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人手不足解消・採用成功ために

どの業界も人手不足な状態ですね。
その中でも特に介護業界は深刻な問題となっています。

介護業界は、各一般企業が抱える「人手が足りなくて利益が伸びない」といった企業毎の問題だけではなく、社会全体として「介護希望者に対して提供が追い付かない」という点が課題である。この課題を解消するためには、従来の採用活動というシンプルな枠にとらわれない総合的なアプローチが求められます。



採用に対するアプローチ

従来の枠にとらわれない総合的なアプローチと書きましたが、何も大きな改革は必要ありません。これまで私がデザイン経営を通して語ってきたプロセスを振り返りながら採用シーンに当てはめていきます。

まず第一に、採用を単独で考えてはいけません。
採用を単独で考えた時、予算を組んで人を配置して、露出を増やして応募数を増やす。もしくは人材紹介会社へ登録する。それが一番手っ取り早く思いつき、簡単な方法ではないでしょうか。
しかしこれだけでは、一時的な人材確保には繋がるものの採用コストだけが大きくなり、採用成功へ繋がるとはいえません。

採用成功の定義ですが、人が増えたからゴールではないですね。
採用した人が社内風土を理解し、適応し、自立して継続的に利益を生み出せるようになってようやく成功と言えるでしょう。

そんな理想のゴールのために、採用を単独で考えず、採用を企業の利益構造を作り上げる一つの要素として捉え、目指すべき採用の在り方について考える必要があります。



企業風土の浸透を考える

これまでに何度もお伝えしてきた「コンセプト」の話ですね。
コンセプトと企業風土。似た様なイメージですが簡単に両者を切り分けると、コンセプトは企業が目指す未来の姿や存在理由を示すもの。企業風土はその浸透具合といったところでしょうか。

新規採用にあたって、この浸透具合が非常に重要です。
これまでの記事では、コンセプトを内外共に広く伝えていく事が重要だと書いてきました。今度はそれが如何に根付いているかという点に着目して考えていきます。

既存の従業員においては、これまで同じ時間を共に過ごし、あらゆるトラブルを共に乗り越えて目的に向かって行動してきた事で、「明確な言葉にはしていないけど伝わっている事」が多くあるでしょう。
一方で新規採用者には、その「暗黙の了解」は通用しません。
新規採用者には、企業が明確に言葉にしたものや、これまで取り組みとして行ってきたことや、ルール化されていることのみが伝わります。「別に決まり事ってわけじゃないけど、うちはこうやってるんだよね」といったふんわりとした概念を伝えていくには時間がかかります。

採用シーンにおいて、この「ふんわりとした概念」が新規従業員に伝わる速度が非常に重要です。何故なら、「企業風土」と「従業員の理想とする働き方」のギャップは従業員の働き甲斐や働き易さに影響し、それは直接的なモチベーションを左右したり離職の検討に繋がるからです。



長期的な働き方を実現する

採用した人が社内風土を理解し、適応し、自立して継続的に利益を生み出せるようになるためには、ある程度の時間が必要です。自立して継続的に利益を生み出せるようになった黒字社員には、その後も社内で自走し続けてもらう事が重要です。
そのためには、黒字社員が給料アップや働き方の変化を望み転職を検討するような会社ではなく、社内で更にポジションを固めて貢献したいと思う会社や仕組みを作る必要があります。
そのためには、短期的な採用を繰り返すのではなく、長期的な従業員の育成を目指すべきだと考えます。

一般的には皆、働き方の理想として「給料・やりがい・働きやすさ」といった理解し易いものを判断基準として口にしますが、実際は企業コンセプトとのギャップの少なさこそが重要だと私は考えています。

「日々のやりがいはあるか」「毎日が楽しいか」「毎月の給料が満足か」といった基準は仕事と生活を両立して良い人生を送るためには非常に重要ではあるが、やはり人間は、大きな目的に向かって進んでいるという全体像が見えなければ長期的なやりがいを感じにくい。

「全体像を見て仕事をする」とは例えば、

建築現場の作業員:
一:
「私は単に建物を建てている。」
二: 「私は人々の夢を形にしている。」
三: 「私は未来のコミュニティを築いている。」
料理人:
一:
「私は単に食べ物を調理している。」
二: 「私は人々に美味しい料理を提供して、彼らの日常を特別なものにしている。」
三: 「私は人と人を結ぶ、共感のある食の体験を創り出している。」
教育機関の教員:
一:
「私は単に知識を伝えている。」
二: 「私は生徒たちに未来のリーダーシップの素養を提供している。」
三: 「私は変革を生み出す可能性を秘めた若いマインドを育てている。」

