デジタルで年調を提出!SmartHRで「俺の年末調整」を開催した話

こんにちは。アクセシビリティエンジニアの辻勝利です。
SmartHR社内のSlackでは「maverick」と名乗っていますが、実はまだ「マーベリックさん」と呼ばれたことはほとんどありません。気軽に呼んでくださいね。

9月にSmartHRに入社してから毎月1回、同僚のおうじさん、ますぴーさんといっしょに、社内向けにSmartHRの様々な機能をスクリーン・リーダーを使って操作する様子を配信するイベント、「俺の」シリーズを実施しています。

これまで実施した「俺の入社手続き」、「俺の雇用契約」に引き続き、今回は「俺の年末調整」というテーマでデモンストレーションを実施しましたので、その様子を紹介しますね。


そもそも「俺の」って?

「俺の」シリーズは、視覚障害の当事者(全盲)であり、光学ディスプレイを通した視覚情報に頼らずに普段の業務を行っている僕が、視覚障害者が自分たちの製品を使っている様子を見てみたいと考えている社内の方に向けて、スクリーン・リーダーを使ってSmartHRの機能を利用する様子を見てもらうことで、アクセシビリティ向上がどのように利用者にとって有益なのかを知っていただくきっかけにしたいと思って始めたマンスリーイベントです。


「視覚情報を使わずにウェブを操作するってどういうこと?」といった疑問はもちろん、今後のインクルーシブな製品開発のヒントについてもお答えできるようなカジュアルなイベントを目指しており、少しずつでもSmartHR全社のアクセシビリティへの配慮・理解を深め、多くの人を助ける製品提供ができるような会社作りを目指しています。


イベントではZoomを使って僕のPCの画面とスクリーン・リーダーの読み上げ音声を共有してデモを行っています。
スクリーン・リーダーが読み上げた内容はNVDAのスピーチビューアーに表示させたテキストをみてもらっているので、僕も気兼ねなく普段通りの読み上げ速度でデモを行っています。


デモで気になった点や質問はSlackのスレッドに書き込んでもらい、おうじさんやますぴーさんに気になるものをピックアップしてもらってお答えしながら約1時間のイベントを進めています。

製品開発に関わっている人だけでなく、社内の様々な職種の方が参加してくれていて、SmartHRをより多くの人に届けたいという皆さんの熱量を感じることができるイベントです。


今回の検証環境

今回もZoomを使って僕の画面を共有し、以下のような環境でデモを行いました。


Windows 10 Pro 2021H1
NVDA 2021.2jp
Chrome 95.0.4638.69


※それぞれのリンク先からは更新バージョンが入手できるかもしれません


みつかった問題点

今回使用した「年末調整」の機能は、実は僕が最初に使ったSmartHRの機能なんです。
前職で「今年から年末調整をオンラインで提出できるようになりました」と聞いて、ちょっとわくわくしたのを覚えています。


それまで僕は、年末調整の手続きに毎年右往左往していました。
書類を記入したり必要な添付書類を探したりと、紙に書かれた点字ではない文字情報を独力では簡単に処理できない僕にとってはちょっと憂鬱な年末の恒例行事でした。

「もしこの書類をコンピューターを使って自分で作成できたら、自分で資料をじっくり読んで、内容をしっかり把握した上で処理ができるのにな。」とよく考えていました。

そんな年末調整のデジタル化は、自分自身で書類の内容を読んで理解して記入できるようになった僕にとっても、僕の代筆のために時間を取られていた同僚にとってもとても画期的な出来事だったのです。

SmartHRが導入された当時からそれほど大きな問題もなく提出ができていた年末調整でしたが、もっと改善することでより使いやすくなると考えていたので、今回はそれをデモで紹介しました。


まず、各ページの質問項目の先頭がわかりにくい点です。
SmartHRの年末調整はアンケートに回答することで手続きを進めていくことができるのですが、現状は質問の開始位置をスクリーン・リーダーを使って簡単に探すことができないため、ページが切り替わるたびに先頭から読み上げて質問を探すしかありません。


質問の先頭に見出しを置く、質問の先頭にフォーカスが当たるようにするなど、スクリーン・リーダーで開始位置がわかるトリガーがあるともっとスムーズに回答できるようになりそうです。


次に気になったのが障害者手帳の交付年月日を入力するカレンダーのところにある「close」というボタン。
僕はてっきり、これが表示されているカレンダーを閉じるボタンだと思って押したところ、実はこれが手動で入力した交付年月日のテキストフィールドの情報をクリアするボタンでした。
この部分、参加者の皆さんにもしっかり見ていただいたので来年の年末調整では改善してもらえるのではないかと期待しています。


これに関連して、障害者手帳に書かれている情報は紙に印刷されたものなので、手帳を利用している僕自身は交付年月日などの詳細情報を読んだことがないという点も皆さんがびっくりされていた点でした。
よく考えてみると、僕自身に関することなのに僕自身が内容をちゃんと把握できない形で情報が提供されるのって、「社会の非合理」ですよね。


同じような問題は紙の源泉徴収票でも起こります。
手元に源泉徴収票があっても、僕はその内容を独力で知ることができないので、とくに転職した今年は給料の情報を入力するのが大変でした。


年末調整は提出できたのか

いろいろ話しながらデモを進めていったため、今回は年末調整を提出するところまでを参加者の皆さんに見てもらうことができませんでした。

でも、これとは別に僕は自分自身の年末調整の手続きをSmartHRを使って完了しているので、スクリーン・リーダーの利用者もなんとか手続きを完了できることは確認済みです。


来年は、もっとアクセシブルになった年末調整の手続きを全ての働く人たちに届けられるよう、社内の皆さんといっしょに改善を進めていきたいなと思いました。

来月の「俺の」シリーズもどうぞお楽しみに!!

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