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詩『紫陽花』

酸性雨が焦がす土瀝青の片隅に、
萎れた紫陽花の花びらを撒く。
その輪郭線は滲み出し、
色彩だけが模様となり永遠となる。

誰かの靴跡で
穢れた感情と記憶。

月球が降り注ぐ混凝土の真ん中で、
踏み潰された紫陽花の花びらを拾う。
その色彩は灰となり、
輪郭だけが額縁となり真実となる。

今夜は晴れたね。
隣で笑うあなたに、
今夜も晴れたね。
隣で答える私。

紫陽花の降る季節になると、
寒くて夜も眠れない。
誰かとまた紫陽花を拾うあなたに、
背を向けて歩き出す。


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