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ディーケーです。 モノを書くことを通じて遠い昔に忘れてしまった何かを捜索し、日常に埋も…

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ディーケーです。 モノを書くことを通じて遠い昔に忘れてしまった何かを捜索し、日常に埋もれてしまいそうな何かを記録しています。

マガジン

  • この不条理な世界へ、ようこそ。

    青春小説 【全15話完結】 「自分の居場所がここにないなら、探しに行くしかないだろう」 80年代、日本からアメリカ、ロサンゼルスへ。 不器用なひとりの少年の成長ノート。

  • 低偏差値サラリーマンの生き残り術

    高学歴意識高い系に負けるな! 仕事が出来る出来ないに学歴は関係ない! 生き抜いて行く為のテクニックと心構えを貯めていく。

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シミジン

今でもたまに思い出す小学生の頃のすごい友達。 子供なのに立派な人はいますよね。 人生10年そこそこしか生きていないのになんでこんなにも人間ができているのだろう、と思える人が。 こういう人って、もしかして既に何度も人生をやり直しているのかな、なんて疑ってみたくなります。 そんな人がいました。名前をシミジンといいます。 シミジンは家が近所でした。 とおり斜め向かいのとなりのとなりぐらいの位置にシミジンの家がありました。 シミジンの家は大きくて、白くて、芝生の綺麗な庭には大

    • この不条理な世界へ、ようこそ。 (15)

      ザ キッズ リトルトーキョーには当然職安なんてない。 ここは町ではなく、商店街だ。 ここでのほとんどのことは人伝てで決まる。 そういう場所で一度悪い評判が立つとおそらく2度と仕事につくことはできない。  ……なるほど。 ただし、商店街にも寄り合いみたいなものがあって、そこの偉いひとなら多少の融通が効くはず。 仕事が欲しいなら、そのひとに会いに行くべき。 ……もっともだ。 年上のひとの話は聞いてみるものだ。 ビザ更新失敗で不法滞在確定。 金もなく来週からホームレス。 

      • この不条理な世界へ、ようこそ。 (14)

        アイデンティティ 1985年。 ロサンゼルスのリトルトーキョーは日本ブームに乗って賑やかさを増しているように感じる。 ヤオハンという大きなショッピングセンターも出来たし、週末にはメインストリートにあたるジャパニーズビレッジプラザには多くのアメリカ人を見かけるようになった。  歩いていると、忍術を習える場所はこの辺にないか?とか聞かれたりする。 さっきなんかメンズタビは何処で買えるか、と聞かれた。 メンズ(男性用) タビ(足袋)。 最初ナニ聞かれてるかわからなかった。 あの

        • この不条理な世界へ、ようこそ。 (13)

          ロスト チャイルド まだ日没までは時間があるはずだが、太陽は昼のピークを超えてわずかばかりその力を弱め始めている。 俺のテンションもその太陽と同期するかの様に下がり気味だ。 時々潮風が淀んだ排気ガスと埃をさらっていってくれるが、俺はここに取り残されたままだ。 俺はまだメキシコからアメリカに入国しようとする労働者の列に並んでいる。  一旦陸路で国境をまたぎ、再度アメリカへ入国する際にパスポートを見せればアメリカでの滞在期間が延長できると聞いて、アメリカ人観光客に紛れてバス

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        シミジン

        • この不条理な世界へ、ようこそ。 (15)

        • この不条理な世界へ、ようこそ。 (14)

        • この不条理な世界へ、ようこそ。 (13)

        マガジン

        • この不条理な世界へ、ようこそ。
          15本
        • 低偏差値サラリーマンの生き残り術
          19本

        記事

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (12)

          ステイ オア リーブ 「ハーイ、あなたは何してきたの?」 同じバスの乗客のひとり、白人のぽっちゃりした女性が俺に話しかけて来た。 集合時間にはほんの少し早いがバスに戻ってきたところ、もう既に数人の乗客が戻ってきていておしゃべりをしていた。 「いや、特に何もしてない。 君は?」 特に興味があるわけではないが、というか興味は全くないが、一応礼儀として聞き返してみた。 すると、「私はね・・」と、早口でペラペラと、どこどこへ行ってなになにをした、と詳細に話し出した。 ところが

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (12)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (11)

          グレイハウンドバス 1985年。 ダウンタウンLAのバスターミナルを出発したグレイハウンドバスはメキシコの国境の街、ティワナに向けてハイウェイを走っている。 バスの運転手は軽快な調子で、前の方に座る中高年夫婦たちとマイクを通して会話をするようにバスのルートの説明をしている。 これは観光バスなんだ、と改めてわからせてくれる。 乗客はほかに、前の方に座る数組の観光客とおぼしき中高年夫婦と、あと数人が後方にバラバラに座っているだけで、座席は3割も埋まっていない。 バスの前方で

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (11)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (10)

          オールドマン アンド ティーヴィー ルームシェアをしていた2人が帰国してしまった。 ツーベッドルームはキヨと俺の2人には大きすぎる。 家賃がもったいないのでアパートを引き払い、別々に暮らすことにした。 俺はトイレとシャワー共同のお世辞にも綺麗とは言えない施設のようなところで寝泊まりする様になった。 家賃が週払いで格安だったが、まあそれなりの部屋だ。 部屋の隅で夜中にガサゴソと音がする。 どうやらネズミの同居人がいるようだ。 おもしろいことに、1週間の宿代に20ドル足せば

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (10)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (9)

