)、Orbis Investments日本法人(東京都千代田区)、合同会社事業人(東京都港区)という5つの企業・団体と連携し、実際のビジネスで取り組むようなミッションに挑むプロセスを通して、変化の激しい時代を生き抜くために必要な力を学びます。

ワークショップのテーマ

職業体験ミッション:生駒市につくる 未来の中学校を提案せよ!
目的:新しいものをつくる力を育む

ワークショップの狙い

未来をソウゾウ(想像・創造)するために、

今の当たり前を疑うこと
今の中学生の自分が感じている違和感を大切にすること
想像力をめぐらせること
未来世代に何を遺したいか考えてみること

など、新しいことを生み出すために必要な「視点」を提供することを意識しました。

いま、義務教育も高等教育も、学びに関する様々な兆しが生まれています。
「新しく」「おもしろい」と感じる兆しはどれも、これまで見過ごされてきた本質的な課題や問いに向き合いながら、常識を打ち破る形で実現に向けたチャレンジをしているものがほとんどです。
そしてどれも出発点は、今に対する違和感から出てきています。

今中学生の生徒さんたちが学校に抱えている違和感を大事にしながら、とらわれている常識を超えてアイデアを考えてみる。
自分たちが大人になったときの中学生にどんな学びを経験をしてもらいたいか、自分たちの違和感を負の遺産として残さないように未来志向で考えてみる。
そんな経験が、「正解がある」今の勉強とはまったく違うものになるのではないかと思い、企業向けに用意している未来想像ワークショップを中学生向けにアレンジする形でプログラムを組み立てました。

また、中学生から未来の学校を提示されることで、先生方への現在の学びのあり方の批評的な内省にもつながるような立て付けも意識しました。

ワークショップの流れ

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1. ミッション共有
実際のお仕事のようにミッションを設定!

<ミッション>
生駒に2040年の社会を見据えた
新しい未来の学校をつくるプロジェクトが立ち上がった!
これまでの常識にとらわれない中学校をつくろうとしている。

未来デザイナーとして企画を考えよう!!

2.世界の新しい学校・学びの兆しを見てみよう
まずは、今世の中に生まれつつある、日本の平均的な中学校とは異なる形の「学校」や「学び」のあり方を実践している国内外の事例を見てみて、「こんな学校アリなんだ!」という可能性のタネを吸収しました。

3.いまの学校の当たり前を探し、いまの学校で変えたいところを見つけよう
今の学校のあり方の枠を超える事例を見た上で、自分たちの学校を、宇宙人の気持ちになって観察し、「あれ、そういえばこれ、なんでこうなってるんだろう」という気づきや違和感を感じたところを、ひとり1台配布されているタブレットで写真に撮ってきてもらいました。

また、いまの学校で変えたいところを話し合う中で、学校に対して置いている暗黙の前提や当たり前、感じている違和感に気づいてもらいました。それを壊す未来像を想像することで、今とはまったく違う未来の可能性に発想を広げていきます。

4.2040年がどんな時代なのか知り、どんな力を育みたいか考えよう
今回、授業を受けてくれた中学生が2030年に社会人になったときの仕事として、「10年後の未来の中学生のためにアイデアを考える」という設定で進めていきました。

さまざまな未来予測も見てもらいながら2040年のイメージを高めます。こんな技術も開発されていて、生活はこんなことまでできるようになっているかもしれない・・・でも環境問題はもっと深刻化しているかも・・・

などなど、良い面も悪い面も見ながら、こういう2040年だったら、中学校でどんな力を育めるといいかな・・・と想像力を働かせます。

自分たちが今の学校に感じている違和感を解消し、育みたい力を育てる、そんな未来の学校のアイデアを考えてもらいました!

