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40年前の美大生が考えてた事

私が美大に入った頃は、
グラフィックデザイナー?何それ?
卒業したら何になるの?
…が周囲のおおかたの反応だった。
うちの親父なんぞは、
「将来は看板屋か?」と真剣に聞いてきた


なのでそのころ美大へ行くのは、
学歴社会からドロップアウトした連中で
社会的不適合格者の一員となる事だった。
親戚のおばちゃんなんかに伝えると
「あ、そう美大でデザインをね…。」
言外に(あ〜逃げたのね。社会から…)と
言われているような気がしていた。

そのせいかだろうか、
偏差値が中等以上の大学を出た人には
今でも引け目を感じている。
ところが最近のデザイナー志望の人たちは、
私からすれば「え、いい大学出てるのに?」
と思う人が多くて結構困惑するのだ。


そのころの美大に集う人間を分類すると
大体3種の人種に分類できた。

1.世捨て人系
2.アブナイ人系
(含、世捨て人やアブナイ人に憧れてる系)
3.ノンポリ系(後にオタク系が分派する)
注)ノンポリ:
ノンポリシーつまり政治的な偏りがない
というのが本来の意味だが、ここでは
特に目的意識がない者を指す

まあ要するに
社会に有益そうな人材は誰もいなかった。

中でも第三の勢力ノンポリ系…これが私の属
するクラスタだった。
1,2のタイプは美大芸大系に昔から存在する
タイプだけど、この頃からそこに分類されない
第三のクラスタが増えてきた。

世捨て人やアブナイ人になり切れない…
かといってそれらに憧れるわけでもない。
その時代ではちょっと中途半端なクラスタ
だったと思う。

ここをベースにオタクが分岐していったと
思うのだけど、彼らはその後30年以上かけて
世界制覇するまでに肥大成長した。
これはこれで凄いと思う。
個人的にここまで世の中に影響力を持つとは
思わなかった。

ただ「スキ」という一点だけで世界制覇を
成し遂げたのだから、無自覚な分ある意味、
世捨て人や、アブナイ人よりよっぽど
過激なアナーキストだったのかもしれない。

さてオタクにも分岐しなかった私は
どうなったかというと、特にどうもない。
だから自分自身は割と中途半端な
学生だった気がするし、
実は未だに中途半端な気がする。


でもそんなポンコツ連中でも…
というか、
ポンコツだからこそ自分の存在意義が欲しい
それがデザインであり、絵だった。

そして元々の出自がポンコツだし、
でも自己県意欲は強い連中だから…
「個」に執着する。

ここでいう「個」とは、
オリジナリティなのだ。
簡単な話「人とは違う自分」が欲しかった。

そして合評やコンペとなると、
特に「個」に走るのだ。
俺がオリジナルだ!
いやオレのオリジナリティの方が優れてる!
こうして、喧嘩するし他人を素直に認めない。

デザイナーが他のデザインをホメる時は
ウラがある…と思ってる世代は、
実はこんなバックボーンがあったりする。

そんなバックボーンを持った連中だから、
余り協働するとか言う発想がない。
だって基本的に社会的不適格者だし、
そんなやつに協働なんてできる訳ないのだ。

特にどうこう言う主張でもないのだが、
昔の連中はこんなバックボーンが
あるのだという事を、
今回は書き留めたかった。

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