夢を叶えた五人のサムライ成功小説【フライパンズ編】1

この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。

大阪はお笑いの宝庫としてめた知られる街だ。


おばさんパワーも迫力満点だ。
おばさん二人が会話をするだけで漫才になっていると言っても過言ではない。


そんな街・大阪では埋もれるほどのお笑い芸人が斬って捨てるほどわんさか存在する。


これだけ居ると売れている芸人から売れていない芸人までピンきりであることは言うまでもない。


そして昨今では売れっ子芸人ほど、活躍の場所を東京へと移し大阪の地を離れていく。

そんな激戦区の大阪で、お笑い芸人を目指す若者も多くはない。


お笑い界のスーパースターを夢見て芸人の扉を叩くものは後を絶たない。
と同時にその厳しさに着いていけず、挫折するものもまた後を絶たない。


そんな世界でとりあえずはプロにはなったものが、定期的に開催されるお笑いライブで腕を競い合う企画がある。


その名も【レッツ!美銀】だ。
今年は六組の出場である。

この日も数組の芸人たちが出場し、出番を待ち、楽屋で本番に備えて最後の練習を重ねていた。


そんな芸人たちのなか、笑えない状況に置かれたお笑いコンビが、ど真剣な表情で何やら話し込んでいた。


『茂太、これを最後に解散しよう』
熊谷弘樹は曇った顔で相方の岩松茂太に言った。


突然のこともあってか、茂太は弘樹の言葉の意味を理解できずにいた。
茂太にとってはいきなりではあるものの、弘樹にしてみたら考えに考え抜いた末の辛い心境でもあった。

重苦しい雰囲気が室内を包む。
弘樹の鬼気迫る表情にどうやら嘘はない。


茂太は深刻な面持ちで弘樹を見つめた。
『俺たちがデビューして十年・・・確かにこれといった実績はない。しかも同期のメンバーの中に今では冠番組を持つコンビまでいる。だからといってコンビを解消する必要はないだろう』
そう答えた茂太は続けざまに問いかけた。

『弘樹、理由を聞かせてくれないか・・・』
深い溜め息をついた弘樹は、うんざりした表情で伝えた。


『お前、最近というか・・・ここ数ヵ月おかしいぞ』
『おかしい?俺が?』
『あぁ』
『おかしいってどういう風に・・・』

弘樹は単刀直入に鋭く無遠慮に言い放った。
『自覚してないんだな』


そんな話しをしていると前組のコンビであるコンコンどなた様の出番が終わったらしく、ディレクターがやって来た。


ドアを叩く音と共に声がする。
『フライパンズ様、スタンバイの準備をお願いします』

二人は話しをひとまず終わりにして舞台へと向かう。


通路を歩いていると先ほど出番を終えたコンコンどなた様の二人がやってきた。


満足そうな顔をして歩く二人をよそに、弘樹と茂太は阿吽の呼吸どこへやらといった面持ちで不安さ100パーセントオーラを引っさげてステージに立った。


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