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連作『青春は密室だ』

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連作詩をまとめました。
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2024年6月の記事一覧

連作の終わりに『密室』

きっと 青春は密室だ。 鍵付きの窓を持たない部屋の中で誰も干渉できない、 派手に溜飲を下げたところで誰も文句は言えない。 斜方投射された球体の泳ぐ碧空の下で無機質に何かを捉えようとする彼奴も 鹹い香りのする液体で黄金色の管を磨く彼女も 密室の真ん中で馬鹿でかい聲で叫び倒しているのだろう。 そう 青春は密室だ。 毎秒のように暗証番号が変わる部屋の中へ誰も侵入できない、 派手に泣き号んだところで誰も後ろ指を指せない。 膨張する気圧に呑まれ頭痛に神経を擦り減らす君も 相合い傘の口

連作⑥『猋』

諸行無常の茶色い焦土の真中で 涎を溢すは骨張った番犬。 血の滴る爪痕の溝に落つる種子、 油混じりの泥濘に沈む。 蜘蛛の巣の如く根を張る株に腰掛け 鉄漿黒のように汚濁する西空を眺む。 自分勝手な私が 本当に大嫌いだ。 盛者必衰の黄色い朝陽の真中で 泪を零すは目障りな狂犬。 血の滴る爪痕の溝に芽吹く花、 雨模様の窒素を呑む。 燃え広がる言葉の中で それでも生き残る命を待つ。 来る日も、来る日も。