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5.発表・投票

こんなプロセスを経て出てきたアイデアは・・・

・今の通学を2040年の技術を使って楽にしたい
・ジェンダーの問題を解決するために制服を撤廃したい
・完全バリアフリー化を実現して多様な人たちと学べる学校にしたい
・老人ホームと学校を合体させたい

といったものや、

未来は色んなものを作れて、コミュニケーション力もレジリエンスも高いコナンの阿笠博士みたいな人が必要になっているはず!と考えてカリキュラムを考えてくれたグループがいたり、

廃棄プラスチック100%活用の自動運転車の移動式の学校で、移動しながら学べる学校アイデアを作ってくれたグループがいたり、

短時間でもりだくさんのプログラムだったにもかかわらず、アイデアをたくさん考えて新しい中学校像として作り込んでくれました。

今回の職業体験、他のコースは「受注を勝ち取る!」ことを目的にしていましたが、こちらのコースだけは、

アイデアとして出てきた「未来の中学校」に自分も通いたい!次世代に通ってほしい!と感じられる感性はいまの中学生しか持っていない、実際の仕事でもいまの中学生たちの意見を聞くだろう、

ということで、私たち大人がアイデアを選ぶのではなく、参加いただいた生徒さんにアイデアへの最終投票をしていただきました。

今回の授業のまとめ

今回の授業を企画された尾崎さんが、参加された生徒のみなさんのアンケート結果をnoteにまとめています。
こちらもぜひご覧ください。

おわりに

「身近な人々のみならず、祖先や未来に生きる子ども、山川草木、動植物や微生物...ともに関わり合いあらゆるいのちへ生きていることに気づき、思いやりの実践を重ねる」姿勢がDeep Careであると掲げている私たちにとって、未来を担う中学生の皆さんと一緒に未来を描けたことは大変ありがたい機会となりました。

一方で、大人がつくった仕組みの上で暮らすことをある種強要されている中学生のみなさんに、今生活している学校の前提を超えた可能性を想像してもらうことの難しさも感じました。

たとえば、通学。

未来だったらそもそも「学校に通う」という概念自体が変容している可能性もありますが、出てきたアイデアの中には「ドローンを使って通学をしやすくする」といった、「通学」の前提が変わらないアイデアも多く出てきました。今中学生のみなさんがそれだけ通学への苦痛を感じている、という現れでもあると思いますが、一方でそれだけ苦痛を感じているのであれば、通学などの今の学校の前提すら壊し、後の世代には同じ体験をさせないようにする道だって未来には開かれています。そういった発想を通じて学校のあり方そのものを再定義し、今自分がいる環境をメタ的にとらえてもらえたら・・・という思惑も持っていた私たちとしては、そこまで発想を飛ばし切れなかったことの至らなさを反省するとともに、彼らを縛っている枠の強さに対して大人としての責任も感じました。

私たちは大人になり、学校という枠組みの中から出た身です。当時を振り返って「あれは変だった」「あれは変えてもいいんじゃないか」とある意味好き勝手に言うことができ、軽く発想の転換をすることができますが、中学生のみなさんにとっては今通っている中学校像が世界のすべて。それ以外の可能性を想像しろと言っても、その想像力の届く範囲を狭めているのは彼らを枠の中に押し込めている大人自身であるかもしれません。

これからの未来世代に私たちは何を遺せるのか、何ができるのか、大人になった私たちの責任はなんなのか、Deep Care Labが向き合っていきたいことを実体験として考える機会をいただいたように思います。この大切な問いには引き続き向き合っていきたいと思っています。

生駒市の中学生の皆さん、先生方、生駒市役所の皆さん、尾崎さん、貴重な機会をいただき本当にどうもありがとうございました!

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Deep Care Labでは、学校向けのワークショップの他に、企業向けの未来想像ワークショップも実施しております。

このような未来想像のワークショップや未来世代へのケアの気持ちを育むツールや技法などをともに研究していきたい方、プロジェクトで試してみたい方は、ぜひDeep Care Labにお気軽にご連絡ください。


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