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子どもの食物アレルギーを予防するためにできること

お子さんの食物アレルギー、心配ですよね。
ネットやSNS、TVをみているといろいろな情報に振り回され、何が正しいのか、どうしたら良いのかと感じることも多いと思います。

今回は食物アレルギーをなるべく予防するために、今できることについて少しまとめようと思います。しっかりとした研究結果のあるものが主ですが、対応などについては私見もあるので、参考程度に考えていただけると幸いです。またどれだけ頑張っても予防しきれないことはありますので、悩ましいときや実際に発症してしまった場合には、ぜひかかりつけの先生と相談して食物負荷試験などご検討ください。

目次
① アレルギーが作られることを予防する(経皮感作を防ぐ)
② アレルギーが作られる前、もしくは感作されていても軽症なうちから食べ始める(経口免疫寛容を促す)
③ その他で気を使うことで予防につながること

① アレルギーが作られることを予防する(経皮感作を防ぐ)

乳幼児の食物アレルギーの原因で一番重要なことは「肌あれ(湿疹)」だと考えられています。肌があれていることで、免疫細胞が原因を探し、あれた肌の周辺にあるものに抗体が作られてしまいます(経皮感作)。
本来は寄生虫などから身を守るための免疫の働きですが、肌が荒れていると、寄生虫じゃなくてもホコリなどが皮膚の中に侵入してしまいます。これは悪意があるわけではなく、ひび割れた皮膚の内側に落ちてしまうようなものです。
イメージ的には、体を外敵から守る主要な壁である肌から侵入してきたものは悪い侵入者であり、次回入ってきたらすぐに追い出してやろうと免疫細胞が悪者認定するような感じです。

一般的な家庭のホコリの中には、もちろんダニなどの抗原がたくさん含まれていますが、卵・牛乳・小麦などの食べ物のタンパク質もたくさん含まれていることがわかっています。これが食物アレルギーの原因になると考えられます。食事していれば、やっぱり周辺に食べかすが落ちてしまうんですね。ただ、これは頑張って掃除をしていても0にできるものではなさそうです。
最近では家でミックスナッツなどナッツ類を食べることが増えていることもあり、ナッツ類がホコリに紛れ込み、ナッツ類のアレルギーが爆発的に増加していたりします。

上記のような感作を抑えるにはとにかく肌をきれいにすることが大切です。
乳児期はまだ肌の機能が弱く、そもそもとても薄いためちょっとした刺激ですぐに荒れてしまいます。また、プルプルしてすべすべに見えても、実際には肌の水分保持機能が低いため、乾燥肌だったりもします。こういった要素で乳児期に食物アレルギーが作られやすいと考えられます。

肌をきれいにするには、まずは保湿が大切です。できれば生まれてすぐから、乳液やクリームタイプのものを1日2回、たっぷりと使用したいところです。それだけでも湿疹の予防に繋がります。
ただ、肌がすでに荒れてしまっている場合はどれだけ保湿を頑張っても、きれいにならないことも多いです。なぜなら、肌荒れ=炎症なので、保湿のみで炎症を取り除くことが難しいからです。
この場合にはステロイド軟膏による治療が望ましいです。ときにステロイド以外の抗炎症作用のある軟膏を使用されることもありますが、非ステロイド性の抗炎症作用のある軟膏は一般的にかぶれやすいため、どちらで炎症が起こっているのかわかりにくくなる可能性があるので注意が必要です。

赤ちゃんにステロイド軟膏は心配・・・と言われる方もおられるかと思いますが、ステロイド軟膏の強さや使用量、使用期間をしっかり見極めて使用すればとても安全な薬です。
よく心配なため「薄ーく、刷り込むように」塗っている方やそう指導している医師・薬剤師の方もいますが、とくに炎症のある肌は思った以上に凸凹しているため刷り込むように塗ると重要な部分に塗れていない可能性が高いです。必要な量を塗れていないと十分な効果が得られず、無駄に長く軟膏を使うことになったり、そもそも効果が得られず、食物アレルギーなどの原因になってしまうことがあります。ぜひしっかりと十分な量を塗るようにしてみてください。目安は「テカテカになる」、「ティッシュを近づけたらくっつくくらい」です。時間をかけて丁寧に塗るよりたくさんとって、さーっとべったり塗るほうがうまく塗れることが多いと思います。

肌をきれいに保つことで食物アレルギーの予防をしましょう。

② アレルギーが作られる前、もしくは感作されていても軽症なうちから食べ始める(経口免疫寛容を促す)

