読書感想:「スノウ・クラッシュ」:メタバースの語源となった小説
メタバース内に現れた新手のドラッグ「スノウ・クラッシュ」の謎を追う、ピザ配達人であり、凄腕ハッカーでもあり、日本刀を背負っている主人公。謎を追ううちに、とんでもなく大きな事件に巻き込まれ、マフィアや元カノやスケボー少女とともにその事件に立ち向かってゆく物語。
「メタバース」という言葉を初めて使った小説とのことで、その点に興味を惹かれて読んでみました。
「スノウ・クラッシュ」はこんな本
メタバースと現実の世界を行き来しながらの近未来SF冒険活劇です。最初から最後までノンストップで飛ばしまくりの走りっぱなしで、全く退屈することがありません。
アクションや勢いの面だけでなく、主人公の元カノが宗教についての持論を語るあたりから、この小説の知的な部分が濃く感じられてきて、その面白みに惹き込まれていきます。
物語の終盤で主人公が急にすべてを解説し始めるのが不自然で、小説というより娯楽映画みたいと思ってしまったのはご愛嬌。
メタバースを語りたい小説ではない?
この小説は、人類の文化、文明を語りたい小説であって、メタバースを語りたいわけじゃないと感じました。メタバースは単なる味付けか、舞台装置のひとつであって、別のなにかに置き換えても話しは成り立つし、主題はそこじゃないと思います。
よって、この小説を読んでも、メタバースの理解が深まるような気はしません。それよりも既存のメタバースと呼ばれているもの(批判的な言い方をすれば、ただ 3D 空間を模倣しただけの操作性も視認性も最悪なもの)の固定観念を強めるだけな気がします。
近未来冒険活劇としてオススメ
メタバースのなんたるかを知ろうという目的ではオススメしません。それより宗教や言語といった文化人類学的な側面のほうが主題で、そっち方面に興味があれば面白く読めると思います。
そして、近未来冒険活劇として最高に面白いです。
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