          マチェーテ 全く土地勘のない場所で、本当に味方かどうかもわからないメキシコ人ギャングの案内で、同じメキシコ人ギャングの売人を探して追い込みをかけるなんて、全くどうかしてた。 今になって冷静に考えると、本当に死んでもおかしくなかったと思う。 どうなったかを簡単に話そう。  ※ 俺が最初にビルの外側にある鉄製の非常階段を登っている例の売人を見つけ、追いかけた。 売人はドアノブに手をかけたが、中から鍵がかかっているようで開かない。俺が追いかけて来るのを見て、売人はバンバン

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (9)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (8)

          グーフアップ 翌日、俺がゲームセンターの受付台の後ろで、奥の事務室に座っていた店長と話していたところ、急に後頭部に強い衝撃を感じた。 激しい鈍痛を堪えて振り返ると、昨日の客が興奮した顔でこちらを睨んでいる。 何か投げられたようだ。  なんだ、なにが起きた、と奥から店長が出て来た。  俺は後頭部を押さえてた手を見た。 血が付いている。 一体何を投げやがった? 全身の血が途端に瞬間沸騰し、カウンターを飛び越えてヤツに掴みかかった。  店の中でテーブルゲームを蹴散らし、暴れ

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (8)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (7)

          バッドターン   「いつになったらあのメキヤン共を追い出すの!」 客が帰った後の店に俺を呼んだママはそう言った。あまりに理不尽だ。 駐車場を溜まり場にしているメキシコ人ギャング達を追い出すなんて俺に出来るわけないし、そもそも俺の仕事じゃない。 俺は言い返したくても言葉が出ず、つい手元にあったウィスキーの瓶をガラステーブルに叩きつけた。 ウィスキーの瓶は割れず、ガラステーブルが粉々に割れ、店のチーフやボーイ、ホステスがみんな奥から出てきて、騒然となった。  「何があっ

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (7)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (6)

          アナザーワールド 友達を悪く言われて気分良いわけない。 俺にとっては特別な友達だ。 探し求めていた俺の『居場所』なんだ。 それを彼女 ー ジニーはわかってない。  人には居場所が必要なんだ。 居場所を失うと生きる気力を失う。 それがどれだけ辛く苦しいことか、経験しないとわからないよ。 俺は少し前まで嫌というほど経験したばかりなんだ。 そこまで英作文してノートとペンをイスの上に置いて立ち上がった。 仕事中、次に彼女に会う時スラスラ言えるように、まず言いたい事を文字に起こし

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (6)

          この不条理な世界へ、ようこそ。(5)

          フライ・ハイ 鈍く光る銃口の先端は俺の腹に向いている。  男はドアの前に立ち俺を睨んでいる。 俺を睨むその目と銃口だけがハッキリと見え、その周りのものは全てなんだか歪んで見え、遠近感もおかしい。 銃で腹を打たれると地獄の苦しみを味わって死ぬ、となんかの本だか映画で見たことがある。 口の中が乾き、生唾さえ出てこない。 アキラさんは俺の背中に隠れてる。 死ぬかもしれない。 「日本人留学生射殺される」との新聞見出しが頭をよぎる。 どうしてこんなことになったのか… 話は3

          この不条理な世界へ、ようこそ。(5)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (4)

          スタンド! アキラさんに紹介してもらい、日本人向けスナックの駐車場管理の仕事を始める事になった。 俺は当然車の免許を持ってなかったので、アキラさんから運転を教えてもらい、まず免許を取った。 50問程度の学科試験と、いきなりの路上試験。 学科試験は英語の出来ない俺のような人間向けにカンニングペーパーが裏で流通していたし、路上もアキラさんが教えてくれたおかげで問題なくパスし、1日で免許は取れた。 カリフォルニア州ドライバーライセンス。 そう書いてあった。 仕事はスナックに来

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (4)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (3)

          リセット 1985年夏、俺は単身ロスアンジェルスへ向けて飛んだ。 外国に行くことはおろか、飛行機に乗るのも初めてだ。 飛行機は一気に加速してあっという間に宙に浮いた。 うおー、すげえ。 自分の居場所がないなら、探しに行くしかない。 そう思って行き先を思案した時のキーワードは、『遠く』。  『遠く』イコール『外国』。 『外国』イコール『ベストヒットUSA』、『アメリカンヒーロー』、『ロス五輪』のアメリカ。  アメリカって何処? それは外国。 そこでは皆英語を喋る。 それ

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (3)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (2)

          アイソレーション 「ワリイけど、来てくれる? Yさんが呼んでっから」 歯抜けのヤンキーをボコってしまった日の放課後、そのツレの元サッカー部ヤンキーにそう言われてついていった。 上級生のYは、ヤンキーとかツッパリという生易しいカテゴリーではなく、いわゆる『ワル』だ。 元々は野球部員だったらしいが、ドロップアウトしてからヤンキーを束ね始めたらしい。 高校生のくせに髭を生やし、見た目はヤー公そのものだ。  面倒な事になったな、とは思いつつ、冷静にシナリオを考えてみる。 1

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (2)

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (1)

          クラシフィケーション 1983年春 俺の直ぐ後ろの席にはイカついヤンキーが座っている。 中学の頃から喧嘩が強く有名で、同じ学年はおろか上の学年からも一目置かれていたヤツだ。 上唇の端に中学のときの喧嘩でできたであろキズ跡があり、ただならぬ怪物ごときオーラを放っている。 俺のクラスには、この怪物君以外にヤンキーっぽいヤツはいない。 それは珍しいことで、他のクラスには少なくとも5〜6人はヤンキーがいる。 ヤンキー率30%以上。 低偏差値公立高校ではそっちの方が普通なのだろう。

          この不条理な世界へ、ようこそ。 (1)