といった具合に、目先の作業を淡々とこなすだけではやりがいを感じ難いが、長期的な明るい未来に対しての労働であることを認識すると、人は驚くほど意欲的になる。

この理想とする未来は人によってそれぞれ違うが、共に働く上でその差が小さければ小さいほど良い。つまり、「企業風土」と「従業員の理想とする働き方」が近ければ近いほど良い。
さらに言えば、働き始める段階ではまだ離れていたとしても、入社後、企業風土に共感してもらうための時間が短ければ短いほど良い。

なぜなら、「従業員の理想とする働き方」が「企業風土」と違うと感じた瞬間が離職に繋がるシーンだから。企業風土の浸透に1年かかるのであれば、1年後にギャップを感じた従業員は離職するかもしれない。それが半年になり、1ヶ月になり、ついには0になった時、離職者数は少なくなるだろう。
0になる時とは、内外共に示して来たコンセプトが非常に洗練された状態で伝わる事で、入社前の人材がすでに企業風土を理解している状態の事を意味します。

私はこれまでの記事でコンセプトの重要性を書いてきましたが、この採用シーンにおいてもまた、コンセプトの設計と浸透が重要だといえます。

どんな人材を採用して、どんな会社にしていきたいかを考え、共有する。
その上でようやく企業風土に基づいた人材育成が始まるわけであって、単なる作業指示は人材育成ではない。

コンセプトも企業風土もない状態で無暗に人数を増やしても、反って無目的な人間が増えるだけで、企業成長にとっては逆効果といえる。(スポットでの対応などではその限りではないが、その場合でも可能な限りギャップを0にしておきたい。)



経営と運営を分離する

企業風土を作り上げるためには、経営と運営を分離する必要があるだろう。
分離といっても難しい話ではなく、代表者が運営から手を引いて、経営に専念するという事です。

自ら会社を立ち上げた経営者は多くの場合、ある程度業界経験も長くそれなりの応用知識があるため、即戦力にならない新人を採用し教育する事に時間を使うよりも、自分で動いた方が目先の利益が大きくなります。
そのうえ採用活動に力を入れ始めるとお金も時間も必要となり、目先の利益は減っていきます。目の前の事だけを考え続けると、経営者自らが先頭に立ち、直接動いた方が良いと考える気持ちも分かります。

しかしその選択を続けた結果どうなるか、少し想像すれば分かるでしょう。
社内の人材は育つことなく、企業風土もなく、次世代の戦力もいない状態。そして気づいたら自転車操業状態となり、もう新たな手を打つ余裕はない。
新たな手とは採用に限らず、あらゆる事を始める時間も、お金も、心の余裕もない状態となる。そうして逆転の一撃を発動する事もなく終わりを迎えるでしょう。

だからこそ、経営とは追い詰められてから戦略を考えるのではなく、余力があるうちにあらゆる対策を練っておく必要がある。
今まだ余裕があるのなら、採用に力を入れるべきだ。そして有能な人材が3人4人と入社してくると、自分ひとりで頑張り続けるよりも、継続的に大きな利益を生み出すことは明確だろう。
その状態を目指し、努力をしない限り、偶然良い人材が入社して意欲的に働いてくれることは殆ど期待できない。むしろ今いる黒字社員さえ離れていってしまうだろう。



その他

これから具体的な採用方法やその管理についてまだまだ色々と書きたいと思ったがこの前半で想像以上に長くなったのでひとまず本記事はここまでとしたい。
キャッシュフロー管理を行い、採用にかかる費用の算出と余剰資金の確認、採用後から黒字社員になるまでの期間の見積もりなど考える事は多くあるが、ひとまずそれらの前に企業風土を作り上げることが先決ではないかと思います。



人手不在時代に備える

これは余談です。

いまは人手不足時代だと言われますが、もうすぐ人手不在時代がくるでしょう。
そんな状態で闇雲に給料を上げ、他社と人材の奪い合いになるのは業界として本末転倒だと考えています。
自社の事だけを考えるなら、他社から奪い、囲い込むのも良いですが、これからはもっと様々な働き方を提案していき、業界外部からの人手を確保していく必要がありそうです。

そのためにはそれぞれの地元で独自のコミュニティを形成する必要があり、私はその運用を課題に様々な取り組みに挑戦しています。
今は順調に行けば会社が成長するだろうという計画を立てて頑張っていますが、今後何が起こるか分かりません。
震災、法改正、社会構造の変化、様々な要素が絡まり合い、この仕事自体が消滅する可能性すら考えています。
そうなった時にすぐに舵を切り、社員全員を切り捨てる事なく生き延びる方法を模索したいと思っています。
業界に囚われる事なく新しい考えを共有できたら最高だと思いますので、興味がありましたらお声かけください。

サポートは不要です。お気持ちのみ受け取ります、ありがとうございます。