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サッカースクールの負のサイクル

先日、こういうツイートをしました。

勿論、全てのクラブやサッカースクールがそうではないし、関東ではサッカー指導者という職業の価値を上げるべく指導の質に拘り、それに見合った月会費を設定している所も増えていると聞きます。個人的にこれは物凄く良い事だと思っています。

ただ、私が住む関西ではそういったクラブはまだあまり耳にしません。私も会員が50人程の小さなサッカースクールを経営して3年になりますが、実際に経営をしてみて感じた事を率直に書いていこうと思います。

現状、30代からは食べていけない

これだけで見れば語弊があるが、どうしてこういった状態が起こってしまうのか。なぜ30代を境に離職者が増えていくのか。

上記のツイートの様に30歳というのは人生の大きなポイントになる事が多い。多くの人は(特に女性は)結婚や家族を持つ事を強く意識する年齢だ。周りの友人が次第に結婚していき、親からも少なからず結婚について聞かれる事も増える。同世代の彼女(正に僕がそうだった)がいれば、比較的、出産を考えて結婚を先に意識し出す彼女からのプレッシャーもあるだろう。

ではどうして家族を持つと食べていけなくなるのだろうか。

例えばある大手サッカースクールで正社員として働いているA君がいたとしよう。彼はまだ20代前半で、正社員としてボーナスは出ないが毎月手取りで20万円を超える額を貰っている。

20代前半だと余裕で暮らしていける。むしろ他の同世代の友人と比べてもかなり良い方かもしれない。恐らくあと数年は好きな事を仕事にしながらある程度の収入も得て満足感のある生活が出来るだろう。

20代前半や中盤でこれくらいの給与ベースだと何の問題もないが、この額がほぼ変わらず推移したまま30代を迎えると皆さんはどう感じるだろうか。多少の上積みはあったとしても年収がギリギリ300万に届くかどうか。この頃には同年代の彼女が出来て、結婚の話が出てくるとなると一気に現実を突きつけられてしまう。

結婚するとなると、引越し、新居準備に婚約指輪、結婚式までしたら貯めていたお金はすぐに吹き飛ぶ。更に子どもを作るとなるとまた広い家が必要になったり、それに比例して家賃は上がり、子どもの出産費、子育て費用とドンドン出費は増えていく。

車は?新築の家?お金はいくらあっても足りない。

ツイッターで挙げた2人も同じ様な事を話していた。他人とは比べないとは言っても普通に過ごしていれば嫌でも比較してしまう。月収換算だとまだ30代前後ならそこまで差がないかもしれない。ただボーナスが貰える職業に就く彼らとは一気に年収で差がついてしまう。30歳前後で役職に就く友人や1000万近く稼ぐバリバリの営業マンも周りに1人や2人出てくる年齢だろう。

自分と同じ世界にいる先輩達がどの様な道を辿って、どの様な生活レベルなのかを参考指標としてしっかり見ておく事も大切だ。

ではなぜ給料が上がらないのか

問題はここ。給料やボーナスが他の業種と同じ様に出る仕組みにすれば良いじゃないか!でも現状はそんな簡単なものではない。

それが難しい大きな理由に、指導者1人が見れる子どもの数がある程度決まってしまっている事。どんなに凄い指導者も1人で100人は見れない。指導者をした事がある方なら分かると思うが、20人を1人で見ててもやはり全員に質の高い指導をするのは難しい。

小学生のサッカースクールの月謝平均は都市部だと5000円から7000円が多い。10000円取ってる所はほとんど見当たらない。中学生のクラブチームでも10000円から13000円が相場で15000円取ると高いと言われる分類に入る。

例えば100人の会員がいる月謝7000円のサッカースクールがあったとして、単純に売り上げは月に70万円となる。私設のフットサルコートをレンタルして使っていれば、これくらいの規模だとどれだけ安くても20万以上はコート代に消えてしまうだろう。残るのは50万円。100人の会員がいるサッカースクールを3人のコーチで回したとしても1人当たり約16万円しか貰えない。これがもし、私設フットサル場ではなく、場所代がほぼ無料な公共施設を使用できるとしても1人当たり23万円。夏合宿や4月に年会費などの臨時ボーナスがあったとしても、備品の買い替えやウェブサイトの管理費の為にストックして置きたいので、それが大きなボーナス支給には繋がらないのが現実だろう。更に社会保険や年金、各種税金を引かれると手取りは20万円を切ってしまう。

