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【第2回】トークンエコノミー

トークンは何の為にあるか

トークンの活用方法を考える上で、最初に抑えておきたい点は「トークンを何に活用するのか?」といった点です。トークンはそれ単体でしか機能しないのであれば、ただの時的な商品にしかなりえません。

しかし、実際にはトークンは数多くの種類の方法で特定のネットワークやDapps(分散型アプリケーション)を支えるネイティブな支払い手段、意志の表明を行うソリューションとして機能しています。
具体的な例を元にトークンがどのように使われるのか、その種類、タイプを見ていきましょう。

トークンの区分

大きく分けてトークンは以下の用途で使われることが多いです。

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まず、1つ目にご紹介するのはネットワークFeeの支払いです。
ネットワークFeeとは、Bitcoinであればマイナーに払われるトランザクション毎の手数料を指します。この性質を持つトークンは「分散型台帳ネットワーク」を構築しているタイプになります。この場合トークンはマイニングという作業を代行してくれる第三者に対してのインセンティブとして機能しています。

2つ目にご紹介するのは、ガバナンス投票です。

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出典:Uniswap - Voting

ガバナンス投票の例としては、Compound(コンパウンド)やUniswap(ユニスワップ)などのようなDeFi系、また仕組み上主体となる法人が意思決定しているのではなくコミュニティに軸足を移したDAO(自律分散型組織)が意思決定をしているプロトコル(サービス)に多いです。
ガバナンス投票において、CompoundではトークンのCOMPトークンを1つ持つことは1票を持つという考え方に則り投票を行っています。この際、マーケットから10COMPトークンを買ってきた方がいる場合には、単純に10票分の投票が可能ということになります。このようなトークンの性質をガバナンストークンなどと呼ぶことがあります。

3つ目にご紹介するのは、プラットフォーム手数料削減などのユーティリティが付随したトークンです。
これは海外取引所大手のBinance, FTX, Huobiなどの大手暗号資産取引所の発行しているトークンに見られる機能で、トークンを保有し続けることで「プラットフォームの提供するサービスに優先的に参加」できたり、「プラットフォーム自体の手数料が手持ちの自社トークン保有量に応じて減額される」などの機能が提供されたりしています。このモデルではトークンは自社サービスとの相乗効果のある製品として活用されている印象を受けます。
また特徴的なことは、多くの取引所トークンの例では法人の売上の一部を使い、自社のトークンを買い戻す(または手持ち残高から償却する)方法を採用しているところが多いことです。

4つ目にご紹介するのはステーキングです。
ステーキングとはProof of Stake(PoS)と呼ばれるマイニング作業を行わない、新しい意思決定の形式を採用するパブリックブロックチェーンの作業委任を行う行為です。
BitcoinなどのProof of Work型のブロックチェーンにおけるマイニングにおいては原則、マイニングを行うマイナーにならない人はマイニング報酬を受け取ることはできませんが、例えばTezosやPolkadotなどのProof of Stake型のブロックチェーンではマイナーに相当するバリデーターにならずとも、バリデーターを委任することが可能です。この委任をステーキングと呼び、委任を行った者は、委任先のバリデーター報酬の一部を貰うことができます

5つ目にご紹介するのはいわゆる「約束手形」のような性質を持つトークンです。

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出典:Compound Document

例えばDeFiのレンディングプロトコルである、CompoundにETHを預けるとETHはCompoundのスマートコントラクトの中に取り込まれるので、手元のウォレットからは当然預けた額の分、残高が減ります。
しかし同時にcETHというCompoundで貸していることを保証するERC-20トークンを受け取ります。このcETHもまた暗号資産なので、当然ながらDeFiなどでトレーディングすることが可能です。
また、このcETHがあれば、その対応した個数のETHをいつでも引き出せるようになっています。このようなタイプを償還機能を持ったトークンと呼ぶことができます。

また、4つ目のステーキングとセットになった償還トークンというアイデアも既に出ています。
分散型ステーキングサービスであるLido(リド)では、ETHをETH2.0にステーキングすることが可能です。その際、償還トークンとしてsETHというERC-20トークンを受け取ります。
このsETHの価格はマーケットが決めているので、必ずしも完璧にETH=sETHという価格にならないことが発生します。そうした際にトレーディングを行うことで実質的にETHの価値を持つトークンを割安で入手したり、sETHを売却したりすることで、利益を得るといった使い方も考えられています。

トークンの分類をどうやって見分けるか

一番難しいのはこの観点なのではないでしょうか。トークンの性質を見分ける一つのポイントはどのように使えるのか、その性質を正確に理解することです。
最近のトークンは、一つの効果だけではなく複数のパターンでさまざまな利用方法がある機能を付与しているものも多く、いったんあなたが持っている、買おうとしているトークンはどんな所で何に使えるのだろうという点を考えてみることが必要です。

その際には、実際のプロダクト、プロトコル、及びホワイトペーパーやドキュメントなどの関連資料にも目を通した上で、現状提供されているトークンとしての機能と、今後実現される可能性のある機能の双方を検討しておくことが重要です。

株式会社における株式との効果の違い

この問いは常にトークンという存在が出てから絶えない質問なのですが、トークンと株式では守られる権利や関与する法律などがまず大きく異なります。
特に一般的に暗号資産と称されるトークンは、一見株主のように見えてもその価値の根源が「会社」ではなく「オープンソースのプロトコルやDapps自体」になっているものがほとんどです。このような仕組みを簡単に整理すると以下のようになります。

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*1:全てのトークンが同機能を有している訳ではありません。
*2:証券該当性が高まるとも言われ、議論されています。STO(証券のトークン化)では可能です。
*3:上記BinanceやFTXのトークンがその例です。

注意したいトークンとは?

最後に注意喚起を兼ねて危ないトークンについて触れてみます。
ここまでの話を聞くともっと有用な方法をもったトークンが出てこないだろうかとか、トークンを持っているだけでお金が増えるようなトークンが生まれないかとか、ついつい欲が出てくる投資家の方も多いのではないでしょうか。

そうした投資家の方を狙うように、海外を中心に怪しいトークンを売りつけたり、今後取引所に取り扱われることを謳って、先に買っておくだけで儲かるといったような宣伝で販売を行うトークンが少なくありません。残念ながらこうしたトークンはほとんど詐欺的な商品であることが多く、購入した金額の元本割れはもとより、大きな損失を出すこともありえます。

また、やっかいなことにこうしたトークンの中には「ステーキング」や「ガバナンス」など少し詳しい層をターゲットに、こうした真っ当なトークンで用いられているものと同じ表現を使っているトークンも少なくありません。
きちんとした暗号資産交換業者で取扱いがあるものなのかなど、うかつに飛びつかず正確な情報を頼りに「トークンの性質」を見極めていただければと思います。特に「●●年後にはこうなる」といった表現や、「●●が達成されればこうなる」といった「仮説」が多いトークンの宣伝文句は通常、まともなトークンでは聞かれません。

この記事をお読みいただいた方は、こうした怪しげなトークンに飛びつかず、ぜひきちんと有用性のあるトークンを見つけて、その機能に触れてみてください。

■本記事は、Fracton Ventures株式会社(https://fracton.ventures/)による寄稿記事となります。
■本記事はトークンの利用を推奨するものではなく、あくまでテクノロジーの視点から、イノベーションが起きている現場をお伝えする情報発信の趣旨で制作しております。
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