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医学部予備コースについて(通年・短期集中)/ハンガリー国立デブレツェン大学医学部医学科

こちらは新入生向けに書いた資料を再編しました。(英単語・略語が入り混じってルーO柴みたいになってるのはその所為です)(こちらでは当たり前すぎて直しにくいのもあり、話が通る程度ならばそのままにしました。ご了承ください)

デブレツェン大学医学部予備コースについての説明です。
(セゲド予備コース、センメルワイス・ペーチ予備ことマカダニエルカレッジはまた別の仕組みやルールなどがあります。)

予備コースとは?

1年生(本コース)にすぐに進学するには英語・理科の知識が不安、入学前に英語で勉強するのに慣れたい方などが対象です。

通年のコース(通称Long BMC)、半年の短期集中予備コース(通称Short BMC)の2種類あります。

デブレツェン大学のBMCでは物理・化学・生物を学びます。(Longのみ2学期からハンガリー語あり)

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授業はLecture(上でいうと緑)、Seminor(赤)の2種類あります。
Lectureは集団授業です。出欠は取らないので参加するか否かは個人の自由です。
Seminorは少人数(20人弱)での授業です。ディスカッション形式で、Lectureで抱いた疑問点などをここで質問出来ます。出欠を取るので、相当な事情でもない限り休めません。あまりに休みすぎると成績が良くても期末試験が免除(通称exemption)にならなかったり退学になったりします。

授業はスライドや電子黒板を使って行われます。授業で使われたスライドは授業後に各教科のHPからDL出来ます。


※エグゼンプションexemptionとは?
中間テスト(通称SCT,Self Control Test)が各教科LongBMCは8回、ShortBMCは6回あります。
・LongBMCは8回中6回(ShortBMCは6回中5回)の平均点が75%を超える
・Seminorの欠席が1タームにつき4回以下(Shortは7回)
・全試験にて40点以下を取らない
だと期末テスト(通称Final Exam)が免除されます!
(もっと細かいルールはBULLETIN参照←registrationの時にEducational Officeで貰える大学のルールブックみたいなもの)


授業は1コマ約1時間半、先生の気分によって早く終わったり延長したりします。
大体1日2~3コマです。
朝早い日は8:00から、夜遅い日は18:00まであることも。


各教科どんな勉強をするの?


Physics(物理)

日本の高校物理と大体同じですが、原子物理など日本の受験範囲外のこともやります。問われるレベルは高くないし、計算力が求められることはありません。その公式を本当に理解しているか、説明・応用出来るか、というようなところをはかるような試験です。

テストはだいたいdifinition記述(10~20点)+大問約5問(各問10~20点)からなります。
教科書はSerway,Vuille:College Physics 9th edition
(電子版と紙版で問題番号の振られ方が違います。そして教科書の巻末には奇数番号、解説集には偶数番号しかのってないという不親切極まりない本です…。ご注意ください!)
テストに出る問題は簡単です。(日本で言う教科書例題レベル)
ほどんどセミナーでやった問題から出るのですが、本質がわかってないと取れないような問題も出るので、章のはじめの説明は読み込んでおいたほうが良いです。
またたまに(普段授業してない先生が作ったのか?)セミナーでやった問題が全然出なくて一同騒然としたりするので、時間があるなら念のために範囲内の例題だけザッとやっとくと安心です。

日本とは違ってここは解き方が合っていたら計算が間違っていてもがっつり点を貰えたりします。
結構採点間違いも多いので、自分の答案を見に行けるチャンスがあるなら必ず行ったほうが良いです。(30点近く上がったりする)
既習者は楽勝、未習者にはキツイ科目だと思います。


物理やったことない!って人は、時間がある時に日本でよく売っているような要点が上手くまとまっている薄い問題集とかをやっておくと良いかもしれません。後半になるとガッツリ原子物理などもします。(1年のBioPhysicsという教科でさらに細かく習います)


近年はカンニング対策のため1回の試験でも問題用紙が5パターンあるようなことも……よって問題用紙によって点の取りやすさに差が出たりします。が、点数調整などは行われません。平均点の開示などもありません。勉強してたら取れるでしょ、ってスタンスのdepartmentです。割とsevere&unfair...


