熱は刹那に氷となる
世の中には情報媒体が多すぎる。新聞、雑誌、SNSアプリ、どれだけ自らが断とうとしても街中を歩いていたり電車を乗ってるだけで耳に入ってきてしまうことも少ないくない。
手軽に様々なものを見聞き出来ることはとても素晴らしいことだが、時として軽率な仇となる場合もある。
とても好きな作品があったんだ。実家を離れて以来漫画作品にほとんど触れることのない生活を送っていた自分が、再びその分野に立ち戻るきっかけになった作品だ。
暇潰しにアニメを見始めたのを皮切りにハマりだし、漫画を全巻買って、緻密な舞台設定と話の構成に毎度嘆声を漏らしながら繰り返し読んだ。出勤帰宅時間にはアニメのサウンドトラックをヘビーローテンションさせ、関連するラジオを聴いたりグッズ欲しさに東奔西走するほどのオタクっぷりだった。
まだ完結していない作品なので、新刊発売を楽しみに日々を過ごしていた。とても幸せだった。
ただ一つの懸念点は世間一般も同じように熱狂していたことだった。
私はその作品が週刊連載している雑誌は読んでいなかったので、ネタバレを防ぐためにTwitterや YouTubeなど事故が起こり得るものは頑なに拒んでいた。公式が出す情報だけに努めて専念していた。
それでも不幸は突然襲ってくるものである。
「ちょっと、今週のジャンプ見た!??」
それを言われたが途端に様々な憶測が脳内を荒らす。考えるのを止めようとするほどより思考回路が活発になる。話の詳細を聞かずともある結末に辿り着く。残念ながら勘は悪い方ではない。
そして瞬く間にその作品への興味が薄れていった。勢いよく燃えていた線香花火の火の元が少しの揺れで呆気なく地面へ吸い込まれていくように、音を立てずに消えていった。それと同時にじめじめとした失望が身体を覆っていく。
作品への愛は変わらず存在している。話の展開にもなんら不満はない。ただ、罠と知りながらあえてそこに進んでいくような、大衆がちやほやするのに乗じて自分もその塊の一部になるというのがひどく幼稚でつまらないものに感じてしまって読みかけの新刊に栞も挟まずにそっと閉じた。
もう今後一切未完結のそれでいて流行りそうな作品に手を出すのは止めようと人知れず心に誓った。
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