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読書感想:なぜかしっくりときた「日本人にとって美しさとは何か」

「アート」って何かしら?🤔 といつもなんとなく感じてるんですが、ボーッと考えてても埒が明かないので、ちょっと真面目に勉強を始めようと思ってこの本を手に取りました。
高階 秀爾さん著「日本人にとって美しさとは何か」

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どんな本?

美術史学者、美術評論家である高階 秀爾さんの講演の記録、美術展図録や新聞・雑誌等に掲載された文章、論文などで構成された本です。

日本と主に西欧それぞれの美に対する感じ方・捉え方の比較をしつつ、日本画、日本人作家による西洋画、詩句、日本の風習などの解説を交えて、日本人の感性を論じる内容です。

そう書くとなんだか専門的で難しい内容に感じられますがそういうことはなく、平易な言葉での説明でとてもわかり易く、ちょうど今の私の興味にも合致したからか、すごく面白く読めました。

特に興味を惹かれたのが、日本での絵と文字の共作。
西洋では絵と文字はまったく別の領域のもので交わることはなく、文字を書くとしたら空いているところに書く。ところが日本では平気で絵の上に文字を書く。しかし、その文字の配置・書き方の妙で絵と文字(書)が一つになり、両者一体で一つの作品として鑑賞される。
例:鶴下絵三十六歌仙和歌巻

描かないことで存在を暗示する「留守模様」、逆に無いものを敢えて描くことで不在を強く感じさせる否定の美学。
例:佐野渡蒔絵硯箱

他にも日本と西欧の表現上の差異は芸術に対する哲学の違い?
西欧では主体である画家を絶対として全てをその視点の下に従属させようとする。日本では客体である描かれる側が尊重され、それぞれの対象にふさわしい視点が採用される。

実体の美と状況の美、作品の解釈は一つの創造行為でもありうるという話などが特に興味深かったです。

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なんだか妙にしっくりくる

『1970年代、日本では工業用ロボットにリボンをつけて「百恵ちゃん」などと名前で呼び、機械の調子が悪いときは「今日は百恵ちゃんは機嫌が悪い」などと言っていた。』という話は実に自然なことに感じられ、『同じ頃西欧では機械が人間の代わりをすることへの嫌悪感が問題となり工場へのロボットの導入が進まず困っていた』という話が不思議に感じられる。

その他にも日本人の感覚について述べた様々な箇所が読んでいて実にしっくりくるというか、実感として理解できる感じ。でもなぜそんなにしっくりくるのかがわからないのが不思議でした。

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作品作りにも活かしたい

先に例で出した尾形光琳の「佐野渡蒔絵硯箱」、これは画題の和歌を知っていて初めて描かれた絵の裏で表現されていることを味わえるという凝った美的表現だそう。
伊勢物語「八橋」を題材とした琳派の作品群は「唐衣」の和歌を知っていて「留守模様」の概念を持っていれば『なるほど!』とより楽しめるらしい…
作品を楽しむ上での教養の大切さも学びました。

これからいろんな絵画や詩句、庭園など様々な作品を見るときの視点も拡がりました。
自分のクリエイティブ・コーディングの作品作りでもこの視点を意識してみようと思います。💪


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