Chemistry(化学)

教科書はMcMurry,Fay:Chemistry 6th editionErdodi(これも巻末には偶数番号の解答しかありません。)、有機分野は大学オリジナルテキストがあります。


BMC1年間(ShortBMCは25週間)のうち前期が理論、後期が有機化学(教科書Csortos:Organic Chemistry for Premedical Students)です。
テストは選択問題が24題×1.5点=36点、記述問題が14点の合計50点満点です。
難易度は教科書例題~センター試験レベルだと思います。問われ方は難しくないのですが扱う内容が結構専門的です。
既習者にとっては理論分野はそれほどしんどくもないようですが、日本とちょっと情報の優先順序が違ったりするので丁寧に再処理再構築する必要はあると思います。あと日本のように問題集とかが無いので、知識の整理や抜けの確認をするのが難しいです。
理論分野ではspd軌道や原子物理の話、有機分野でもかなり詳しく大学で習うような範囲を扱ったりもします。
記述問題(丁寧に単位そろえて計算だとか構造式反応式書くとか)でしっかりとるのが高得点への近道だと思われます。


Biology(生物)

1番しんどい全員がゲロゲロ言ってる科目です。
教科書はSadava,Hills,Heller,Berenbaum:Life 10th edition(25000Ftくらい?)
前半は細胞生物学、後半は人体についてやります。授業をしたり問題を作るdepartment(日本で言う研究室的な)によってテスト対策の仕方が異なります。
前半 細胞生物学 by Genetics Department

テストは選択問題が23問くらい?×1点と記述問題が約10点分の33点満点くらい?(テストによって違う)です。
過去問はあまり役に立ちません。化学と同じような感じでスライドだけ勉強すると半分も取れません。
重箱の隅をつつくような質問をしてきます。近年は記述の割合が増えて点が取りやすくなったようです。(選択問題の方が難しい)
まだ英語慣れしてない時にこの内容をこの深さでやるのはめちゃくちゃしんどいです…

ちなみにこの教科書のみ『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書』という日本語版があります。(学ぶ内容は第1・2・3巻にあたります)
あるととっても助かるので、英語に自信が無い人は持参するのをすすめます。


後半 人体 By Physiological & Anatomy Department

テストは選択問題が約27問、記述が約11問の38点満点です。(これもテストによる)
前半と全然勉強の仕方が違うのでびっくりすると思うのですが、比較的忙しいdepartmentで、BMCなんか構ってられんわとのことで過去問丸ままテストに出してくれたりします✌
前半戦に比べたら内容的にもテスト的にもグッと楽になります。取り扱う内容はベーシックな生理学が中心です。

日本語の教科書ではこちらの1冊が凄く良いです。日本の医学生の所持率も高いはず?
少し値段は張りますが、解剖・組織・発生・生理学と凄くよくまとまっていて、予備コース〜2年終わりまでと長く使えます。勿論それ以降ふと確認したい時にも。最新版は本を買えば一緒に電子版も付いてくるので、凄くお得だと思います。



End of semester Exam&Final Exam

(3/11 加筆)

End Semester Exam、通称エンドセメは(LongBMCのみですが)1学期(前期)の期末テストのようなものです 。1学期中各教科4回あるテストのうち3回分の平均が75%を超えるとexemptionが取れます。取れなか った教科は期末テストを受けなければなりません。エンドセメはAチャンスBチャンスCチャンスと各教科 最高3回受けられます。ABは筆記ですがCは筆記+oralです。リピーター(BMC2年目の人)の人以外はこの テストをパスしなくても良いのですが、パスしなければその瞬間に2学期どんなに成績が良くても Exemptionは取れません。


Final Examは2学期(後期)末にある期末試験です。
Exemptionを取るための条件は“前期後期にある試験合計8回中6回のテストの平均が75%↑×各セメスターの欠席が4回以下×エンドセメをパスor examptionとってる×8回の試験で1度も40点以下を取ったことがない”です。

出題範囲は1年間で習ったこと全範囲。エンドセメと同じくAチャンスBチャンスCチャンスと 各教科最高3回受けられます。ABは筆記、Cは筆記+oral 1教科でも落とすと1年生になれません
期末テストの点数+(期末テストの点×ボーナス%)が60点を超えていたらpassです。ボーナス%は人によ って違います...というのもこれはSCTの平均点で決まります。だから普段から頑張っていて全く損はないです。


Exemption取れているのは各教科大体学年の15~25%ほど、全教科取れている人は10%くらいでした。(※2015年のshort BMCの話です)他国の人と話していても、全教科取っている人は毎日しっかり勉強しているみたいです。(short BMCでほぼトップだった同期の外国人に聞いたら1日8時間とかやってたそう……)大体日本人は2〜3科目examption取れている人が多いです。


