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【浮薄】#30DaysFilmChallenge DAY13

「考えるな、感じろ」的な作品ほど考えて欲しい?

「監督はCMプランナー」というフレコミに大した意味はないように思う。映画監督になる前にCMプランナーだったという人もいるだろうし、映画監督もCMプランナーもどちらも出来るけれど、本当は小説の方が才能を発揮できるという人だっているだろう。職業的な肩書きほどアテにならないものはないというのに作品紹介に使われることが存外多い。とかく「CMプランナー」が手掛ける作品は「とにかく映像がユニークです/さほどメッセージ性は強くないです」といった<軽さ>を謳いがちだ。「考えるな、感じろ」という一種の押し付けにも受け取れる。が、中途半端にメッセージ性を持たせた作品よりも、ただ見せて、ただ魅せていこうとしてくれている「CMプランナー」たちの作品の方が、一見、何もないようだけれど、もしかするとここには何かがあるかもしれないと、かえって深く考えさせられてしまう。

深く考えさせてくれる映画

というわけで、ボクにとって「深く考えさせてくれる映画」とは、基本的に「(一見すると)何かを深く考えさせようとしていない映画」になる。そんな映画は結構多い…しかし(しっかり味わった記憶はあるものの)実際には何を深く考えさせられたかまでを覚えていないのがほとんどだったりする。ここ一年間で、きちんと記憶している一番深く考えさせてくれるなあと思った作品は『ウィーアーリトルゾンビーズ』…両親を亡くしゾンビのように心を無くした4人の子どもたちが冒険し心を取り戻そうと音楽を通して成長していく物語…だ。『生きてるくせに、死んでんじゃねえよ。』という深いのか浅いのか分からないキャッチコピーが付いている。

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あざとさとせつなさと中島セナ

この作品のキャッチコピーを付け直すことが許されるのであれば「あざとさとせつなさと中島セナ」としたい。ポスターに用いられている「8ビットゲーム風」表現がまあまああざとい。そして全編カラフルでとても空虚だ。特に、両親を失った4人に子供たちのバンドの楽曲、作品タイトルでもある『WE ARE LITTLE ZOMBIES』のMVが、素晴らしくあざとくでせつない(褒めている)…ロールプレイングゲームのオープニングテーマのようなイントロ部分は、何も考えなくていいですからねと言っているようでいて、ゲームのようなフィルターを通してしか世界と向き合えない不安定な年齢の頃を強制的に回想させるような仕掛けになっていてちょっとズルいと思うのですよ。

いろんな意味で「失った」子供と大人の立場の間に存在するのが(個人的な好みでもある)「やぶにらみの女(の子)」=「中島セナ」である。

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彼女が出てくるシーンは非常にシンプルなものが多く、その他の何だか狙い過ぎているシーンよりもはるかにせつない。

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あくまで個人的な捉え方であると前置きした上で言い切ってみると、この作品における中島セナ(イクコ役)はゴジラである。ただそこに現れて放射能を吐く怪獣。その御し難い存在を中心に持ってきたり、遠巻きに眺めたりしながら物語は粛々と進んでいく。何かを語りかけてくるようでいて、ほとんど何も言っていない。こちらは淡々とした映像の中に時折あらわれるゴジラ中島に畏怖しながら、つかみ切れない漠然とした不安を「問題」としてとらえ直すことを要求される極めて内省的な作品だとボクは思うのでした。割とテーマ曲にやられてしまった感がありますが。


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