スクールオーナーが少し多めの給料を貰ったら、雇われているコーチは手取りがさらに下がる事になる。

ここで再びこのツイートに戻る。

だから30代直前で辞める。20代前半で指導者として一生食べていくと決意し、数十万円を費やして指導者のB級ライセンスまで取得したのに。辞めたら当然クラブやスクールはまた新しい若いコーチを雇う。

当然、指導の質はまた逆戻り。

指導者の平均レベルはいつまで経っても上がっていかない。

この現象はカテゴリーが下がる程多く見られる。だから優秀な指導者は小学生や幼稚園を指導したがらない。大変で手の掛かる上に儲からないから。生活していけないから。家族を養えないから。

新しいサッカースクールの形

ではどんな解決策があるのだろうか。現状は国からの助成金(可能性はかなり低い)か月謝の値段を上げるしかない。文頭にも書いたがこれを実行しているクラブは関東にいくつかあると聞くのでこの動きが全国に広がっていくのが一番現実的な解決策なのかもしれない。

だが、まだあるとすればサッカースクールやサッカークラブを単体ビジネスとして経営せずに、大きな企業の1事業にしてしまう事。例えば、いくつか私立幼稚園や養護施設を運営している企業が、サッカースクールと手を組んでサッカースクールを展開していく。幼稚園や養護施設は既に運動場などを所有している所も多いので、夕方以降はサッカースクールの運営で運動場を開放し、日中はサッカースクールのコーチをその企業が運営している幼稚園に巡回サッカー(スポーツクラスでも良い)クラスなどを作って幼稚園児に指導する形を作れば、人件費以上の利益を生み出す事は可能だと思う。

これは一つの一例に過ぎないが、サッカーの指導者を出来るだけ長く続けたいと言う指導者のニーズと、その場所や機会を上手く創り出すハード面を持った企業がWINWINになる様な事業が作り出せると感じている。

指導者としての働き方の一例

最後に、これは私自身の一例で、多くの人の参考になるか分かりませんが、今どの様に指導者をしながら生活しているのかを書いていきます。

前述した通り、現状は50人規模のサッカースクールを経営しています。同時に指導もメインで行っていて、週3-4回は指導現場に立っているのですが、実はもう一つ仕事をしています。

日中は外資系の企業に勤めているのです。なぜ外資にしたのかと言うと、兼業が出来る可能性が高いからです。既に、仕事を探す時にはサッカースクールを始めていたので、このサッカースクールでの仕事に支障がない様に兼業を認めてくれる企業にどうしても就職したかったので、働き始めから兼業を認めてくれる事が少ない日系企業は諦め、外資系企業に絞って転職活動をしました。

今は月から金まで9時出勤・17時退勤の仕事で、平日の2日間は、仕事の後の夕方18時からサッカースクールで指導して、土日にも練習や試合の活動を入れながらサッカースクールを運営しています。

この働き方が良いかは分かりません。丸一日休みがない週も多々あるので、余程理解のある方と結婚しない限りずっと継続するのは難しいかもしれませんが、好きな事を継続出来る現状に自分自身は満足しています。

ただ、私も兼業になるとは数年前までは思っていませんでした。サッカースクールを始めて3年で毎年色んなピンチが訪れる中で、その瞬間その瞬間のベストな選択(恐らくベストだったはず)をして来た結果が今の兼業と言う形になります。

雇われて指導者をやるのも、自分がオーナーになってスクールやクラブを経営していく事も簡単では決してないですが、その経験の中で信念を持って諦めず、沢山の良い指導者の方が1年でも長く指導現場に残って子ども達の指導に携わって欲しいと思い今回書く事にしました。

あくまで僕自身の見解であり、実体験の部分も多いので皆さんの地域には当てはまらないかもしれませんが、そう言った点もご理解の上で読んで頂ければ幸いです。


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