そしてやっぱりなるべくはじめのSCTで点を取れるだけ取っておいた方が良いです。慣れていないうちに しっかりとした点を取るのは決して楽ではないですが、特に物理と化学は後半の内容が結構重いので前半で出来るだけ稼ぎましょう。ビミョーなラインだと後半かなり精神的に辛くなってきます( ; ;)
そしてSCTを1回でも休むとその瞬間にFinalが決定になります。やむおえない事情、例えば病院とかに行 かないといけなかった場合は、のちに提示できるような証明書を貰ってください。ただの体調不良、後日メールしたから大丈夫!とかはありえないです。出席に関してここはかなりシビアです。


まとめ


物理化学はセンター試験で8割取れるくらいの基礎知識があればそこまでしんどくないと思います。(有機化学は日本の入試で扱わない範囲をするのでそこそこ重いですが) 大丈夫かな😥って思った方は簡単な問題集を持参すると良いかも(といってもみんな持ってきても使わないので自習室に山ほどあります…)
生物だけはあまり日本での貯金があまり役に立ちませんでした。大学の先生が教えることもあり、結構内容が細かいし深いです。慣れてないころは見開き2ページ読むのに1時間とかザラです。段々慣れてきます。(ちなみに筆者の事前知識は旧課程で物化選択+生物1をやっていた程度です)

教科書はどれもめっちゃ高いです。
物理化学は中古を買ったり先輩にもらったりしたので良いと思います。ただし生物だけは改訂版が出るごとにどんどんシンプルに読みやすくなっていってるので、絶対に新しいものを買ったほうが良いです。(近年は大学から電子版が配布されたりされなかったりするらしい)
どの教科書も学内の建物で買えるのですが、生徒数分用意してたりはしないのでしょっちゅう売り切れます。見つけたらすぐ買っておいたほうが良いです。

こっちの教科書の特徴としてやたら説明文が長い、例文やたとえ話が多い、というのがあります。
日本じゃ『教科書に蛍光ペン引くな!』と言いますが、大事なことしか書いていない日本の教科書とはそこがちょっと違うので、蛍光ペンなどもこちらではうまく活用すると良いと思います。


個人的な感想

私も来た当初右も左もわからず、先輩方に訊こうにも帰国中orテスト期間で忙しいそうだし、そもそも人見知りだし、(なんなんこの人脈 命の情報戦みたいなやつ!アンフェア!人に話しかけてアイテムgetとかRPGか!誰か新入生用のマニュアルみたいなのまとめといてくれ〜( ;∀;))と思っていたので、その勢いでこのまとめを作りました。

私はShortBMCだったのでLongBMCとは多少ルールや時間感覚のズレがあるかもしれませんが、勉強しなかったらめちゃくちゃ暇、逆に本気で勉強したらかなりしんどかったです。

はじめは授業で90分間まったく何を言っているのかわからなかったり、LIFE2p読むのも1時間とかかかったり、何度も泣きそうになったり途方に暮れました。

ずっと受験英語をやってたので、文中の要点のみを抜き出すようなスピード重視の読み方をする癖がついていて、これまでやってきた′′英語を勉強する′′事と′′英語で勉強する′′事の違いにかなり苦戦しました。要領よくやろう要領よくやろうとすればするほど上手く出来ない自分にイライラしてしまったので、諦めてどんだけ要領悪くてもきっちり読んでいこうと途中で腹を決めました。


ちゃんと授業に出て(セミナーは特にきっちり) コツコツ勉強したら最終的にはちゃんと一年生になれたので安心してください。入学後も役に立つ同じ内容を取り扱うので、生物・化学は特にいくら勉強してもやりすぎということはないです。


人によってバックグラウンドは違いますが、みんなある程度以上は泥臭く勉強していたと思います。セミナーに行かなくなる・溜めて勉強する、は本当に何より破滅への第一歩です。


上の学年の先輩方を見ていても思うのですが、この大学で楽をしたいと思ってもまず無理です……(工夫は出来ますが) 早く、潔く、諦めて勉強しましょう。😂

デブレツェン大学のHPに載ってる公式の各教科コース概要・案内書(通称Bulletin)はこちらです。各週ごとの学習範囲など細かく記載されています。All in English.予備コースの分はp74〜をご覧ください。→http://www.edu.unideb.hu/tartalom/downloads/bulletin_18_19/English_Program_Bulletin_Faculty_of_Medicine_final_09_10_2018.pdf 


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