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読書感想:インスマスの影(クトゥルー神話傑作選)

私には刺激が強すぎました。

普段からよく夢を見る方、というか朝起きたときに見た夢をよく憶えている方なのですが、この本を読んでからしばらくは一晩に見る夢の数が尋常じゃない数になりました。夢の最中に「あ、これ夢だ」と気付き、ふと次の瞬間にはまた別の夢の中にいて「あ、夢だ」と思っている。そんなことを何度となく繰り返す、そんな夜が続きました。
ただ、見た夢の中に怖い夢、悪夢は一つもありませんでした。

この本、「怖い」という前にめちゃめちゃ想像力や好奇心が掻き立てられる本だったのです。

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ワクワクする(?)恐ろしさ

この本にはラヴクラフトの 7本の中短編が収められています。
ホラーであり、SF的でもあり、オカルトやサスペンスの要素もある。どの話も悪夢そのものでとても恐ろしい。

でも、読んでいてワクワクしてくるというか、好奇心を刺激するアイテムや生き物(生き物なのか?)、想像が膨らむ出来事やその描写にゾクゾクして早く続きが読みたくてたまらない、どの話も読んだ後に次から次へと想像が拡がってドキドキして怖いと同時にとても楽しい、そんな大興奮の本でした。

人間が理解も意思疎通もできない人智を超えた存在が出てきてこれが恐怖の対象になるわけですが、私にはこれが「ソラリスの海」の先取りのようにも思えて、とても SF的に感じられました。

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狂っているのはどっち?

何話か読んでいるうちに思ったのが「果たして狂ってるのはどっち…?」ということ。

狂っているのは主人公が対峙する対象の方か、それとも主人公自身が狂っているのか?主人公はどこで狂わされたのか?あるいは最初から狂っていたのか?世界が、宇宙がそもそも狂っているのか?それに気付いたとき人は狂気を感じる?

あれ(あの忌まわしいレコードや、ここに例示することさえ憚られるあの手紙、名状しがたい写真の数々、そしてあの…、ああ!あの…!)は実は最初から起きていなかったことなのでは?…などという視点で見るとまた違った面白さが感じられると思いました。

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固有名詞がいちいち魅力的

小説の中に出てくる地名や書物などの固有名詞、例えば「ネクロノミコン」「ミスカトニック大学」「ユッグゴトフ」「ニャルラトホテプ」「ヨグ・ソトホート」。これらはどれも聞いたことのない言葉ですが、不思議な魅力を感じます。

作者のラヴクラフトはアメリカ人で、小説は英語で書かれています。これらの名前も英語での発音の感覚で作られているはず。
日本人の私が、その発音に近いカタカナを当てたものを読んで魅力的と感じるというのも不思議な感じがします。
英語圏の人が読んだ時には私が感じているのとはまた違った感覚を覚えるのでしょうね。

これらの固有名詞、あんまり魅力的でこれも買っちゃいました。😆


読書感想とはちょっと違うけど最後に、「インスマスの影」にこんなセリフが出てきました。

『シナかどこかから持ち込まれた病気…』
『病気をめぐって暴動が起こり、ありとあらゆる恐ろしいことが行われた…』
『連中の気持ちの底にあるのはただの人種的偏見…』

これを読んで、このところの新型コロナウイルスをめぐる状況が重なりゾッとしました…


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