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アレルギー性鼻炎の根治を目指せる?  舌下免疫療法について

さて、今回は春に向けてアレルギー性鼻炎の根治を目指すことが可能と言われる、舌下免疫療法についてまとめてみます(私自身もスギ花粉症の治療を行っています)。
今はあまり花粉症で苦しんでいる方は多くないかもしれませんが、落ち着いているときにこそ情報を集めておきましょう。

*今回の話のまとめ

アレルギー性鼻炎にはスギ花粉症を始めとした季節性のものと、ダニなどによる通年性のものがあります。鼻水やかゆみを抑える対症療法が基本ですが、今では舌下免疫療法といって、根治を目指せる治療があります(保険適応です)。
小児期は登校や体育などでアレルゲンを避ける生活が難しい方も多く、花粉症は受験シーズンの難敵にもなります。継続期間は3〜5年と少し根気のいる治療ですが、効果は4〜6か月後くらいには出てくることも多いです。ご興味のある方はアレルギーを見ている病院でぜひご相談ください。

・アレルギー性鼻炎について

 まず、アレルギー性鼻炎とは花粉ダニなどを体にとっての異物(アレルゲン)と判断してしまい、それを追い出すために鼻水やくしゃみなどが起こる状態です。原因アレルゲンはたくさんありますが、大きく分けると花粉による季節性のものとダニやホコリによる通年性のものに分けられます。
 花粉飛散量の増加などにより徐々にアレルギー性鼻炎をもつ方が増えていて、最近では2人に1人が何らかのアレルギー性鼻炎を持ち特に小児期に発症する割合はここ10年間でほぼ倍に増えています。鼻水やかゆみで集中力が落ちるだけでなく、鼻血や不眠の原因にもなるため、あまり我慢はせず、しっかり治療をすることが望ましいと思います。

・アレルギー性鼻炎の治療

 主な治療は「薬物療法」「アレルゲン免疫療法」「手術療法」ですが、それに加えてアレルゲンの回避・環境整備も大切です。この中では薬物療法が最も一般的で、主に抗ヒスタミン薬の飲み薬が使用され、程度によって点鼻ステロイド薬や、鼻詰まりの強い方には抗ロイコトリエン拮抗薬などが使用されます。
 これらの治療をしても、完全に抑えることができない方も少なくないため、最近ではアレルゲン免疫療法の一つである「舌下免疫療法」を行うことも増えています。

・舌下免疫療法について

 まず免疫療法とは、少しずつアレルゲンを体内にいれることで、免疫寛容という「免疫反応を起こさなくてもよい状態」を体に覚えさせる治療です。これを安全に、効果的に行うために選ばれたのが舌下(舌の裏)だったので、舌下免疫療法といいます。
 現在国内で治療できるものはスギ花粉とダニ抗原に対するアレルギーです。軟らかい錠剤を舌の裏に1分間置いて、溶けたものをそのまま内服します。基本的には5歳前後から治療ができます(保険適応です)。
 免疫療法を行うことで、アレルギー性鼻炎の根治を目指すことができますが、体に覚えさせるには少し時間がかかるので、3〜5年間の継続が必要です(効果は4-6か月くらいから得られることが多いです)。
 アレルギーのある物質を口に入れるため、初めは口周囲のかゆみや舌の裏がはれるなど副作用が起こることもありますが、時間経過で改善することがほとんどです。また副作用対策も、お子さんの様子をみて相談することで問題なく継続できる方も多いです。

 小児期のアレルギー性鼻炎は、登校や体育などアレルゲンの回避が難しいことや受験シーズンとぶつかること、鼻詰まりや睡眠不足によって勉強・スポーツに集中できないなど、大人以上に治療の意義があるように感じています。
 また重症な方のための治療と考えられることも多いですが、「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」では重症度に関わらず治療対象とされています。症状が軽い人でも希望があればぜひお近くのアレルギー専門外来でご相談下さい。

・注意点

・安全性に大きな問題はありませんが、アナフィラキシーの可能性は0ではないため、初回の内服は病院で行い、30分間経過をみる必要があります。
・安全対策のため内服前後2時間は激しい運動などを避ける必要があります。
・喘息を合併している方は、まずは喘息の治療を優先する必要があります。

参考

・鼻アレルギー診療ガイドライン2020
・アレルギーポータル
・アレルゲン免疫療法ナビ

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