見出し画像

失くした耳が鮮明に聴こえる。

お昼に片耳を失った。


今日は世間的にはお休みの人が多いかもしれないが、私は出勤だった。案の定オフィスには自分1人である。
一見すると孤独な休日出勤、、といった虚しさを感じるが、1人で好き勝手広い部屋を使えるので案外悪くないのである。数日ぶりによく冷える日だったので(朝には濡れ雪が見られた)、暖房の設定温度をぐんと上げて、それから好きな音楽をかけて歌いながら作業を行った。
自宅のようにふんぞり返って働く。

その後昼食を取ろうとエレベーターに乗ろうとした時。
扉が開いたと同時に手から滑り落ちた、ワイヤレスイヤホンの右耳。あっという間に転がって真っ暗な闇に吸い込まれていった。
エレベーターとオフィスの隙間を覗く。見える訳が無い。

割と大きめなショックを受けたが、なくなったモノに執着していない自分がいる。
形あるものはいずれ無くなるから、それが予期していたのより少し早まっただけだ。最近はノイズキャンセリングを盾にして外出している間もずっと考え事をしてほぼ無意識で歩いていたから、「お前はもっと現実を注視して生きなさい」という勧告かもしれない。誰からかは知らないけど。

しかしながら、このノイズキャンセリングには日々とても助けられている。いかんせん人混みや都会が嫌いな性質なので、外界を遮断できるこれによってかろうじて生き永らえてたといっても過言ではない。故意的に音を止めて、耳から入る負のエネルギーを塞いでいた。

それがしばらくはないのかあ、不安だなあ、と思う。大丈夫かなあと心配になる。

まあなんとかなるか、とは考えている。

そのイヤホンは片方だけの購入もできるらしく、ネットで調べてみる。片耳だけで14,000円。思わず二度見。
なるとかなるで片付けていいのか自分?もっと悔やんだ方が良いんじゃないか??と1人ツッコミが入ったところで考えてもしょうがないし終わろう。

明日になって、いつも通りイヤホンケースを開いたらいつの間にか右耳が帰ってきていますように。

夢でも良いよ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?