以前は食物アレルギーの原因になる食べ物については、予防のために1歳以降など、なるべく遅く食べ始めるようにしましょうと言われていました。
しかし、その結果食物アレルギーはむしろ増加してしまい、その後の数々の研究結果から、今はアレルギーを予防するという観点ではなるべく早めに食べたほうが良いだろうと言われています。

その理由として経口免疫寛容という考え方があります。これはイメージ的には口から腸に入ってきたもの(栄養としての正規ルート)は、体にとって大切な栄養だと認識する能力になります。

早めに食べ始めることで予防効果を確認できているのは、鶏卵とピーナッツ(+ミルク)くらいですが、その流れや機能的な意味からは、食べられるものでご家族が食べているものは、食べ始めを遅くさせる必要はないと考えられます。
2019年には離乳食のガイドでも離乳食初期から開始するよう推奨が変わりましたし、海外ではピーナッツも1歳未満で食べ始めることを推奨する地域が増えてきています。しかし、現在本屋さんなどに並んでいる離乳食本はまだ情報のアップデートがされていないものも多いため、注意が必要です。
本で読んだことやおばあちゃんやママ友から聞いた話が必ずしも正しいわけではないんですね。

ただ何でも良いから食べてというわけではないです。食べ始めるタイミングは以前思っていたより早めが良いですが、食べ方自体は今までの考え方と変わりません。何かあったときに受診がしやすいようになるべく平日日中に、しっかり加熱したものを安全な少ない量から始めることが基本です。

注意することとして、卵を初めてあげるときに、電子レンジで調理したという方がいますが、電子レンジでの調理では卵のアレルゲンは生卵とさほど変わらないため、基本的には固茹で卵から開始することが無難です。卵は加熱によってアレルゲンの量が変わります。
同じように抗原の量という意味で、初めの頃は小麦に関してはパンよりうどん、牛乳に関してはチーズよりミルクかヨーグルトが抗原の量が少ないため安全に与えることができます。
また食べ始めるときに肌があれた状態が続いていると、じんましんなどの症状が起こりやすいため、なるべく食べ始める頃には湿疹をきれいにしておきたいところです。

なお、ピーナッツは早期摂取による予防効果が期待できますが、そもそも自宅でピーナッツを食べない場合には積極的に食べ始める必要はあまりないかなと思います。ただ、もしよく食べているよーという場合には、スムースタイプのピーナッツクリームを少量調味料程度で与えていくことも考えていいかなと思います(こちらについては、なるべくかかりつけの先生と相談したいただいたほうが無難かもしれません)。
*粒のまま乳児にナッツ類を与えることは誤嚥のリスクとなり、危険です。

ちなみに、早く食べることで逆に食物アレルギーを発症してしまうのではないか、食べさせられるのが早かったせいでアレルギーになってしまったのではないかと心配される方がいますが、その心配はないと思います。
もし症状が出てしまった場合には、もう少し遅く食べていても症状は出ていたと思います。食べ始めるよりも前に、アレルギーはつくられてしまうからです。

③ その他で気を使うことで予防につながること

①・②で説明したように、食物アレルギーを予防するためには肌をきれいにして、早めに食べ始めることがポイントになります。ただクルミやカシューナッツなど最近原因として増えているナッツ類は、乳児期に食べ始めることはちょっと大変です。
親がナッツ類を食べていたからといって全員がアレルギーを発症するわけではありませんが、やはり食べていない(環境中に存在しない)よりはリスクになります。特に肌が荒れている場合や、他の食物アレルギーもある場合には対策として、児の生活する空間ではなるべく食べないようにすることが無難です。

その他にもお蕎麦屋さんやパン屋、大豆・おからなどの加工をしている場合などでは、家の中の抗原の量がとても多くなってしまう可能性があり、アレルギーとしてはリスクが上がります。子が主に過ごすスペースについては、子どもは環境因子に弱いものとして、少し注意しておくと無難かもしれません。


今回の話はだいぶ長くなってしまいました。
一部個人的な意見もあるので、全部が全部必須というわけではありませんし、これを頑張っても残念ながら食物アレルギーを0にすることは難しいかなと思います。ただ、食物アレルギーの予防については、知識があるだけで安心感含めだいぶ変わってくると思います。
ご心配なことや、実際どうしたら良いのかはなるべくアレルギーに詳しいお近くの小児科の先生にご相談いただくと良いかなと思います。また、公的な情報源としてアレルギーポータルなどにはQ & Aもありますので、ぜひご確認いただければと思います。

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