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2020年に読んで良かった小説

13.『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』
乗代雄介

『最高の任務』で第162回芥川賞候補となった現代文学の新星、乗代雄介がデビュー前から15年以上にわたって書き継いできたブログを著者自選・全面改稿のうえ書籍化。総数約600編に及ぶ掌編創作群より67編を精選した『創作』、先人たちの言葉を供に、芸術と文学をめぐる思索の旅路を行く長編エッセイ『ワインディング・ノート』に書き下ろし小説『虫麻呂雑記

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MONKEY19号刊行記念トークショー

MONKEY19号刊行記念トークショー

・『ウィットバーネットに敬礼』の朗読
 ストーリー誌のアンソロジーに対する序文。1960年代に執筆。サリンジャーは1930年代に氏の講義を受講。ストーリー誌ではなく、バーネット氏の記述に終始しているため、結局この序文は掲載されなかった。1975年、バーネット氏の没後に『作家のためのハンドブック』が出版。そこにひっそりとこの序文が掲載される。日本では未翻訳、今後もおそらく翻訳は成されないと思われる。

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黄色い雨

黄色い雨

フリャオ=リャマサーレスの『黄色い雨』を読み返す。スペイン山奥の廃村で、ただ一人死を待つ男の話。

冒頭から中盤まで、語り口は一貫して「〜だろう」という推量の形で統一される。あとは崩れゆくだけの錆びた家から、男の視点は頼りなく漂浪する。

人が死ぬということを考える。頰から肉が削られる、と言うよりも、頬が内側から無くなっていくような輪郭の変化。自らの体重を支えられなくなった脚の代わりに、行き場なく

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