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これからのアフターマーケットに関する考察

自動車メーカーのアフターセールス現状

■ そもそもアフターセールス事業とは?

自社製品のメンテナンスや故障修理、事故修理への部品供給による収入がメーカーにとってのビジネスである。 よってストックビジネスであり、基本的に事業単独で新規顧客を獲得することはない。 既存客のメンテナンス需要、故障修理需要、事故修理需要をどれだけ囲い込めるかが、鍵である。

基本のリテールチャネルは販売店である。メーカーのコア・コンピテンシーは、部品調達、物流、修理技術情報の提供といった上流工程における最適化・効率化にある。

もちろん、リテールに関しても、販売店に対するオペレーションの効率化指導や、サービスマーケティングの導入といったことに力を入れてきた。 中でも顧客対応に関しては、トレーニングの提供や、覆面調査による抑止力導入等、各社工夫を凝らして来た領域であろう。

某国産メーカーの場合、販売店ネットワークのほとんどを子会社化している日本国内市場においては比較的コントロールしやすく、顧客対応品質のばらつき是正は一定の効果を上げてきた。 しかし、ネットワークのほとんどが独立資本である海外市場に於いて販売店に対する指導力・影響力を発揮するには、本当の付加価値を如何に提供するかが重要である。

販売店経営者に対しての提案型営業、店舗プロセス改善コンサルティング、ナレッジシェアリングといったサポートに加え、インセンティブと連動した評価システムがネットワークによる収益向上の鍵を握る。

■ 市場環境の変化に伴うアフターマーケットとの競合激化

自動車のコモディティー化に伴い、顧客はメンテナンスに高い利便性と安さを求める傾向が強くなっている。 自動車メーカーはポリシー上、非純正部品を使用したメンテナンスや修理を実施した場合は、万が一不具合が生じた場合の保証適用が出来ない、としている。  しかし、お客様は保証期間が過ぎると、利便性と安さを求めて正規販売店以外の第三者サービス店へ流出する。 特に、中国を代表とする新興市場においては、保証期間を過ぎた車両が今後急激に増加し、今後メーカー系列の販売店以外への顧客流失が加速する。

アフターマーケットには、メーカーの正規販売店が行うサービスの他に大きく分けると以下の2つの競合が存在する。 ひとつは、部品メーカーやタイヤメーカー等大手資本が広域に展開するサービスチェーン店と、もうひとつは、地場の個人資本の修理工場がある。 それぞれUSPが異なる。 

大手チェーン店は、修理の速さや、利便性、待ち時間には自分のクルマの作業の様子を見ることが出来たり、車両アクセサリー等様々な関連グッズを選んだり、また待ち時間を快適に過ごす工夫がなされていたりする。 一方で、地場の修理工場は、長くその地域に根差し、信頼で顧客とのビジネスを維持させている。  

いずれも部品の調達先は(自社製品を除いて)、部品商と呼ばれるWholesalerであることがほとんどである。 このWholesalerの優位性は、取り扱い部品種類の豊富さと納期の速さである。 

これらのWholesalerの調達先は、部品メーカー、OEサプライヤーが主である。 独自で倉庫を持ち、管理と配送をしているが、一車種で3万点近くもの部品の在庫を持ち、それらを管理することは非常に難しい。 大抵の場合、部位であったり、メーカーであったりに特化している場合が多い。 

この様な状況下、メーカー正規販売拠点のみを主としたアフターサービスの提供だけでは、今後マーケットプレゼンスを保つには困難な状況になりつつあり、これまで以上に「安心・安全」、「利便性」、「安価」、「信頼・親しみやすさ」といった顧客提供価値の実現と訴求が重要になってきている。

また、自動車メーカーとして本来の強みである、調達、物流、技術情報を武器にして、積極的にこれらの市場の流通をコントロールしなくてはならない。


■ 自動車メーカーにおけるアフターセールス事業の位置づけ

アフターセールスの本来の使命は、お客様に2台目を売ること。 1台目の保有期間で商品に対する安心を実感していただき、固定客となっていただく。 この考え方を実践してこそ、ストックを増やして継続的な収益拡大を実現できるのである。 
各国市場においてトップシェアを維持しているメーカーの自動車の再購入率は、

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