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カンヌライオンズ2024金賞受賞 『No Smile(スマイルあげない)』をデコンする

こんにちは。今月のデコン会のテーマはカンヌ2024。つい先日受賞作品が決まったばかりのカンヌライオンズ2024をデコンします。今週はマクドナルドの『No Smile』をデコンしました。

まず課題として、スタッフ(クルー)が集まらないというのがあります。マクドナルドの売上自体は上がっていて好調なのですが、クルーの確保に苦しんでいると。特にマクドナルドのクルーはZ世代の若年層が多く、Z世代の確保が急務となっています。


メルカリもある時代に


今の時代、メルカリでモノを売ったり、クラウドワークスで仕事したり、Youtuberになったり、インフルエンサーになったりと、バイトしなくても稼げる方法がいろいろあります。もちろんYoutuberやインフルエンサーとして稼げる人は一握りなわけですが、それでも選択肢があるという事実が重要です。

「お客様は神様です」を勘違いした目に余るカスハラもあるなか、別の方法でお金が稼げるなら、やばい客の接客をしたくないと考えるのは当然かもしれません。スマホのカメラで撮って晒したりする悪質な客もいるとなると、昔はなかったリスクがあると言うこともできます。

昭和生まれの僕が高校生くらいの時は、僕も地元のバイトはマクドナルドかコンビニかファミレスくらいしかありませんでした。まだインターネットもなく、情報も少なかったので、「バイトはそんなもん」で済んでいました。

でも今は違います。選択肢もあるし、情報も得られる。比較されてしまうのは仕方ないのかもしれません。GoogleもSNSも本質は比較するメディアですからね。

昇進よりリモートワークを選ぶ


先日Dellがリモートワークをしている従業員に出社を求めて、「出社しないと昇進させない」と通知したにもかかわらず、昇進を捨てリモートワークを選んだ従業員が多かったというニュースがありました。

厳密に言うと、毎日出社を求めるものではなく、3ヶ月に39日以上、平均して週3日のオフィス出社を求める「ハイブリットワーク」というものです。このハイブリットワークが昇進の条件になったわけですが、それでもリモートワークを選んだ人が半分近くいたということです。

これもリモートワークという選択肢が生まれたからですよね。コロナ前はそんな選択肢はなかったわけで、仕事は出社するのが当たり前という常識がありました。嫌でも仕方ないと。でも出社しなくても仕事ができることがわかってしまい、リモートワークという選択肢が生まれれば、従来の出社スタイルと比較もされるし、どっちがいいかを天秤にかけられてしまいます。

笑顔の強要

元々人手不足だったのに加えて、働き方の選択肢が増えたこともあり、マクドナルドに限らず、多くの業界で人材確保に苦労しています。

マクドナルドの「スマイル0円」はマクドナルドが長く大事にしてきた姿勢ですが、これは「クルーは笑って当たり前」という圧力にも繋がります。

"笑顔の強要"とも取れるわけで、これは人材確保に際してマイナスな印象を与えてしまいます。なんとかこれをアップデートしなければいけません。

そこで彼らは大胆にも「笑わなくてもいい」を提案。

Z世代に絶大な人気を持つあのちゃんを起用した『スマイルあげない』のMVを作成。

実際に、過去アルバイトをしたときに、「笑顔を作りたくても作れなくて、声を出したくても出なくて、結局お客さんとケンカをしてしまい辞めてしまった」という経験を持つあのちゃんが作詞も担当しています(水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミ氏と共作)

無表情で難易度の高い振りをこなしつつ、「塩をふる」という言葉で締められているのがオシャレです。定番メニューのフライドポテトにかけて"塩対応の自由"を高らかに宣言します。

スマイルあげるかどうかは私が決める


もちろん笑いたいなら笑えばいいし、笑顔で働いた方が楽しいと感じる人もいるでしょう。でも強要はされたくない。ここにZ世代のインサイトが隠れています。

ドラマ『不適切にもほどがある』じゃないですが、昭和のおじさんがみたら

「仕事なんだから大変に決まってるだろ。仕事ってそういうもんだろ。甘ったれてるんじゃない!ケツバットだ!」

で終わりそうなもんですが、そんなこと言ってたらZ世代は集まらないんでしょうね。これはなかなか採用も大変だよなと思いますが、現場はなんとかしなければいけません。マクドナルドの求人ページからも必死さが伝わります。

あのちゃんをフィーチャーしたこのMVは、2023年6月21日の動画公開以降大きな反響を呼び、同年のクルー応募数が前年比115%(同社調べ)に達するなど、採用にも大きな役割を果たしました。

「俺たちの時は」と言いたい昭和のオジサンも沢山いるでしょうし、思うところもいろいろあると思いますが、採用を考える時は、現実は現実として受け止めなければいけないんだなと感じました。

逆に言えば、この時代に昭和のメンタリティーを持ったZ世代がいたらめちゃくちゃ重宝されるだろうなとも思います。

個人的には微塵も笑わない塩対応のクルーがいるマクドナルドがあれば行きたいですけどね(笑)。

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